刑事訴訟法における「捜査」。この分野に関し、各試験で出題されやすいポイントだけを羅列的にまとめています。
捜査の端緒
< 検視について >
- 変死者または変死の疑いがある死体があるとき、検察官は、検視をしなければならない。
→ 検視は捜査前の処分であり、捜査そのものではない
→ このとき検察官は令状なしで他人の住居に立ち入ることができる
< 告訴について >
- 他人を誤って犯人として告訴したときも有効。
→ なぜなら、犯罪の種類や被害内容が特定されていれば良く、犯人の特定は必要がないから - 被害者が死亡したときでも、その被害者の明示の意思に反して、兄弟姉妹が告訴することはできない。
→ 親告罪において被害者が死亡している場合、検察官は、利害関係人の申立てを受けて告訴できる者を指定することが可能。 - 告訴は口頭でもOK
- 告訴の取消しは、当該告訴をした者ができる。
→ つまり、被害者の法定代理人が告訴をしたなら、被害者本人がその告訴を取り消すことはできない - 「告訴の客観的不可分の原則」により、一罪の一部について告訴をすると、一罪の全てにその効力が及ぶ。
被疑者の身体拘束
逮捕について
- 緊急逮捕ができるのは、死刑または、無期もしくは長期3年以上の懲役・禁錮にあたる罪を犯したと疑うに足りる充分な理由がある場合だけ。
- 緊急逮捕後、被疑者を釈放または被疑者が逃走した場合でも、逮捕状の請求をしなければならない。
- 逮捕に関する裁判や処分は、準抗告の対象にならない。
- 30万円以下の罰金、拘留、科料に当たる罪の現行犯については
「犯人の住居または氏名が明らかでない場合または犯人が逃亡するおそれがある場合」
に限り、現行犯逮捕することができる。
→ 通常の現行犯逮捕に加重要件を設けている
勾留について
< 勾留の要件 >
勾留の要件は刑事訴訟法第60条1項に規定がある。
刑事訴訟法第60条
「裁判所は、被告人が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある場合で、左の各号の一にあたるときは、これを勾留することができる。」
1号「被告人が定まった住居を有しないとき。」
2号「被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。」
3号「被告人が逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき。」
そして勾留の理由を開示する場合、
勾留の基礎となっている犯罪事実と勾留されている者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由、さらに上の60条1項各号に該当する事由を告げる必要がある。
- 現実に勾留されている被疑者は、勾留の理由の開示を請求できるが、勾留の執行停止を受けている状態だと、この請求はできない。
- 勾留理由開示請求および勾留取消請求は、いずれも起訴の前後を問わずすることができる。
- 第一審において無罪判決となっても、控訴審裁判所が被告人を勾留する余地はある。
- 勾留をする主体は、被疑者勾留においては裁判官(請求は検察官)、第1回公判期日前においては裁判官、第1回公判期日後においては裁判所となる。
- 被告人勾留の期間は原則2か月で、1月ごとの更新が可能。
- 被疑者勾留では接見指定が可能だが、被告人勾留では接見指定はできない。
「逮捕前置主義」 | 「事件単位の原則」 |
被疑者勾留では逮捕前置主義が適用されるため、勾留事実と同一の被疑事実において、先に逮捕をされていなければならない。 ただしすでに逮捕されている者について、逮捕が先行しない別の事実によって勾留をすることは認められる。 これは結果的に拘束期間が短くなり被疑者の利益となるからである。 | 逮捕および勾留の効力は、それぞれ逮捕状・勾留状に明示された被疑事実にのみ及ぶ。 そのため、ある罪で勾留されていた者につき、その後勾留の理由がなくなったとき、 |
なお、被疑者は出頭を求められても、逮捕や勾留をされていないのであれば、出頭を拒むことができ、出頭後もいつでも退去することができる。
証拠の収集について
- 捜索差押許可状には、犯罪事実の要旨を記載する必要はない。
→ 罪名、捜索すべき場所、身体もしくは物などは記載するが、被疑者の名誉や捜査の秘密等のため、犯罪事実の要旨は記載しない。 - 捜索差押許可状の執行をするとき、住居主等に立ち会わせることができない場合、隣人または地方公共団体の職員を立ち会わせなければならない。
- 下着の中を捜索する場合でも、通常覆われている部分を露出させなければ、身体検査令状なく捜索差押許可状のみですることができる。
- 鑑定人には、鑑定をする前に宣誓をさせなければならない。
- 通信傍受法で言う「傍受」とは、同意を得ないで他人間の通信内容を受けることである。
→ 一方の当事者の同意を得ている場合は「傍受」ではなく、傍受令状も不要。 - 身体検査令状により、被疑者以外の身体の検査をすることも可能
- 被疑者の住居等については押収すべき物が存在する蓋然性が強く、
押収の必要性があれば憲法35条における「正当な理由」があるものと推定される。
→ しかし被疑者以外の者の身体や物、住居等についてはそのような推定が働かず、「押収すべき物の存在を認めるに足りる状況」が要件となる。
→ 強制力の行使に慎重を期す趣旨である

憲法35条の趣旨や行政手続への適用、その判断基準などを解説
憲法35条では、刑事手続に関して、住居への侵入や捜索押収等に関して令状を要する規定が置かれている。しかし行政手続においても同条の適用を受けるのかという問題がある。このページではこの問題に関して言及する。