【持分会社】合同・合名・合資会社の特徴と株式会社との比較

ここは持分会社合名会社・合資会社・合同会社)に関するページ
各会社形態の違いや、持分会社と株式会社を比較したときのルールの違いなどに言及
会社法の条文を参照しながら解説していく

持分会社とは

持分会社とは、合名会社合資会社合同会社の3つのことである。
いずれも会社と社員との結びつきが強く、人的要素が反映されやすい会社形態。

 ⇔ 株式会社は、会社の所有と経営が分離しておらず、人的要素は弱い
合名会社合資会社合同会社
無限責任社員のみ無限責任社員+有限責任社員有限責任社員のみ

合名会社について

合名会社とは、無限責任社員だけで構成される持分会社のこと。
その他特徴は以下。

  • 社員個人も会社の責任を負う
  • 法人でも無限責任社員になれる
  • 社員1人での設立が可能
  • 民法上の組合に近い実態
  • 業務執行の意思決定は、業務執行社員の過半数で決定する

合資会社について

合資会社とは、無限責任社員有限責任社員から構成される持分会社のこと。
その他特徴は以下。

  • 社員2人以上が必要
  • 合同会社と合名会社の中間的な性質
  • 定款と登記にて、各社員の無限責任・有限責任を明記する
  • 有限責任社員は業務執行権および代表権を有する社員と、これらの権利を持たない社員とに分かれる

合同会社について

合同会社とは、有限責任社員だけで構成される持分会社のこと。
その他特徴は以下。

  • 会社内部の組織運営は、株式会社に比べて、定款による自治が広く認められる
  • 社員1人での設立が可能
  • 社員は業務執行権を有する
  • 社員個人は合同会社の債務責任は負わない

 

「代表社員」の意味
合同会社などでは出資者と経営者が同じであるため、すべての社員が会社の決定権を持つ。しかしすべての社員が等しく権限を持つと意思決定が迅速に行えないこともある。そこで決定権を持つ代表者を選任し「代表社員」として、誰に権限があるのか明確にする制度が設けられている。
・登記および定款に明記される
・代表社員でも社長とは限らない

持分会社の例

日本の多くの会社が株式会社となっているが、持分会社にも有名な会社はある。
2006年の会社法改正も受け、有名企業も多くできている。

合名会社の例

  • 合名会社野口酒造店

合資会社の例

  • 合資会社フリップカンパニー

合同会社の例

  • Apple Japan合同会社
  • Google合同会社
  • アマゾンジャパン合同会社
  • 合同会社exnoa
  • 合同会社 西友

など・・・

株式会社との比較

株式会社と比較した持分会社のメリット・デメリットを挙げていく。

持分会社のメリット

  1. 設立手続きが簡単
  2. 初期費用が安い
  3. 重要事項の決定など、意思決定が迅速にできる
  4. 定款の作成・変更も容易

持分会社の場合、株式会社と比べて属人的であるため、株式の譲渡のように構成員が自由に入れ替わることなく、持分の譲渡も厳重。
設立費用に関しても、株式会社だと少なくとも数十万円かかるところ、持分会社なら数万円~で足りる。

持分会社のデメリット

  1. 株式の発行ができず、出資を広く募ることができない
  2. 決算報告の必要がなく情報開示も少ないことなどからも、株式会社よりも信用力に劣る

株式や新株予約権を発行できず、大規模な事業には向かないなどのデメリットがある。

持分会社のルール

以下、会社法の条文を照らしつつ、持分会社において着目すべき規定を確認していく。

持分会社株式会社
定款・認証不要
・社員の責任形態によって会社の種類も決まる
・設立時に公証人の認証が必要
社員の責任・無限責任社員は会社と連帯して債務を負担するリスクを負う
・有限責任社員は出資の額が限度
・出資額の限度でしかリスクを負わない
出資の履行時期・合名会社、合資会社は履行時期の定めなし
・合同会社は設立登記までに履行
・設立時発行株式の引受け後、遅滞なく
・募集事項として定めた期日・期間
登記事項・合名会社、合資会社は「資本金の額」の登記不要
・合同会社は「資本金の額」登記必要
・「資本金の額」登記必要
資本金・合同会社は資本金額の減少の際、債権者異議の手続必要・資本金額の減少の際、債権者異議の手続必要
業務の執行・社員は会社の業務を執行する・社員は会社の業務を執行しない
持分の譲渡・原則、社員全員の同意が必要・原則、譲渡は自由
社員の加入・定款変更時に社員となる
・合同会社は出資の履行もしてか
・出資の履行が必要
出資の払戻し・合同会社以外は出資の払戻しが可能・原則不可
計算書類・合名会社、合資会社では貸借対照表のみで良い
・計算書類の閲覧請求も社員のみができる(合同会社では債権者も)
・社員と会社債権者が閲覧請求できる

