【入門-抵当権】果実、法定地上権、代価弁済など、抵当権総まとめ

抵当権とは「目的物の不動産の引渡しを受けずに優先弁済権を確保する約定担保物権」のこと。

地上権や永小作権自体も、抵当権の目的にすることができる。
一方、動産や債権には抵当権を設定することはできない。

抵当権と果実の関係

天然果実について、債務不履行の前だと抵当権の効力は及ばない。
しかし債務不履行があればその後弁済に充てることができる。

法定果実について、物上代位の条文が抵当権にも準用される。

※民法304条(物上代位)

先取特権は、目的物の売却、賃貸、などにより債務者が受けるべき金銭等についても行使できる。ただし、その払渡しまたは引渡しの前に差押えが必要

→ Aが乙建物に抵当権を設定し、Bに賃貸した場合を考える。賃貸後、Aの債務不履行により、抵当権者Xは、AのBに対する賃料債権を物上代位。Bは誰に支払うべき?

答え:Xが物上代位するには自分で差押えをする必要がある。

Bは裁判所からの差押命令が送達されるまではAに、到達後はXに賃料を支払う。

 

抵当権者の物上代位は、債権譲渡に優先する(AがYに賃料債権の譲渡をしていてもXは物上代位できる)。差押え前に譲渡・通知しても、それは「払渡しまたは引渡し」には該当しないため。

抵当権侵害について

AはXのために抵当権を設定。その後Bが不当に山林を伐採したケースを考える。

  • 抵当権者XはBに妨害排除請求権により伐採した材木の搬出禁止を請求できる
  • すでに搬出されたときでも返還を求められるが、自己に引き渡させることはできない(占有する権利はない)。
  • Bに過失がなくても関係ない(対抗要件さえ備えれば物件の排他的な支配により可能)

 

損害賠償について

  • 残存価格が債権額を下回らなければ損害賠償は請求できない。
  • 下回っても相手方に過失がなければ不法行為に基づく損害賠償は請求できない。
  • 過失と損害がある場合請求ができるが、これは抵当権実行時ではなく、被担保債権の弁済期が到来した時点で認められる(早期の解決を図る)。

 

< 債務者が期限の利益を主張できないケース >

  1. 破産手続開始の決定を受けたとき
  2. 担保を滅失、損傷、減少させたとき
  3. 担保を供する義務があるのに供しないとき

 

抵当権のついた建物を不当な理由で引渡し、所有者に適切な管理が期待できないケースを考える。

  • 抵当権者は自己への引渡しを請求できる。
  • しかし賃料相当額の損害金の請求はできない(そもそも法定果実を取得する権利はなく実害はないから)。
  • 例外として、第三者が不法占有して優先弁済権が困難そうなら、それだけで自己への引渡しが可能。

法定地上権について

(法定地上権の成立要件)

  • 前提として 土地+建物 が存在し 同一の所有者 に属すること。
  • 土地か建物に抵当権が設定される。
  • 土地と建物の所有者が異なるに至ること。
  • 存続期間は最低でも30年
  • 成立済の法定地上権は、建物が滅失しても消滅せず、建物を新築する旨の掲示によって対抗力を維持できる。

※抵当権設定後に建物を建築しても成立しない。抵当権者が建築に承諾していても成立しない

※同一の所有者に属していれば、登記名義が別々でも成立する

※設定後、どちらかを譲渡しても成立する。

※土地と建物に抵当権を共同設定した後で、建物を取り壊して新築した。新築の建物については抵当権が及ばず、法定地上権は成立しない。

※抵当権の順位の変更は法定地上権に影響しない。

 

ケース1:A所有の土地にB所有の建物がある。

Xが土地に抵当権設定後、AはBから建物を取得。そしてYが土地に2番抵当権を設定した。

Xが1番抵当権を実行しても法定地上権は成立しない。

→ Xは法定地上権を期待できる立場ではない。もともと底地や約定地上権ありきでの契約だったから。

 

ケース2:A所有の土地にB所有の建物がある。

Xが建物に抵当権設定後、BはAから土地を取得。そしてYが建物に2番抵当権を設定した。

Yが2番抵当権を実行すると法定地上権は成立する。

→ Xは成立する立場になかったが、Bは2番抵当権を建物に設定した時点で法定地上権の成立は想定すべきであった。

 

ケース3:A所有の更地がある。

Xが土地に1番抵当権を設定後、Aは建物を建てた。そしてYが土地に2番抵当権を設定した。

Yが2番抵当権を実行しても法定地上権は成立しない。

→ Xは更地での担保設定をしておりAは背信的行為をしている。Xの保護のため成立しない。

 

ケース4:A所有の土地にAB共有の建物がある。

土地の抵当権が実行されると法定地上権は成立する。

建物のA持分の抵当権が実行されると法定地上権は成立する。

→ 共有物につき抵当権の設定は自由にできるが、不利な扱いは許されない。

 

ケース5:AB共有の土地と建物がある。

A持分につき土地または建物どちらの抵当権が実行されても法定地上権は成立しない。

→ そもそも共有の土地は同意がなければ地上権が成立しないから。

賃借権と抵当権との関係

抵当権の設定後に賃借人が登場したとする。この賃借人は、抵当権が実行されても、買受人の買受の時から6か月は引渡さなくても良い。

しかし、賃貸借契約自体は終了するため、買受人に対価は支払う義務があり、敷金を買受人に請求することはできない。そして支払いの催告に1か月以上従わなければ即刻立退きとなる。

抵当権に遅れる賃借権は登記があっても対抗はできない。しかし、賃借権が登記されており、すべての抵当権者が同意、そしてその登記をすれば賃借権が抵当権に対抗できるようになる。

※同意の登記がなければ当事者間でも効力が生じない

―共同抵当―

共同抵当:1つの被担保債権について複数の不動産に設定された抵当権

それぞれの不動産を同時に競売(同時配当)しても、別々に競売(異時配当)しても同じになるよう配当額が決まる。そして配当は、各不動産の価格に応じた割付。

抵当権消滅請求と代価弁済について

抵当権消滅請求権:抵当不動産の第三取得者から抵当権者に対する請求。
通知を受けた抵当権者は、金額に納得して消滅に応じるか自ら競売にかける。

代価弁済:抵当権者から買受人に対する請求
ただし取得者が弁済に応じるかどうかは任意。