支配人の具体例や代理商との違い!表見支配人にあたる要件などを解説

支配人とは「商人に代わって、その営業に関する一切の裁判上または裁判外の行為をする権限を有する使用人」のことである。

  • 使用人の一種
  • 包括的代理権を有する
  • 支配人の選任は登記事項

などの特徴がある。
また以下の行為が原則禁止される。

  • 自ら営業をすること
  • 他の会社の使用人になること
  • 会社の取締役・執行役・業務執行社員にはなること

以下では、これら支配人に関することを詳しく解説し、その具体例や代理商との違い、表見支配人に当たる要件などに言及する。

支配人とは

支配人に関する主な規定は、商法第20~24条に置かれている。

  • 20条:支配人の選任
  • 21条:支配人の代理権
  • 22条:支配人の登記
  • 23条:支配人の競業の禁止
  • 24条:表見支配人

これらに関して解説していく。

使用人の一種

商人は、支配人を選任して営業を行わせることができる(商法第20条)。

(支配人)
第20条「商人は、支配人を選任し、その営業所において、その営業を行わせることができる。」

そして支配人は使用人の一種、つまり従業員の一種である(役員等ではない)。

(商業)使用人とは
「雇用契約によって特定の商人に従属し、その業務を内部から補助する者」のこと。支配人も商業使用人に含まれる。
⇔ 代理商は、企業の外部から独立して補助する者で、商業使用人ではない。
営業所の意味
20条に言う「営業所」とは、商人による活動の中心となる一定の場所。本店・支店いずれも含むため、支配人を支店に配置することも、本店に置くことも可能。

包括的代理権がある

支配人は、商人の代わりに営業に関する一切の「裁判上の行為」または「裁判外の行為」ができる(21条)。
この広範な権限を包括的代理権という。

  • 裁判上の行為:訴訟行為(支配人は弁護士でなくても営業に関して訴訟行為ができる)
  • 裁判外の行為:法律行為一般

(支配人の代理権)
第21条「支配人は、商人に代わってその営業に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する。」

競業避止義務・営業避止義務がある

支配人には競業避止義務」および「営業避止義務」が課せられる(23条)。

  • 競業避止義務:自分や第三者のために、商人の営業に属する取引をすることの禁止
  • 営業避止義務:自ら営業をすることや、他の会社の使用人や役員になることの禁止

ただし競業も営業も、商人の許可があれば認められる。

(支配人の競業の禁止)
第23条「支配人は、商人の許可を受けなければ、次に掲げる行為をしてはならない。」
一 自ら営業を行うこと。
二 自己又は第三者のためにその商人の営業の部類に属する取引をすること。
三 他の商人又は会社若しくは外国会社の使用人となること。
四 会社の取締役、執行役又は業務を執行する社員となること。

登記が必要

商人は、支配人の選任・代理権の消滅に関して、登記をしなければならない(22条)。

(支配人の登記)
第22条1項「商人が支配人を選任したときは、その登記をしなければならない。支配人の代理権の消滅についても、同様とする。」

そして登記を怠ったとき、支配人の代理権消滅について、善意の第三者に対抗できない。

第22条3項「支配人の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。」

判例(最判昭49.3.22):登記後の善意の第三者への対抗
判例では、代表取締役の退任登記について「登記後は『正当な事由』がない限り、善意の第三者にも対抗できる」としている。
そして同判決の趣旨は、支配人の解任にも及ぶと解されているため、
商人が支配人を解任後、登記をすれば、第三者が『正当な事由』によって登記の存在を知らない限り、当該商人は善意の第三者に対しても解任を対抗できる。
→ 解任された支配人が自らを支配人を称して第三者と契約をしても、表見代理が成立する余地はない

支配人の具体例

商法上は「支配人」であっても、別の名称で肩書が付されていることもある。
逆に、肩書が「支配人」であっても、商法上認められる支配人ではないこともあるため注意。
→ 例えば、支配人登記されているものの、「支店長」という肩書で働いている場合など
→ 登記の有無で判別する