定款

持分会社の場合、設立時の定款について、公証人の認証を必要としない(575条)。
社員全員が署名押印するだけでOK
⇔ 株式会社では、作成した原始定款につき公証人の認証が必要(30条1項)

第575条「持分会社を設立するには、その社員になろうとする者が定款を作成し、その全員がこれに署名し、又は記名押印しなければならない。」

定款に記載する責任形態により会社類型が決まる

持分会社3種の区分は、社員の責任形態によってなされる。
そして社員の責任形態は定款の記載内容によって定まる。
つまり定款に、
無限責任社員しかいないと定めれば「合名会社
無限責任社員と有限責任社員を定めれば「合資会社
有限責任社員しかいないと定めれば「合同会社
になる。

定款のみなし変更とは

合資会社には無限責任社員と有限責任社員がいなければならないが、社員が退社することによってどちらかの責任形態がなくなってしまう可能性がある。

このとき「定款のみなし変更」が起こる。

1:有限責任社員が退社 → 合名会社へ

合資会社から有限責任社員が退社し、無限責任社員のみになると、その会社は「合名会社になる定款の変更」をしたものとみなされる。
そのように扱わなければ一部の社員の退社により合資会社として存続できなくなり、解散までしないといけなくなる。そうすると内部の人間が困るだけでなく、会社債権者など利害関係人にまで悪影響が及ぶ可能性がある。
そこで、無限責任社員のみで構成される合名会社として存続することが認められている。

2:無限責任社員が退社 → 合同会社へ

上記同様、無限責任社員が退社して有限責任社員のみとなったときには「合同会社になる定款の変更」をしたものとみなされ、合同会社として存続することになる。

社員の責任

持分会社の社員は、会社の財産で債務を完済できない場合、連帯して会社の債務を弁済する責任を負う(580条1項)。
→ 無限責任社員についての規定
→ 有限責任社員であれば出資の価額を限度に責任を負う(580条2項)

第580条「社員は、次に掲げる場合には、連帯して、持分会社の債務を弁済する責任を負う。」
一 当該持分会社の財産をもってその債務を完済することができない場合
二 当該持分会社の財産に対する強制執行がその効を奏しなかった場合(社員が、当該持分会社に弁済をする資力があり、かつ、強制執行が容易であることを証明した場合を除く。)
2「有限責任社員は、その出資の価額(既に持分会社に対し履行した出資の価額を除く。)を限度として、持分会社の債務を弁済する責任を負う。」

無限責任社員と有限責任社員

無限責任社員は、会社の保証人のような立場になり、会社の財産で弁済ができなければ社員個人の財産が差し押さえられるリスクを負う

一方有限責任社員は、株式会社における株主のような立場となる。会社がその債務の弁済ができなくても、持分がなくなってしまう限度でしかリスクを負わない。債権者も会社名義の財産しか差し押さえることができない

債権者や利害関係者に生じた損失を回復できない可能性が高くなってしまうため、有限責任社員だけで構成される合同会社には債権者保護の規定が設けられており、同じ持分会社でも合名会社・合資会社とは適用されるルールが異なる。

有限責任社員の「出資の目的」

「出資の目的」を定めなければならないが、無限責任社員の場合、労務や信用を出資の目的にできる。しかし有限責任社員は、金銭その他の財産に限られる
→ 無限責任の場合、金銭等を出資しなくても社員個人へ債権者が請求できる
→ 有限責任の場合、労務や信用の出資では会社債権者が保護されないため、金銭等が求められる

退社した社員の責任

持分会社では、退社した社員も、退社したことの登記をする前に生じた債務については責任を負う(612条)。

第612条「退社した社員は、その登記をする前に生じた持分会社の債務について、従前の責任の範囲内でこれを弁済する責任を負う。」

出資の履行時期

  • 合名会社合資会社:出資の履行時期に関して特段の定めなし
    → 会社成立後でもOK
    → 合資会社の有限責任社員についても同様
  • 合同会社:設立登記までに出資
    → 有限責任社員しかいないことから、定款作成~設立登記時までに出資の履行をしなければならない
株式会社の出資の履行時期
株式会社の場合、設立時発行株式の引受け後、遅滞のない時期までとされる。
もしくは募集事項として定めた期日・期間。

