受益権とは
受益権とは「国家に積極的な作為を求める権利」のことです。
主に問題となりやすいポイントは「請願権」「裁判を受ける権利」「国家賠償責任」です。
請願権:16条
請願とは「国政について救済など、願い出ること」を言います。
「何人も」行使できる権利で、外国人や未成年者、法人などであっても請願権を行使することは可能です。
しかし国家に対し強い効力を発揮できるものではありません。
単に希望を述べ、そしてその受理を求めることに過ぎません。
請願を受けた国家も、請願内容に応じる義務はありません。
国家賠償請求権:17条
国家賠償責任は、公務員による不法行為があった場合に問題となります。その公務員個人からではなく、国家が賠償責任を負うというものです。そのため国家賠償責任は公務員の代位責任と考えられています。
国家賠償法とも密接に関わり、国賠法1条では国家賠償請求権の要件を、公務員の故意または過失と定めています。
また被害者は不法行為を働いた公務員個人に賠償請求をすることはできないという判例も要チェックです。被害者の救済には国家が賠償をすれば足りるとの判断が下されています。
ただし国家から公務員個人に対し求償をする余地は残されています。これは公務員に故意または重過失があるケースです。
なお、憲法17条での「公務員」には国会議員や裁判官、そして内閣の構成員も含まれると解されます。
裁判を受ける権利:32条
裁判を受ける権利とは「民事・刑事などすべての争訟において、法律に定めのある裁判所にて裁判を受けることができる権利」を言います。
憲法32条
「何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。」
この条文には「司法拒絶の禁止」という意義が含まれます。
つまり、誰しもが裁判所に救済を求める権利を有しているのであり、裁判所はそれを拒絶することが禁止されているということです。
また関連する条文には憲法82条1項があります。
憲法82条1項
「裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行ふ。」
82条1項では「裁判の対審と判決の公開」が規定されています。
32条により裁判が受けられても、その内容が適正でなければなりません。そのため82条1項で傍聴および報道の自由を保障し、裁判の適正を担保しようとしているのです。
ただし32条で公開される裁判は「訴訟事件」に限られます。
訴訟事件とは「当事者の意思のいかんにかかわらず終局的に事実を確定、当事者が主張した権利義務の存否を確定する裁判」のことです。
訴訟事件に対し「非訟事件」では、公開の必要はないという判例が出ています。
非訟事件は「国家が後見的に権利義務関係を形成する事件」であり、訴訟事件とは性質が異なります。
例えば、後見人の選任や子どもの監護者を指定するような裁判です。