【民法改正】錯誤無効がなくなる?試験対策で知っておくべきこと

2020年4月1日から施行される「錯誤」に関する民法改正
に関して、わかりやすく解説していきます。

要点を3つにまとめると下のようになります。

  1. 錯誤は「無効」から「取り消せる」へ
  2. 判例法理が条文化
  3. 第95条の項数が増え、表現も変わる

詳しく見ていきましょう。

民法改正!錯誤について変わったことを簡単に解説

1.錯誤は「無効」から「取り消せる」へ

最も重要なことは、
錯誤をもとになされた意思表示が「無効」と定められていたのに対し、
改正民法では「取り消せる」ものへと変化したことです。

これに伴って取り消しに関する規定が適用されるようになり、取り消されるまでは有効、取消権の消滅時効も観念されるようにもなりました。

そのため追認出来るときから5年行為のときから20年とする制限期間の考え方が錯誤にも取り入れられるようになります。

「無効から取消へ」これ以外に関してはそれほど大きな変化とはなりません。民法をわかりやすくするための改善という程度です。

2.判例法理が条文化

判例法理の条文化に関してですが、これは「動機の錯誤」が明文化されたことが挙げられます。

従来は判例法理として、
動機の錯誤の表示があれば無効主張(改正後は取り消し)が出来ると知られていました。
これが民法第95条にしっかりと書き込まれた形になります。

動機の錯誤とは例えば
ある人物Aが、Bから物を買う場面において「X地域にはもうすぐ新幹線の停まる駅が建てられるからこの地域にある土地が買いたい」と言いBから土地を購入したが、X地域には新しく駅が建設される予定などなかった場合の錯誤です。
Aは土地を買いたいと思い実際に土地を買う意思表示をしたため、この点ズレはありませんが、その意思表示をするに至った動機に錯誤がある状態です。

言い換えると「法律行為の基礎とした事情」に錯誤がある状態を動機の錯誤と言います。

また動機の錯誤に関してはっきりと定めが置かれたことで、表示錯誤との区別が規定上も明らかになったと言えます。

3.第95条の項数が増え、表現も変わる

条文上の表現内容が変化したことにおいては、旧民法で錯誤のことを単に「要素の錯誤」としていたところ、より詳しく表現されるようになったことが挙げられます。また95条に明記はされていなかった双方重過失・共通錯誤の場合の効果、第三者保護規定も明記されます。

錯誤は「無効」から「取り消せる」に変わる

錯誤に関する一番大きなポイントから解説していきます。

意思表示は取り消されるまで有効

錯誤とは
意思表示から推測される意思が表意者になく、そのことを表意者が気づいていない場合をいいます。

例えば、Aがある商品を10,000円で売ろうと考えていたのに、記載を間違えて1,000円としてしまい、この価格で売却する旨表示、そのまま売買契約を結んでしまった場合などです。

この場合における意思表示は錯誤による意思表示と言うことができます。
なぜなら表意者Aがした意思表示は「1,000円で売る」であるところ、そのままの意思はAになく、本当は10,000円で売ろうとする意志を持っているからです。
そしてAは価格の記載ミスに気がついておらず契約締結しています。

従来、こうした錯誤による意思表示は「無効なもの」として考えられていました。しかし改正後は「取り消し可能な意思表示」へと変化します。
そのため、表意者がその意思表示を取り消すまでは有効な意思表示としてその効果は続きます。

仮にAがこのミスを認識しており、それにも拘らず意思表示をしたのであれば錯誤とは別の問題になってきます。
その場面はもはやAの保護を考える必要性は低く示した内容をなかったことにするのは基本的にできなくなります。

取消権には消滅時効がある

錯誤による意思表示が無効ではなく、取り消せるものになれば、取消権一般のルールが錯誤に対しても効いてくることになります。

特に注意すべきは取消権を行使すべき期間に制限が設けられるということです。
無効の主張をするだけであればもとからその表示はなかったものと同視出来るため、いつでもその主張が出来ることになっているのです。

一方でいったん有効な意思表示として成立したものを取り消す場面では、相手方や利害関係人の保護も視野に入れなければならず、取消権が行使可能とする不安定な状態に制限をかける必要性があります。

結果的に、この期間は「追認出来る時から5年、または行為のときから20年」となります。
前者の期間は、例えば勘違いして伝えてしまっていたことに気が付いてからのスタートとなります。
後者は勘違いによる表示をしたときからとなります。
そのため、間違って伝えてしまった後すぐに発覚したとき、そこから5年以内に権利の行使をしなければなりません。
発覚したのが18年後であれば残り2年の間でなければもはや行使できなくなります。

また誰が錯誤による取り消しを出来るのか、この点に関しては改正民法120条2項に規定があります。取り消しが可能なのは「表意者、その代理人もしくは承継人」です。

改正された理由

現行民法において錯誤による意思表示は無効で、基本的に表意者以外の第三者からこの無効を主張できないと考えられています。
他方、詐欺による意思表示は無効ではなく、取り消し可能な意思表示と定められています。