ホテルの支配人などは、商法上の支配人でもあることも多い。
他にも、航空会社や商社などでもその名で配置されていることがある。
レストランだとオーナーシェフに対し接客を担う役割として支配人が置かれていたり、従業員の採用やその他様々な取引ができるよう、工場長やスーパーマーケット等でも商法上の支配人が置かれることがある。

このように、支店や各工場など、本拠地ではない営業所において、包括的な代理権を与えたほうが円滑に仕事が進められるというケースで支配人が選任されることが多い。

一方、商法上の支配人でなければ、店長や部長、課長、などの役職が付されていても法的な権限が支配人に比べるとかなり弱く、できることに限りがある。

代理商との違い

支配人とよく比較されるものとして「代理商」がある。
代理商に関しては商法第27~31条に規定が置かれており、商人を代理する点で類似するが、選任される者が商人から見て内部者か外部者かという大きな違いがある

※代理商とは「商人のため、平常の営業に関する取引の代理・媒介をする者であって、使用人ではない者」のことである。商法27条

支配人代理商
概要支配人とは、商人に代わってその営業に関する一切の裁判上または裁判外の行為をする権限を有する商業使用人
→ 代理権を有する使用人
代理商とは、商人のため、平常の営業に関する取引の代理・媒介をする者であって、使用人ではない者
→ 代理および媒介をする非使用人
競業避止義務あり(商人の許可で競業OK)

違反:支配人または第三者が得た利益の額を、商人に生じた損害額と推定して損害賠償請求

解任の可能性も

あり(商人の許可で競業OK)

違反:代理商または第三者が得た利益の額を、商人に生じた損害額と推定して損害賠償請求

契約解除の可能性も

営業避止義務あり(商人の許可でOK)

違反:解任および損害賠償請求はできるが、損害額の推定規定はない

なし

表見支配人の要件

商法上の支配人ではないにも関わらず「支配人」等の名称が付されている場合、第三者から見てその者が支配人なのかどうか判別が難しい。
そこで「表見支配人」の規定が設けられている(24条)。

(表見支配人)
第24条「商人の営業所の営業の主任者であることを示す名称を付した使用人は、当該営業所の営業に関し、一切の裁判外の行為をする権限を有するものとみなす。ただし、相手方が悪意であったときは、この限りでない。」

第24条によると、支配人と間違われてしまうような名称を付した場合、表見支配人として、裁判外の行為をする権限を有するものとみなされる(前段部分)。
しかしながら表見支配人と取引をした相手方が、事実を知っているような場合には、その者を保護する必要はないため、表見支配人には当たらないとしている(後段部分)。

契約の相手方が善意の場合、表見支配人としてみなされ、商人は契約の無効を主張できない。

判例(最判昭37.5.1):営業所の要件
判例は、商法24条における「営業所」に関して、「商法上の営業所としての実質を備えているもののみを指称」するとしている。
営業所としての実質を備えていない場所を営業所と称し、支配人類似の名称を付しても、表見支配人は成立しない。

支配人に関する統計データ

近年の支配人に関する統計データを見てみる。

下図「支配人登記件数の推移」から分かるように、令和元年においてその登記数は1700件超である。そしてその数は減少傾向にある。9年前と比較しても500件以上減少している。

支配人登記の推移

参照:e-Stat政府統計

なお登記の内容は選任に限らない。

種類別支配人の登記割合

参照:e-Stat政府統計

左図がその種類別に分けた登記割合である。

選任登記および消滅登記が割合多くそれぞれ40%以上となっている。

 

練習問題

難易度「易」の例題3問で理解度チェック!

1.支配人は、商人の許諾がなければ他の会社の使用人になることができない。
2.支配人は、その営業に関する裁判外の行為をする権限を持つが、裁判上の行為をする権限までは持たない。
3.支配人は本店に置くことができない。
難易度「易」_全4問難易度「並」_全4問
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