不法行為によって生じた債務の相殺
旧民法では、不法行為の加害者が、その損害賠償債務を相殺することはできないと定められていた。
しかし改正されてからは、相殺ができるパターンも法定されている。
- 不法行為が悪意によるケース
従来通り加害者から相殺をすることは不可 - 不法行為が悪意によるものではないケース
原則、加害者でも相殺できる
このように、改正民法では不法行為債務に対する相殺禁止の範囲を小さくしている。
生命身体の侵害に基づく債務の相殺
人の「生命・身体への侵害に基づいて発生した債権」の場合、現実に損害が賠償される必要性があることから、不法行為に基づくか否か関係なく、相殺は禁止される。
そのため受働債権の性質が不法行為ではなく、債務不履行の場合でも相殺はできなくなる。
さらに、上では悪意によらない不法行為なら相殺ができるとされていたが、生命身体への侵害であれば善意悪意関係なく相殺はできなくなる。
被害者が債権を譲渡した場合は相殺できる
509条の但し書では、悪意による不法行為債権等であっても、第三者がその被害者から債権を譲り受けた場合、加害者が相殺をすることもできるとある。
つまり相殺を禁止しているのは被害者に対する現実の賠償を行わせるためであり、もはや被害者から債権が離れたのであれば、同じ債権であっても相殺を禁止する必要はなくなる。