民法改正により、連帯の免除に関するルールが簡単になります。まとめると下のようになります。
- 連帯債務者の一人に対し「連帯の免除」をしたときにおいて、
連帯債務者の中に無資力者がいるとき、従来は債権者も負担をすることになっていたが、
その規定は削除され、連帯債務者間の求償で処理することとなる。 - 全体としてシンプルになる。
- 債権者は関係なくなる。
旧民法と比較しながら詳しく見ていきましょう。
連帯の免除とは
連帯の免除とは、「連帯債務者の債務の額を負担部分に限定し、それ以上請求しない旨の意思表示」を債権者が連帯債務者に対してすること。
例えば金300万円の連帯債務をABCの3人で追っていたとする。
債権者がAに対し連帯の免除をすると、Aは、負担部分の100万円の債務を負うようになる。
一方連帯債務者のBCは、依然300万円の連帯債務を負う。
↓連帯の免除後
債権者 ー A・(B・C)
ただしBが300万円を弁済すると、AおよびCにそれぞれ100万円の求償権を行使し得る。
この基本的な仕組みは改正民法でも変わりない。
無資力者がいる場合の「連帯の免除」旧ver.
上の例において、
Aが連帯の免除を受け、Bが弁済したところ、Cが無資力であった場合を考える。
Cからの弁済は期待できず、Aは連帯の免除をされているため、Bの負担が大きくなる。
ただし連帯の免除を受けたAが負担すべきであった50万円については債権者が負担することになり、
- Aが100万円
- Bが150万円
- 債権者が50万円
となる。これは旧民法445条の規定。
しかし連帯の免除をしたからといって債権者が負担をするのは妥当ではないとされ、改正民法では、この規定が削除される。
改正後の「連帯の免除」は債権者に影響しない
改正民法444条1項では、連帯の免除を受けた場合、他の連帯債務者に無資力者がいたとしても、その負担は債務者間で処理することが定められる。
大きく変わったポイントは以下。
- 債権者が負担することはなくなる
- 連帯の免除を受けた者でも負担をしなければならなくなる。
つまり上の例同様300万円の連帯債務をBが弁済し、Cが無資力になった場合、
Bは連帯の免除を受けたAに150万円を求償して解決される。
債権者は負担しない代わりに、
(連帯の免除を受けて100万円だけの負担となっていたはずの)Aが、例外的にBと一緒に負担することになる。
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