【民法改正】遺留分侵害額の請求とは(旧-遺留分減殺請求)

遺留分制度とは

遺留分制度は最低限の相続分の確保等が目的

  • 遺留分があるのは、法定相続人のうち兄弟姉妹以外の者に限られる。
    兄弟姉妹には遺留分はない。
  • 相続人全体としての遺留分は2分の1。
    ※相続人が亡くなった方の父母や祖父母のみである場合は3分の1
    ※各相続人の具体的な遺留分は、遺留分全体のうちそれぞれの相続分に応じる。

遺留分侵害の具体例

  • 被相続人はA
  • Aには妻と子供2人がいた
  • Aは遺言で全財産を第三者に遺贈する意思表示をしていた

この場合を考える。

 

遺言が遺留分を侵害する内容となっているため、母や子が第三者に対し遺留分侵害額請求(法改正前は遺留分減殺請求)をする。
最終的にAの相続財産は、以下のように取得することになる。

  • 第三者が2分の1
  • 妻が4分の1
  • 子がそれぞれ8分の1ずつ

 

その他、遺贈死因贈与生前贈与(詳細は後述)でも遺留分侵害額請求を受ける可能性がある。

なお相続人が兄弟姉妹だけの場合、遺留分がないため遺留分侵害のおそれはない。自由な遺言が可能となる。

遺留分の算定

改正民法1043条

遺留分を算定するための財産の価額は、
①被相続人が相続開始の時において有した財産の価額に
②その贈与した財産の価額を加えた額から
③債務の全額を控除した額とされる。

そして②に関しては次項の1044条のルールに従う。

改正の要所-侵害になるのは1年または10年以内の出来事

改正民法1044条

遺留分の算定においては、贈与のうち、相続開始1年前にしたものに限ってその価額を算入する。

つまり被相続人が死亡の2年前にした贈与は、原則として遺留分を侵害することにはならない。
※ただし、当事者の双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたのなら別。

 

これに対し相続人に対する特別受益(婚姻もしくは養子縁組のためまたは生計の資本、として受けた贈与に限る)では1年ではなく、10年が算入の期間となる。

従来は期限なく遺留分を算定するための財産の価額に算入されていた。
しかしそれではかなり過去の贈与等まで遺留分を侵害するとして法的安定性も害する。
そもそも生前贈与を遺留分で考慮するのは相続開始の直前に贈与をして、遺留分制度を潜脱するのを防止するのが目的である。

だから無期限で生前贈与の額を算入する必要性はない。

そこでこの規定が置かれ、10年より昔のことであれば侵害したことにはならないことにした。

遺留分侵害となる特別受益とは

1044条では「特別受益(婚姻もしくは養子縁組のためまたは生計の資本、として受けた贈与に限る)」とある。

  • 「婚姻・養子縁組のための贈与」とは例えば、婚姻時の支度金や持参金、嫁入り道具や新居などが該当する。
  • 「生計の資本としての贈与」とは、生活のために役立つ財産上の給付のことを言う。

例えば「生計の資本としての贈与」としては、
居住用の不動産を贈与すること、不動産取得のために贈与する金銭などが典型。

生計の資本と言えるかどうかは、贈与の金額や趣旨などから判断される。
「親族間の扶養的金銭援助を超える」が、区別基準となることが通常である。

 

したがって、相続分の前渡しと思われるほどの金額であれば、原則として特別受益にあたると考えられる。ただし高額でも、身体的理由などにより稼働できない子への援助など、場合によっては特別受益にあたらないことも。

 

その他特別受益に関する問題として「多額ではないが複数に渡り贈与を繰り返し、結果的に多額の金員の贈与をした場合」が挙げられる。こうしたケースに関しては、月当たり10万円を超える送金の部分のみを特別受益と認めた審判例がある。

「遺留分減殺」から「遺留分侵害額請求」に

改正民法1046条

遺留分の侵害を実際に受けた場合、その権利者は侵害者に金銭の請求ができる。

 

従来は遺留分の侵害を受けても、権利者はその遺贈や贈与そのものを物権的に減殺することで対応しなければならなかった。

つまり贈与された物自体を取り戻すことを基本としていた。これを「遺留分減殺」と呼んでいた。

厳密には、請求された者が現物の返還をするか、価額弁償を選択することができたが、権利者側から価額弁償を求めることはできなかった。そのため贈与の対象が不動産である場合には共有状態になってしまうこともあり、紛争が長期化してしまうなどの問題があった。

 

そこで法改正により「遺留分侵害額の請求」と改め、価額弁償ができるものとした
→ 遺贈等の効力は残したまま、遺留分権利者が具体的な金銭請求権を有することになる。

 

そもそも遺留分制度の目的からしても現物を取り返すことにこだわる必要はなく、その分の金銭を請求できれば十分と考えられる。

戦前の家督相続の時代の規定がそのまま放置されていたが、近年の法改正によりようやく時代に即した内容となる。

遺留分侵害額の負担のルール

負担の順序

遺留分の侵害を受けたとき、これを負担すべき者には順序がある。

  1. 受遺者と受贈者がいるときには受贈者が先に負担
  2. 受遺者が複数いる場合、または受贈者が複数ある場合でその贈与が同時にされたものであるとき、その目的物の価額の割合に応じて負担
    ※ただし遺言に別段の意思が表示されたときはその意思に従う
  3. 受贈者が複数あるときは、後の贈与に係る受贈者から負担

支払い期限の猶予

改正民法1047条では受遺者等の保護の規定がある。

遺留分侵害額請求権の行使を受けたとしても、現実問題として、一時に全額を負担することができるとも限らない。

そのため裁判所は、支払いにつき相当の期限を許与することができるとする規定が置かれた。

民法改正に関するおすすめの書籍
3時間でわかる! 図解 民法改正一刀両断! 債権法・相続法 民法大改正 完全解説 全条文付

3時間でマスターできるか微妙であるが、ざっくりと学べて良い。また、改正の背景も記載されていて良い。一つの内容につき見開きで解説が完結しており、読み進めやすい。

司法書士試験向けで出版されているものの、資格試験の出題を意識した解説がされているため他の書籍とも併せて使うと良い。相続法までカバーされている。