【入門-占有権】占有者と果実の関係、費用や留置権、占有訴権についても解説

占有者と果実

建物を所有権なく占有しているAがいるとします。Aは、この占有している建物をBに賃貸。この賃料は所有者Xに返すべきでしょうか?

答え:

  • 占有者Aが善意で占有したのであれば所有者Xに賃料を返さなくて良い。
  • 占有者Aが悪意で占有しているなら不当利得として所有者Xに返還しないといけない。

民法189条では以下のように定められています。

1項:善意の占有者は、占有物から生じる果実を取得する。

2項:敗訴すれば、返還請求の訴えを「提起した時」から占有者は悪意になる

※悪意の占有者への規定は、暴行や強迫、隠匿をきっかけに占有することになった者にも準用されます。
この場合、占有している者が善意であっても、その前に暴行や強迫などが原因として存在していれば、果実を所有権者に変換しないといけません。

占有者による不法行為

所有権なく建物を占有しているAが、建物を損傷したとします。建物の所有者であるXに損害の賠償をすべきでしょうか?

答え:

  • 占有者Aが善意なら、現に利益を受けている限度で所有者Xに対し損害賠償をする。
  • 占有者Aが悪意なら、生じた損害のすべてを賠償しないといけない。

占有者が善意であるときの、返還義務を負う「利益」とは保険金などのことです。建物の損害に対する保険をかけている場合、保険金が下りるときがあります。この保険金まで受け取ることは認めないということです。

なお、善意・悪意問わず、占有者に「故意または過失」がないなら損害賠償の必要はありません。

費用の支払い

建物の所有権を持たない占有者が、当該建物につき必要費を出した場合を考えてみます。

例えば建物の修理が必要になり、占有者が自らの費用で工事等をしたケースです。

この場合、占有者の善意・悪意問わず「必要費」は所有者に全額請求できます。

⇔ ただし果実を取得しているときには請求できません。

占有者の支払った費用が「有益費」の場合は、その支出による利益が現存する場合にだけ所有者に請求ができます。

例えば絶対に必要な修理などではなく、必須作業ではないが、外観を綺麗にした場合などです。

ちなみに請求ができる場合でもその額は、所有者の選択により「費用」または「増加した価額分」になります。

費用につき留置権を行使できるか

上述の費用につき、建物の占有者が所有者に請求でき状況であるとします。しかし所有者が費用の支払いに応じてくれない場合、占有者は建物につき留置権を行使して該当建物の引渡を拒むことはできるのでしょうか。善意・悪意、そして請求するのが必要費・有益費なのかによっても結果は分かれます。

  • 善意の占有者:必要費・有益費について留置権を行使できる
  • 悪意の占有者:必要費にのみ留置権を行使できる

※有益費の未払いを根拠に悪意の占有者は留置権を行使できませんが、有益費の請求ができないわけではありません。占有物を返還する時には有益費の請求ができます。

占有訴権

占有者は、占有物を奪われたとき「占有回収の訴え」によって返還および損害賠償の請求ができます。

※占有を奪われた時から1年以内に提起する必要があります。

※一般に、執行行為によって占有を奪われた時には占有回収の訴えは提起できません(例外アリ)。

代理占有・自己占有と占有回収の訴え・

所有者Aの動産をBに賃貸し、その後当該動産がXによって盗まれたとします。この場合、占有者であったBは占有権をもとに占有回収の訴えを提起することができます。

さらに、所有者であるAも占有回収の訴えを提起することもできます。

賃貸をした場合、賃借人のBの占有は「自己占有」、賃貸人のAも「代理占有」という状態になるからです。

上の事例における盗人Xが、当該動産をYに売り渡してしまった場合も考えてみましょう。

  • 取得者Yが善意なら即時取得し占有回収の訴えは提起不可
  • 取得者Yが悪意なら占有回収の訴えは提起可能。

ただしYが善意の場合でも取り返すことができないわけではありません。

盗品の即時取得の問題として、所有権に基づいて争うことになります。

占有保持の訴えと占有保全の訴え

占有権に基づく訴えには「占有回収の訴え」以外に「占有保持の訴え」「占有保全の訴え」があります

「占有保持の訴え」の例

隣の家の木が庭に倒れてきた場合、これをどかすには占有保持の訴えを提起して対応ができます。

この場合の請求は相手方が無過失でも可能です。ただし不法行為によって木が倒れてきたのであれば損害賠償を請求することも可能です。

「占有保全の訴え」の例

隣の庭の木が、こちらに倒れてきそうな場合、占有保全の訴えを提起することで予防措置を講ずる、または、倒れた場合の損害賠償担保を立てることができます