【民法改正】連帯債権の相対効と絶対効まとめ!不可分債権との違いも


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ここでは、民法改正によって条文化された「連帯債権」の
絶対効相対効に関して解説

原則は連帯債務同様、連帯債権者に一人に生じた事由には相対効が生じる
しかし①履行の請求、②相殺、③免除・更改、④混同には絶対効が生じる

以下が各事由に対する効力をまとめた表である

連帯債権の一人に生じた事由の効果
履行の請求絶対効
免除・更改絶対効(分与割合のみ
時効の完成相対効
相殺絶対効
混同絶対効

なお、後半では「不可分債権」との比較もしていく

連帯債権の原則

連帯債権とは「債権の目的が性質上可分である場合において、法令の規定又は当事者の意思表示によって数人が連帯して債権を有する場合の債権」のことである。

 

かつて実務上用いられていた連帯債権に関して、民法改正により、条文に明記されることになった
(432条~435条の2までが連帯債権に関する規定)。

連帯債権においては、連帯債務同様、相対効が原則(435条の2)とされており、その例外として432条から435条に絶対効の規定が置かれている。

  • 432条:履行の請求
  • 433条:免除・更改
  • 434条:相殺
  • 435条:混同

(相対的効力の原則)
第435条の2「第432条から前条までに規定する場合を除き、連帯債権者の一人の行為又は一人について生じた事由は、他の連帯債権者に対してその効力を生じない。ただし、他の連帯債権者の一人及び債務者が別段の意思を表示したときは、当該他の連帯債権者に対する効力は、その意思に従う。」

 

なお「連帯債務」に関する相対効と絶対効の解説はこちら

【民法改正】連帯債務の相対効と絶対効まとめ
連帯債務者の1人に生じた事由は、原則として「相対効」を有する。しかし、相殺・混同・更改に関しては例外的に「絶対効」が認められる。また近年の民法改正によって請求・免除・時効は相対効へ変わっている。このページではこれら連帯債務に関する効力について解説する。

履行の請求(絶対効)

(履行の請求による効果)
連帯債権者全員に及ぶ = 絶対効

連帯債権における「履行の請求」は絶対的効力事由の1つとされる(432条)。
そのため各債権者は、全ての債権者のために、債務者に対して履行の請求をすることができる。逆に、債務者も全ての債権者のために、連帯債権者の一人に対して履行をできる。

 

具体例

AB(連帯債権) ⇔ C

AとBが連帯債権者としてCに対して債権を持っているとする。このとき、AがCに対し履行の請求をすれば、Bも自身が請求をしたのと同じ効果が生じる(絶対効)。

また債務者Cも、ABどちらかに対して履行をすることができる(絶対効)。

(連帯債権者による履行の請求等)
第432条「債権の目的がその性質上可分である場合において、法令の規定又は当事者の意思表示によって数人が連帯して債権を有するときは、各債権者は、全ての債権者のために全部又は一部の履行を請求することができ、債務者は、全ての債権者のために各債権者に対して履行をすることができる。」

なお、条文上の「性質上可分」は重要なポイントである。
性質上不可分であれば後述の不可分債権となる。

免除・更改(絶対効)

(免除と更改による効果)
分与割合については連帯債権者全員に及ぶ = 絶対効(部分的)

免除」と「更改」も絶対的効力事由の1つとされる(433条)。
そこで連帯債権者の一人が債務者に対してした免除や更改は、他の連帯債権者にも影響する。
しかし注意が必要。
この絶対効は、その事由が生じた者の分与割合(その連帯債権者に分与されるべき利益に係る部分)に関してのみ及ぶのであり、それ以外、例えば他の連帯債権者に分与されるべき利益に関してまで請求ができなくなるわけではない。その意味で、部分的な絶対効であると言える。

 

具体例
連帯債権者AとBが、債務者Cに対し、金100万円の債権を有しているとする。そしてAとBの間では50万円ずつ分与する合意がなされている(つまり債権は全額で100万円であるが、それぞれ50万円を持分にしようという約束をしている状態)。

「AがBに分与すべき利益」=「BがAに分与すべき利益」=50万円

この場合において、AがCに対して債務の免除をしたとする。するとAの分与割合に関しては絶対効が生じ、Bはその部分に関してはもはやCに請求ができなくなる。
しかしBに分与されるべき利益である50万円に対しては相対効しか生じないため、Cに請求することが可能

更改でも同様
更改の契約は債務消滅の合意があるものと考えられているが、AがCと更改したときでも、Bは自身に分与されるべき利益に関して請求ができる。Aに分与されるべき利益については絶対効にかかり請求不可。

 

絶対効になっている理由
免除更改に関して部分的な絶対効となっているが、逆にすべて相対効として扱ってしまうと、その後の償還が非常に面倒で、債権者・債務者ともにメリットがない。
例えば上の場合において部分的にも絶対効がないとすれば、BがCに対して100万円を請求できることになる。しかしBは、元の約束通り、Aに対して「Aに分与されるべき利益」50万円を渡さなければならない。ただ、AはCに対して免除(または更改)をしているため、結局その50万円はCに償還することになる。
→ このように非常に回りくどい結果となるため、免除・更改は、それをした者の分与割合の範囲で絶対効として扱う。

(連帯債権者の一人との間の更改又は免除)
第433条「連帯債権者の一人と債務者との間に更改又は免除があったときは、その連帯債権者がその権利を失わなければ分与されるべき利益に係る部分については、他の連帯債権者は、履行を請求することができない。」

時効の完成(相対効)

