【民法改正】不動産の賃貸人たる地位の譲渡に関する判例法理を条文化

賃貸人の地位移転と債務者の承諾

これまでの民法では、不動産の譲渡とともに契約上の地位を移転する場合の規定は設けられていなかった。

例えば不動産の所有者Aが、Bに当該不動産を賃貸すると、Aは所有者であるとともに賃貸人としての契約上の地位を持つことになる。
しかしAが第三者Cに不動産の所有権を移し、同時に賃貸人としての立場も移転しようとするケースが考えられる。

A(所有者・賃貸人) ⇔ B(賃借人)
この関係から、

C(所有者・賃貸人) ⇔ B(賃借人)
この関係に変える。

この場合、旧民法に規定はないものの、判例では賃借人の承諾なく賃貸人としての地位も移転するとされていた。

なぜなら、賃貸人の主な債務は目的物を賃借人に使用収益させることであり、その債務は所有権を有していることで履行が可能となるからである。賃貸人としての地位は所有権を持つ者に移っても不自然なことではなく、わざわざ「債務者の承諾」を得るまでもない。

民法が改正されてからはこの判例法理が605条の3に条文化されている。

605条の3
「不動産の譲渡人が賃貸人であるときは、その賃貸人たる地位は、賃借人の承諾を要しないで、譲渡人と譲受人との合意により、譲受人に移転させることができる。この場合においては、前条第3項及び第4項の規定を準用する。」

なお、この規定は539条の2「契約上の地位の移転に関するルール」の特則としての立場となる。

なぜなら契約上の地位の移転は、①当事者と第三者全員の合意、もしくは②他方当事者の承諾を得てその効果を生じるのが原則だから。

契約上の地位の移転に関する基本的なルールについてはコチラ

【民法改正】契約上の地位の移転に関する通説を条文化
契約上の地位の移転とは 契約上の地位の移転とは、 例えば売買契約における売主Aと買主Bがいる場合において、Aが売主としての地位を第三者であるCに移すような場合をいう。 A ⇔ B 地位の移転があることで売主Cと買主Bという関係性...

地位の移転を主張するには登記が必要

新しく不動産の所有者かつ賃貸人となる者Cは、元所有者兼賃貸人Aと「所有権移転の合意」と「賃貸人の地位移転の合意」をすればよくて、賃借人の承諾を得る必要がない。

ただしCが自らを賃貸人であると、賃借人に主張するには、所有権移転登記が必要である。

このことは上の条文上の「前条第3項及び第4項の規定を準用」のうち、第3項の部分から言える。

なお第4項からは、新賃貸人Cは費用償還の債務および敷金を承継することが言える。

まとめ

  • 不動産の譲渡とともに賃貸人たる地位を移転する場合に「賃借人の承諾」は不要
  • ただし新賃貸人は「所有権移転登記」をしなければ賃借人に対抗できない
  • これは契約上の地位の移転に関する基本ルールの特則にあたる