【民法改正】特別寄与料とは~新しい相続のルール~

介護をしていた者への特別寄与料

事例

事例)被相続人はA、Aには子Bがいる。しかし遠方で暮らしているため、近隣在住の妹Cに療養看護をしてもらっていた。Cは何らの権利も認められない?

まず、前提として妹であるCは相続人ではない。

そのためAの財産は全て子であるBが相続することになる。

しかしCにも一定の権利が認められる可能性はある
これは近年の法改正により新しく設けられた規定によるもの。以下で解説していく。

特別寄与料とは

改正民法1050条(特別寄与料の仕組み)

「被相続人に対し無償で療養看護その他の労務を提供したことで特別の寄与をした親族は、相続人に対し、寄与に応じた額の金銭の支払いを請求できる。」というもの。

→ ここでの金銭を「特別寄与料」という。
→ 親族であっても、以下の者は特別寄与者とはならない。

  • 相続人
    新設された特別寄与の仕組みに頼ることなく、もともと法定されている寄与分を主張できるため。
  • 相続放棄をした者
    自分の意思で相続人ではなくなった者
  • 相続欠格者
    法定の欠格事由に該当した者
  • 被廃除者
    被相続人の意思により廃除された者

つまり、上の事例において妹Cが特別寄与者として認められれば特別寄与料を相続人である子Bに主張することが可能となる。

 

ただ、次に問題となるのが妹Cのした行為が「被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした」と言えるかどうかである。要は、たいしたサポートもしていないのに特別寄与料を求めてはいないか、ということを評価する必要がある。そのときの判断においては、従前の寄与分(相続人が主張するもの)と同じように考えると解される。

つまり「被相続人との身分関係に応じ、その貢献が一定程度を超える」と言えるかどうかが基準になると考えらえる。

「親族」についておさらい

親族の範囲に関しては民法第725条に規定がある。

  • 6親等内の血族
  • 配偶者
  • 3親等内の姻族

具体例を見てみると分かるがこの範囲はかなり広い。

「6親等内の血族」には、いとこが含まれるのはもちろん、いとこの孫まで含まれる。ただしいとこの配偶者は親族にはならない。それに対し兄弟姉妹の配偶者は親族である。

「3親等内の姻族」には、義理の祖父母や義理の兄弟姉妹の子、義理の親の兄弟も含まれる。他方、義理の兄弟姉妹の配偶者は親族には該当しない。

特別寄与料に関する注意点

親族に限る

特別寄与料の仕組みができることで、相続人以外へもその貢献に応じた金銭を与えることができるようになる。ただしその範囲は「親族」に限られる。

なぜなら、何の身分関係もない者を請求権者として加えてしまうと紛争が複雑になってしまい、問題解決が困難になるおそれがあるからである。

また逆に親族の場合には有償契約を締結するなど、生前に対応していることが期待できないことから救済をする必要がある。

こういった理由から特別寄与は親族に限られる。

 

相続人に関しても、もともと寄与分の請求ができるため特別寄与者には該当しないことになっている。

期間制限

改正民法1050条2項には特別寄与料の請求にかかる期間制限の規定がある。

同項によると、「特別寄与料の支払いについて協議がまとまらなければ家庭裁判所に対し、協議に代わる処分を求めることができる」とある。ただし、「特別寄与者が、相続が開始されたことと相続人を知ったときから6か月以内、かつ、相続開始から1年以内でなければならない。

請求できるのは最長でも相続開始から1年以内に限られる。相続が始まっていることを知らないまま経過してもその後は請求できなくなる。

一方で相続開始を知ったとしてもそれだけでは現実に請求をすることはできないため、相続人も知ったときから6か月という期間制限が設けられている。

仮に相続が開始された直後から特別寄与者がその事実を知ったとしても、誰が相続人なのか分からないまま期間が過ぎたとする。10ヶ月経過後に相続人を把握することができたなら、そこから6か月以内に請求をしなければならないが、相続開始から1年以内という上限が設けられているため、結局のところ特別寄与者は残りの2ヶ月以内に請求をしなければならなくなる。

 

なお、家庭裁判所に特別寄与料に関する協議に代わる処分を請求した場合、その額は家庭裁判所がその裁量で定めることになる(1050条3項)。

遺贈が優先される

1050条4項では遺贈と特別寄与が両方発生しているときのルールが定められている。

「特別寄与料の額は、相続財産から遺贈分を控除した残額を超えられない」とある。

つまり遺贈と特別寄与料では、遺贈が優先されるということである。なぜなら特別寄与の仕組みは特別寄与者を救済するために用意されたセーフティーネットのようなものであり、これに対し遺贈は被相続人の意思の表れであるから。

できるだけ本人の意思が尊重されることが大切であるため、法律により自動的に適用される特別寄与の仕組みより優先される。

相続人の負担

請求を受けた相続人が1人であれば、特別寄与料をそのまま特別寄与者に渡せばそれでいい。他方、相続人が複数いる場合、全員で負担をする。

そこで、各相続人がその相続分に応じた特別寄与料を負担することが法定されている(1050条5項)。

つまり、一律人数分で負担を分けるのではなく、財産を多く受け取った者がそれだけ多くの特別寄与料の負担もすることになる。被相続人との関係が遠く、相続分が少なければ特別寄与料として負担する額も小さくなる。

まとめ

民法改正を受けるまで、寄与分は相続人だけに認められる仕組みだった。

しかし民法改正により「特別寄与料」の仕組みができ、相続人以外の者でも被相続人に特別の貢献をした者であれば相続人に金銭の支払いを請求できるようになった。

ただ特別寄与者になれるのは親族に限られる。

特別寄与料に関する協議がまとまらなくても家庭裁判所に求めれば、代わる処分をしてもらえるが、期間制限(相続開始から1年以内かつ、相続開始と相続人を知ってから6か月)には注意が必要。

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