時効に関しては、特に規定は設けられておらず、原則通り相対効を有する。
(他の者には影響しない)

相殺(絶対効)

(相殺による効果)
連帯債権者全員に及ぶ = 絶対効

連帯債権における「相殺」も絶対的効力事由の1つ
債務者が相殺の援用をすれば、その効果は連帯債権者の全員に及ぶ。

 

具体例
連帯債権者AとBが、Cに対し金100万円の債権を持っている場合において、CがAに対して金100万円の反対債権を持っているとする。
Cが相殺を援用すると、Aに対して効果を生ずることはもちろん、Bにも同じ効果が生じることになる。

なおAB間で50万円ずつ分与する旨合意がある場合、
「CのAに対する相殺の援用」=「AはCから弁済を受けた」のと同義であるため、Aは、その後Bに対して「Bが受けるべき利益」である50万円を支払わなければならない。

(連帯債権者の一人との間の相殺)
第434条「債務者が連帯債権者の一人に対して債権を有する場合において、その債務者が相殺を援用したときは、その相殺は、他の連帯債権者に対しても、その効力を生ずる。」

混同(絶対効)

(混同による効果)
連帯債権者全員に及ぶ = 絶対効

連帯債権における「混同」も絶対的効力事由の1つ。債務者と連帯債権者の一人の間に混同が生じたときは、弁済があったものとみなされる。

 

具体例
連帯債権者ABが債務者Cに対し金100万円の債権を有しており、AB間では50万円ずつ分与するとの合意があるとする。
「CがAを相続して混同が生じた」=「Cはこの債権を弁済した」
とみなされ、絶対効によりBとの関係においても債務は消滅する。ただしBは、Cに対して持分である50万円の分与は請求可能。

(連帯債権者の一人との間の混同)
第435条「連帯債権者の一人と債務者との間に混同があったときは、債務者は、弁済をしたものとみなす。」

不可分債権との違い

連帯債権不可分債権は似たものであるが、混乱しないよう、簡単に以下で整理していく。

不可分債権とは

不可分債権とは、「目的が性質上不可分であり、複数人の債権者があるときの債権」をいう。
性質上可分で、数人の債権者があるときに成立する。
⇔ 債権の目的が性質上可分であれば不可分債権とはならない

 

不可分債権の具体例

A(引渡請求権)  → B(債務者)

CD(引渡請求権)→ B(債務者)
※土地の引渡しは性質上不可分

AB間で土地の売買が行われ、AがBに対し土地の引渡請求権を持っているとする。その後Aが死亡し、CとDが相続、土地の引渡請求権も相続した。しかし土地の引渡しという行為は性質上不可分であるため、CとDの引渡請求権は不可分債権となる。

連帯債権の規定が準用される例と準用されない例

不可分債権には連帯債権の規定が準用される(428条)。
そのためここまでで解説してきた連帯債権の絶対効は不可分債権においても同様に考えることができる。

(不可分債権)
第428条「次款(連帯債権)の規定(第433条及び第435条の規定を除く。)は、債権の目的がその性質上不可分である場合において、数人の債権者があるときについて準用する。」

 

ただし条文にもあるように、例外が2つある。
連帯債権における、免除・更改」の絶対効を定めた433条、「混同」の絶対効を定めた435条に関しては準用しないというものである。

例1不可分債権の混同
AとBは、Cから金100万円相当の自動車を買い、その引渡請求権(性質上不可分)を有している。その後Aは死亡し、CがAを相続したとする。しかしこの時の混同は相対効となるため、Bは引渡しを請求できる。ただしBは、Cが受けるべきであった利益分に関しては償還しなければならない。
→ 分与割合が平等なら金50万円を償還

例2不可分債権の免除(と更改)
上と同じ例において、AがCの債務を免除(または更改)したとする。この時の免除(または更改)は相対効となるため、BはCに対して自動車の引渡しを請求できる。ただし引渡しをしたあと、BはCに対して金50万円を償還しなければならない。

連帯債権と不可分債権との違いまとめ

(連帯債権)不可分債権
履行の請求絶対効→ 準用絶対効
免除・更改絶対効→ 準用なし相対効
時効の完成相対効→ 準用相対効
相殺絶対効→ 準用なし相対効
  • 準用されるのは、履行の請求(432条)・相殺(434条)・相対効の原則(435条の2)
  • 準用されないのは、更改免除(433条)・混同(435条)

連帯債務との違い

連帯債務は、連帯債務と違って「履行の請求」および「免除」に絶対効が認められていない。

連帯債務連帯債権
履行の請求相対効絶対効
免除相対効絶対効(債権額の分与割合のみ)
時効の完成相対効相対効
相殺絶対効絶対効
混同絶対効絶対効
更改絶対効絶対効(債権額の分与割合のみ)

連帯債務の相対効・絶対効」に関する詳しい解説はこちらのページ

【民法改正】連帯債務の相対効と絶対効まとめ
連帯債務者の1人に生じた事由は、原則として「相対効」を有する。しかし、相殺・混同・更改に関しては例外的に「絶対効」が認められる。また近年の民法改正によって請求・免除・時効は相対効へ変わっている。このページではこれら連帯債務に関する効力について解説する。


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練習問題

難易度「易」の例題3問で理解度チェック!

1.連帯債権者の一人に生じた事由には、原則として絶対効が生じる
2.債務者が連帯債権者の一人に対してした履行は、絶対効を有する
3.AとBが連帯債権者であり、Aが債務者に対して免除をしたとする。このときBは、Aの分与割合に関しても請求することができる
難易度「易」_全6問難易度「並」_全5問
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