憲法総論まとめ(人権の享有主体、基本的人権の限界、憲法の私人間適用など)

憲法人権編「総論」をまとめて解説しています。主なポイントは以下です。

  • 人権には「自由権」「参政権」「社会権」がある。
  • 外国人や未成年に対しては人権に一定の制約がかかる。
  • 法人も人権の享有主体になる。

詳しくは下で解説しておりますので、ここで憲法総論をいっきに復習してみましょう。

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憲法の最高法規性

憲法は最高法規です。
その根拠は、憲法が基本的人権を保障していることにあります。

人間が、ただ人間であるということに基づいて、生まれながらに当然に持っている基本的な権利

国家成立の前提にこの人権が存在していると考えます。
そこで国家は「個人の尊厳」である人権に奉仕しますが、現実問題として、人権に関することであっても規制をかけなければならない場面が多くあります。

ただ規制をかけるためには、人権に奉仕するという建前上、国家による人権規制を正当化する必要性があります。

例えば表現の自由を規制する場面では、
「ある表現方法を規制しても別の方法を選択することが可能であるから人権侵害にはならない」
といった理由付けを行うことで正当化を行います。

人権の分類

人権は、大きく「自由権」「参政権」「社会権」に分けることができます。

  • 自由権:「国家からの自由」
    人権の典型例で、この中に精神的自由や経済的自由が存在します。
  • 参政権:「国家への自由」
    国家の存在によって観念し得るもので、選挙権・被選挙権などがあります。
  • 社会権:「国家による自由」
    参政権同様国家が前提に存在します。生存権や勤労の権利、労働基本権などが挙げられます。政治的な問題にも関わるため、裁判所が関与しにくく法的権利としては弱い権利であると言えます。

また、憲法には政治的なスローガンも多く含まれます。

例えば憲法25条1項では「最低限度の生活を営む権利を有する」とありますが、この権利を実現することは絶対的義務ではなく、政治上の努力目標と考えられています。

単なる道徳のような内容もあり、憲法第27条「勤労の義務」についても同様です。

人権の享有主体

人権の享有主体」とは、基本的人権が保障される主体であることを指します。
ここでは特に問題になることの多い外国人・法人・未成年について解説していきます。

外国人の人権

外国人については、場合によって人権に制約がかかることがあります。
その根拠は「性質説」にあります。

性質説
性質説では、人権を前国家的究極の価値として外国人にも保障が及ぶとする一方で、
性質上、日本国民のみを対象とする人権も存在するとしています。
「日本国民のみを対象とする人権」とは、この文言から読み取るに前国家的でない性質のもの、つまり人権のうち国家があって初めて観念される性質のものを指します。

例えば「自由権につき、外国人には「再入国の自由」が保障されていません。

判例によると「外国人の在留拒否は国の裁量事項であり、外国人には日本に在留する権利が憲法上認められてはいない」と判断されています。
そこで、在留中にした政治活動を更新不許可事由として斟酌しないことまでの保障は与えられていません。

別の事件には再入国の自由に関する判例があります。
指紋押捺を拒否したことを理由に再入国を拒否しても憲法違反にはならないという内容です。
この判例では、正当な理由なく指紋押捺を強制することは許されないとしつつ、外国人管理のために実施することは合理的であるとし、違憲ではないと判断されました。

なお、「出国の自由」は保障されます。

法人の人権

上の性質説を用い法人の人権についても考えると、法人も人権の享有主体であると捉えることができます。

なぜなら法人への人権保障はその構成員である個人にも効果が帰属するからです。さらに法人も社会における重要な構成要素であり、自然人と同じように活動をする実態を有するからです。
これらを根拠に享有主体と考えられています。

ただし性質上、選挙権や人身の自由、生存権などは保障されません。

精神的自由や政治活動の自由についてはケースバイケースで考えます。

精神的自由については内面的な精神活動外面的な精神活動があり、
前者には「思想良心の自由」「内心における信仰の自由」、
後者には「政治活動の自由」や「宗教法人における信教の自由」、学校法人における「学問の自由」などがあります。

内面的精神活動の自由は認められず、外面的精神活動の自由は認められます。

そのように考えれば、権利能力なき社団であっても社会的実態であることに変わりはないため、上の範囲で人権保障が及びます。

ある判例で法人による政治活動について言及されています。会社が特定の政党に政治献金する場合、これに反対する株主がいたとしても、会社には政治活動の自由があることから当該政治献金についても認められると判示されています。
当該政治献金については、会社の目的達成のために必要な行為と評価されたためです。

しかし税理士会が政治献金した事例では違法と評価されています。これは税理士会が強制加入であることが大きく関係しており、当該政治献金は税理士会の目的範囲外と評価されました。

同じく強制加入である司法書士会が会員に寄付を求めた事例もありますが、こちらは思想・良心の自由に対する制約が軽微であることから有効な行為と評価されています。

未成年の人権

未成年の人権については、「自己加害」から守る、という独特の問題があります。この観点から通常より広範な人権規制が認められています。

例えば未成年は酒やタバコを使用することが法的に許されていません。自由を制約されています。
しかしこれは未成年の身体の安全を守るために必要なことであるとして一定の制約も許されているのです。

基本的人権の限界

「公共の福祉」を根拠に人権制約が認められる場面も多くあります。

互いに自らの権利を主張していると、どちらかの人権は保障される一方で他方の人権が侵害されることもあります。すべての人に対し完全な人権保障をすることは困難です。時には公共・社会全体のことを考慮し、個人の利益と全体の利益のバランスを保つための施策を講じることも重要です。

