危険負担に関する民法改正まとめ~債権者主義の削除~

危険負担について、民法改正で変わったポイントをまとめると下のようになる。

  • 特定物の引渡等に関する債権について、危険負担を「債権者主義」とする規定は削除
  • このとき債権者は、契約を解除して代金支払債務等を免れることができる
  • 契約を解除するまでの間でも、債権者は反対給付の履行を拒絶できる

以下で詳しく説明していく。

危険負担とは

民法改正後の危険負担は下のように説明される。

「危険負担とは、双務契約において債務の一方が双方の責めに帰すことができない事由によって履行不能となったとき、債権者がその履行を拒絶できるかどうかの問題」

ポイントは「履行を拒絶できるかどうかの問題」というところ。

改正前の危険負担では、「反対債権が消滅するかどうかの問題」とされていた。

危険負担における債権者主義の削除

特定物に関する物権の移転等を目的とした契約の場合、危険負担は債権者にあるとするのが従来の民法である。
= 「債権者主義」

しかし民法改正により「債権者主義」とする規定は削除される。

売主(特定物引渡しの債務者 ⇔ 買主(特定物引渡しの債権者
引渡請求権が双方の責めに帰すことができない事由により履行不能になったとする。
債務者の責めに帰すべき事由がなくても、債権者は契約を解除できる(改正民法)
そこで、代金支払請求権は契約の解除により免れることが可能となる。

例えば、建物の売買において、双方の責めに帰すことができない事由により建物が焼失した場合、従来だと建物の引渡請求権を有する債権者(買主)が負担することになっていた。
⇔ これに対し改正後は、債権者(買主)が負担する必要はなくなる。

従来、目的物の引き渡しや所有権移転がなされるまで、債務者(売主)が危険を負担するとする特約をわざわざ売買契約に定めるのが一般的な運用であったが、改正によってこうした特約は不要となる。

今後債権者(買主)は、売買契約を解除すれば、売買代金支払債務を免れる。

解除前の債権者は反対給付の履行を拒絶できる

上の特定物の物権移転等以外の双務契約については、危険負担の「債務者主義」とされていた。
そのため講演をするという契約をしていた講師が、責めに帰すべき事由なくその履行が不能となった場合、反対給付である講演料を請求する権利がなくなってしまう。

改正民法では、この問題を危険負担として処理するのではなく、債権者側が反対給付の履行を拒むことができるとする規定を置く。

講師(講演請求債権の債務者 ⇔ 依頼主(講演請求債権の債権者
従来は危険負担の債務者主義で処理しており講演が履行不能となった場合、
反対給付である講演料支払請求権が消滅するという危険は、
講演についての債務者が負担していた。
しかし改正後、
講演料支払請求権は消滅せず、依頼主が履行拒絶できるものと規定される。
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