登記事項

  • 会社の「目的」はいずれも持分会社でも必要
  • 合名会社と合資会社では「社員の氏名または名称および住所」
  • 合資会社に固有の事項
    → 「社員が有限責任社員または無限責任社員のいずれであるかの別」
    → 「有限責任社員の出資の目的およびその価額ならびに既に履行した出資の価額」
  • 合同会社に固有の事項
    → 「業務執行社員の氏名又は名称」
    → 「資本金の額」
    合同会社の場合、社員全員の氏名及び住所は、定款に記載が必要となるが、登記事項ではない。業務執行社員のみを登記する。

定款の絶対的記載事項と、登記において必須とされる事項の区別には注意

資本金

合同会社は社員が有限責任しか負わないため、債権者の資本金に対する関心は強い。
簡単に減少させられると困る。
そこで、資本金の額の減少に関しては債権者が異議を述べることができる(627条)。

資本金額を減らしたいなら、会社は資本金減少の内容と、「一定期間内に異議を述べることができる旨」を官報に公告し、かつ、知れている債権者においては格別の催告をしなければならない。

第627条「合同会社が資本金の額を減少する場合には、当該合同会社の債権者は、当該合同会社に対し、資本金の額の減少について異議を述べることができる。」

業務の執行

合名会社・合資会社・合同会社問わず、持分会社の社員は当該会社の業務を執行する(590条)。
⇔ 株式会社では社員(株主)は業務を執行しない

第590条「社員は、定款に別段の定めがある場合を除き、持分会社の業務を執行する。」

持分の譲渡

持分会社では、原則、他の社員全員の同意がなければ持分を譲渡できない
例外として、業務執行者でない有限責任社員に関しては、業務執行社員全員の同意で譲渡が可能。
⇔ 株式会社は原則として譲渡自由

第585条「社員は、他の社員の全員の承諾がなければ、その持分の全部又は一部を他人に譲渡することができない。」

社員の加入

社員加入の効力は定款変更時に生じる。
→ 新たに社員になろうとする者は、定款変更時に当該持分会社の社員となる

合名会社の場合には、定款変更+出資に係る払込み等の履行をしてから当該合同会社の社員となる。

第604条「持分会社は、新たに社員を加入させることができる。」
2「持分会社の社員の加入は、当該社員に係る定款の変更をした時に、その効力を生ずる。」
3「前項の規定にかかわらず、合同会社が新たに社員を加入させる場合において、新たに社員となろうとする者が同項の定款の変更をした時にその出資に係る払込み又は給付の全部又は一部を履行していないときは、その者は、当該払込み又は給付を完了した時に、合同会社の社員となる。」

出資の払戻し

持分会社では出資の払戻しが可能(624条)。
⇔ ただし合同会社は不可

※株式会社でも資本維持の原則により出資の払戻しは不可

第624条「社員は、持分会社に対し、既に出資として払込み又は給付をした金銭等の払戻し(出資の払戻し)を請求することができる。この場合において、当該金銭等が金銭以外の財産であるときは、当該財産の価額に相当する金銭の払戻しを請求することを妨げない。」

計算書類

株式会社では、以下の計算書類の作成が義務付けられている。

  • 貸借対照表
  • 損益計算書
  • 株主資本等変動計算書
  • 個別注記表

合同会社も各事業年度に作成すべき計算書類は株式会社とほぼ同じ。
→ 貸借対照表・損益計算書・社員資本等変動計算書・個別注記表の4つ

これに対し、合名会社と合資会社は、貸借対照表の作成のみが義務となっている。

株式会社や合同会社の債権者にとっては、会社財産から債権回収するしかないため細かく財産状況を把握する必要性が高い。しかし合名会社と合資会社の債権者は社員個人の財産から債権回収できるため、厳重に会社財産の把握する必要性が低い。

計算書類の閲覧請求

持分会社では、計算書類の閲覧等を請求できる者は社員に限られる(618)。
⇔ 合同会社は会社債権者でも請求可能

※株式会社でも、社員の株主および会社債権者が請求できる

第618条「持分会社の社員は、当該持分会社の営業時間内は、いつでも、次に掲げる請求をすることができる。」

練習問題

難易度「易」の例題3問で理解度チェック!

1.合同会社は有限責任社員のみで構成される持分会社である
2.合資会社は無限責任社員のみで構成される持分会社である
3.法人も持分会社の社員になれる。
難易度「易」_全5問難易度「並」_全3問
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