そういう意味で、基本的人権にも限界があると言えます。

公共の福祉による人権制約に関しては、大きく3つの説が唱えられています。

  1. 一元的外在制約説
    → 基本的人権を包括し、その外側に公共の福祉があると考えます。
    基本的人権の価値が公共の福祉よりも低いと解釈されてしまう説です。そのため明治憲法と似た考え方であるとの批判がなされています。
  2. 内在・外在二元的制約説
    → 国家を前提として成立する社会権についてのみ公共の福祉の制約を認める説です。
    ただし制約のかかる範囲が曖昧であるとの問題があります。
  3. 一元的内在制約説
    → 人権制約の可否ではなく、その程度を問題とする説です。
    公共の福祉は、(すべて人権に必然的に内在する)実質的公平のための原理として規定されると考えます。

憲法の私人間適用

憲法は国家に対して適用する法であり、私人間に直接適用してしまうと、人権保障について国家が監視をすることになりかねません。そのため基本的には私人間に適用しようとしません。

しかし私人間でも場合によっては国家対国民のように、力関係が偏った構図も生じ得ます。
例えば大企業(法人)に対する一従業員(私人)が対立するケースなどです。

こうした場合の問題を実質的に解決するためには、一律に私的自治の原則に従うことは適当とは言えません。
そこで判例・通説ともに、憲法の「間接適用説」が採られます。

間接適用説では、憲法をそのまま適用させるわけにはいかないため基本的には民法の解釈に則りますが、その際、憲法の精神を斟酌するという方法論をとります。類推適用するわけでもありません。

私人間適用に関する判例

判例1:憲法を適用しなかった例

学生運動に参加していた学生が、その活動については秘したまま会社から内定を得ていました。しかしこの事実が発覚した後採用が拒否されてしまったという事例です。

憲法19条「思想良心の自由」の規律を適用させて考えると、採用拒否したことにつき問題がありそうにも思えます。しかしこの規定はあくまで国と個人との規律であるため、この事件は憲法上の問題ではないと判断されています。そして会社にも契約締結の自由があり、思想信条を理由に採用を拒否することは問題ないと判示しています。

憲法19条「思想良心の自由」についてはこちらで詳しく解説しています

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判例2:憲法の精神を斟酌した例

会社の定年規定に男女差が設けられていることを理由に、当該就業規則が無効であると争った事例です。憲法14条「法の下の平等」にそのまま従えば問題アリですが、私人間において直接の適用はされません。そこでこの事件を解決するため、憲法上の問題とすることを避けた上で、民法第90条(公序良俗違反)を主な理由に判決を下しました。

憲法14条「法の下の平等」についてはこちらで詳しく解説しています

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憲法が直接適用されることも

以上は原則論です。そのため必ずしも憲法が私人間で直接適用されないわけではありません。性質に応じて直接に適用される場面もあり、憲法15条4項・18条・28条などがその例です。

  • 15条4項:選挙人の選択
  • 18条:奴隷的拘束および苦役からの自由
  • 28条:労働基本権

特別権力関係

特別権力関係理論」なるものがあります。

これは、ある法律関係において、公権力が法律の根拠もなく私人を支配、基本的人権を制限できるとする理論です。しかも特別権力関係内部の行為に司法審査は及びません。

現代において特別権力関係理論は当然採用されていませんが、これを修正した特別権力関係理論は存在します。その理論では、特別権力関係を認めるものの、人権制限は合理的な範囲に限られ、司法審査も排除されないとします。

規制を認める判例

判例1:公務員に対する規制の例

非管理職、現業の公務員が勤務時間外に選挙ポスターを貼り付けた行為につき、規制がなされても正当であると判断された判例です。憲法第15条2項には、「すべて公務員は、全体の奉仕者であって、一部の奉仕者でない」とあり、この規定を根拠に公務の中立性を要請しています。そこで合理的でやむを得ない限度であれば人権規制も許容されます。

この基準には下の3つがあります。

  1. 規制の目的が正当であること
  2. 目的と禁止される行為の関連性
  3. 禁止による利益と失う利益のバランス

当該事例では、①行政の中立性を保つという目的があり、②選挙ポスター貼りを禁止することは行政の中立性に関連性が認められ、③ポスターを貼るという私的自由に比べ行政の中立性という公益では後者の方が優先すべき、という理由から、規制は正当であると判示されました。

判例2:在監者に対する規制の例

未決勾留されている者に喫煙が許されなかったため、その精神的損害に対する慰謝料を求めた事件があります。結果として、刑事収容施設内の秩序維持を優先するという理由により請求は認められていません。

また、在監者が自費で新聞を購読していたにもかかわらず一部塗りつぶされてしまったことにより知る権利を侵害されたとして国家賠償請求をした事例もあります。しかしここでも施設における秩序維持を理由に認められていません。

閲読禁止については、具体的事情の下、秩序維持の上で障害発生の蓋然性があること、さらに制限の程度が合理的な範囲であるなら規制も合憲であるとされています。


 

練習問題

難易度「易」の例題3問で理解度チェック!

1.出国の自由は外国人にも保障される
2.憲法には政治的なスローガンも多く含まれる。
3.法人は自然人とは異なり概念上のものであるため、人権の享有主体とはならない。

難易度「易」_全7問難易度「並」_全10問
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