社会的基本権とは「国家に対し積極的な施策を求める権利」のことです。
この社会権には下の憲法25条から28条までがあります。
- 生存権:25条
- 教育を受ける権利:26条
- 勤労の権利:27条
- 労働基本権:28条
生存権:25条
憲法25条生存権の法的性質については意見が分かれています。
判例では、抽象的権利・プログラム規定説をとっています。つまりただの目標としての規定であるという意味になります。
言い換えると「生存権は国民の権利ではない」という立場です。
判例)
- 生活保護の保護基準が低劣だとして争ったが、生存権で定める内容はあくまでプログラム規定(目標)であり、この基準は違憲ではないとした。
- 障害福祉年金の受給により児童扶養手当の支給が受けられなかったが、これも同様の理由で違憲ではないとした。
生活保護や手当の支給については国民に対する規制ではありません。行政がサービス的に行っていることであるため、違憲審査に関して国民側からすると全体的に厳しめの傾向にあります。
教育を受ける権利:26条
憲法26条
「すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。」
2項「すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。」
1項での「教育を受ける権利」には、社会権としての性質だけでなく、自由権としての性質も含まれます。
この自由権的側面においては、教育の内容は各人の自由であり国家がここに介入すべきではないと考えます。
2項は、1項の内容を具体化するため、普通教育の無償を定めた規定です。
労働基本権:27条・28条
憲法27条
「すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。」
2項「賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。」
3項「児童は、これを酷使してはならない。」
憲法28条
「勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。」
憲法27条「勤労の権利」は、社会権として国家に積極的施策を要求する権利です。つまり生存権と似た性質を有します。
憲法28条「労働三権」には自由権としての性質があり、社会権としての側面のみを有する権利に比べて保護が厚くなります。
例えば、労働組合の団体交渉その他の行為は正当業務行為にあたり、原則刑事免責されます。
民事上も免責され、ストライキによって雇用契約上の債務不履行による損害賠償請求を無視することができます。
⇔ ただし政治ストライキは争議権の保障外とされ、違法です。ただし労働条件を求めるものなら保障されます。
< 公務員の労働三権 >
公務員の場合には労働三権が制限されます。
- 非現業の公務員(管理職):団結権だけ認められる。
- 現業の公務員(非管理職):団結権、団体交渉権が認められる。ストライキ(団体行動権)は許されない。
外国人の社会権について
性質説によって日本国民のみを対象とする人権には参政権のほか、社会権も典型例として含まれています。
そのため社会権に定めのある権利について、自国民を在留外国人より優先することは憲法上許されます。
しかしながら判例は、法律によって外国人に社会権を保障することを憲法上禁止しているわけではありません。
⇔この点、国民主権原理との関係で立法も憲法で禁止している国政選挙とは異なります。