詐欺では表意者の帰責性は低いと考えられるところ、錯誤による意思表示と比較すると保護の程度に差が生じています。
この点に着目し、両者のバランスを考慮した結果、改正民法では「錯誤による意思表示も取り消せるもの」となったのです。

判例法理を条文化し明記される

続いて紹介する内容は、錯誤に関してその効果が変化するというものではなく、これまで過去の判例をもとに判断していた内容を民法に明記したという変化です。

「動機の錯誤」が明記

改正で、「動機の錯誤」の判例法理(最判昭29.11.26)に関してその一般的な解釈が条文化されます。

動機の錯誤とは
意思表示の内容と表意者の内心は一致しているものの、意思表示をするに至った動機・過程に錯誤があるというものです。

例えば、ある地域に新しく駅が建てられると勘違いして近くの土地を購入した場合などです。
その土地の所有者に対し購入したいとの旨を伝えますが、この表示内容と購入者の内心にズレはありません。
しかし、駅ができない事実を知っていれば購入しなかったケースです。
この「近くに駅が建設される」という事情を「契約の基礎となる事情」と言います。

ただし契約の基礎となる事情に錯誤があっても、無効主張(改正後においては取消権行使)できないのが原則です。
あくまで表示と意思は一致しており法律行為に対する認識に間違いはないからです。例外として、判例では、この契約の基礎となる事情を表示したうえでの法律行為なら無効主張が出来るとなっていました。
言い換えると、動機の錯誤が起こっていることを表示し相手方が錯誤につき悪意であれ錯誤として認められるということです。

改正によりわかりやすい民法とするため、この判例法理が条文化されました。無効から取消可能とする変更はここでも同様ですので、

結論、「動機の錯誤を表示していれば意思表示は取り消せる」、となります。

表示錯誤と動機錯誤があることを明記

上の動機の錯誤に関して条文化がなされることで、いわゆる「表示の錯誤」と「動機の錯誤」が規定上も明記されることとなります。それぞれ以下のように対応します。

  • 表示錯誤 = 第1項1号「意思表示に対応する意思を欠く錯誤」
  • 動機錯誤 = 第1項2号「表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が事実に反する錯誤」

民法第95条における条文上の表現が変わる

現行民法の条文を見てみましょう。

第95条
「意思表示は、法律行為の要素に錯誤があったときは、無効とする。ただし、表意者に重大な過失があったときは、表意者は、自らその無効を主張することができない。」

これに対し改正民法では第95条1項が以下のように変わります。

第95条(改)
「意思表示は、次に掲げる錯誤に基づくものであって、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、取り消すことができる。」

現行民法で「要素の錯誤」と表現されているものが改正民法で言い換えられていることが分かると思います。
「その錯誤が法律行為の・・・」に変わっています。

より実態が理解しやすくなるよう表現が具体的に書き下されているのです。
また改正後は判例法理の条文化や下で説明する双方重過失・共通錯誤などを明記することで第4項にまで増えることとなります。

表意者に重過失がある場合の規定

改正後の第3項1号では相手方が悪意または重過失のケース、2号では共通錯誤のケースにおける効果を明記しています。

原則として表意者が重過失により錯誤に陥っている場合、その取り消しをするのは許されません。

取消権を制限する理由は、相手方の保護にあります。
そう考えると、相手方が悪意の場合には保護する必要がないため、取り消しを認めてもいいことになります。

同様に、相手方が重過失で表意者の錯誤に気が付かなかったとき(双方重過失)、相手方も同じ錯誤に陥っていたとき(共通錯誤)にも表意者は取り消しが可能です。

第三者保護規定

第4項には第三者の保護要件の規定が置かれます。そして錯誤において第三者が保護されるには善意無過失が求められます。

例えば、本当は売るつもりじゃなかったのにAが勘違いしてBに時計を売ってしまい、
その後BがCにその時計を転売してしまった事例を考えてみます。
時計がCに転売された後で、Aが自らの勘違いに気が付いてその意思表示を取り消した場合、Aはその取り消しをCに対抗するのは可能なのか?という問題です。

対するアンサーは、「CがAの錯誤を知っている、もしくは知らなかったことにつきCに過失があるなら、Aは取消しを対抗出来る」となります。

第三者Cにとってはやや高いハードル設定です。錯誤は勘違いのことであるため故意責任が生じないことがその理由です。
つまり確信犯ではないから、表意者にもできるだけ保護が及ぶよう、バランスを取った結果の規定です。もちろん、勘違いが表意者の単純なドジによるものであれば重過失アリとして取消主張ができなくなる可能性もあります。

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まとめ

  • 民法第95条錯誤に関する規定が改正。
  • 錯誤ある意思表示が「無効」から「取り消し可能」に変更。
  • 動機の錯誤に関する判例法理も第95条の中に明記。
  • その他錯誤の表現変更や双方重過失・共通錯誤なども明記。