【国家行政組織法】行政主体の意味や行政機関の具体例、地方公共団体まで解説

国家行政組織法」について解説。
行政主体の意味や行政機関のこと、
普通地方公共団体から特別地方公共団体のことなど、
行政組織に関して広く解説していく。

行政主体とは

まずは行政主体が何なのか、具体例を挙げて解説していく。

行政主体の行政機関の違い

行政主体:行政を行う主体。行政上の権利義務を負い、自己の名と責任において行政活動を行う法人
(非常に大きなもののように思えるが、「私人」と対になるのが「行政主体」と捉えるとイメージしやすい)

行政主体は法人であり概念的な存在であるため、実際にそれ自体が行政作用を行うわけではない。
そこで、自然人である公務員が行政機関として行政作用を行う
(その作用は行政主体が行ったものとみなされる)
例)A県が、建築主Bの申請に基づいて建築確認を行うケース
A県が行政主体であるが、公務員のXが建築主事という行政機関の地位につき、Bに対して建築確認を行う。そして行政機関の行った行政作用は行政主体がしたものとみなされるため、A県がBに対し建築確認をしたものとみなされる。

行政主体の種類

行政主体には、7種ある。


  1. ここで言う「国」とは、行政作用を行う法人としての意味
  2. 地方公共団体
    一定区域で居住滞在する人に対し行政作用を行う団体
    (自治権が保障された「普通地方公共団体」とそれ以外の「特別地方公共団体」がある)
  3. 独立行政法人
    独立行政法人通則法に従って、個別の法律により設立される法人
    国の組織の中で政策の実施機関とされるものにつき国から独立したもの
    (1999年にこの制度が創設され、現在約90の団体が存在)
  4. 特殊法人
    法律により直接に設立される法人で、独立行政法人を除いた法人
    (すべての特殊法人が行政主体になるわけではない)
    (民営化が進み減少、現在約30)
  5. 公共組合
    行政上の特定事業を行うため、利害関係ある組合員により構成された公の社団法人
    強制加入制、公権力の行使が認められるなどの特徴がある
    (土地区画整理組合、健康保険組合など地域的な事業を行う)
  6. 地方公社
    地方公共団体が、特定事業を行わせる目的で法律に基づいて設立した法人
    (地方道路公社、土地開発公社、地方住宅供給公社など)
  7. 地方独立行政法人
    地方独立行政法人法に基づき、地方公共団体によって設立される法人
    地方版、独立行政法人のようなもの
指定法人とは、特別の法律に基づき特定業務を行うものとして行政庁により指定された法人。
⇔ 地方公社と地方独立行政法人は「地方公共団体によって設立」。指定法人は既存の法人に対し「指定」を行うという違いがある。
指定法人とは、特別の法律に基づき特定業務を行うものとして行政庁により指定された法人。
⇔ 地方公社地方独立行政法人は「地方公共団体によって設立」。指定法人は既存の法人に対し「指定」を行うという違いがある。
なお、指定法人自体行政主体ではないが、国土交通大臣等の指定のもと行う建築確認は公権力の行使と認められ、その限りでは行政庁とみなされる。

行政機関の具体例

行政機関は、2つの観点から具体的な機関を分類できる。

例えば「行政庁」や「補助機関」「執行機関」などで分ける場合は、行政作用法上の権限行使に着目している。これを作用法的機関概念という。
→ 各機関が有する権限の違いで分ける:国土交通大臣(行政庁)と国土交通副大臣(補助機関)

これに対し「内閣府」や「省」「庁」などで分ける場合は、行政事務の配分に着目する。これを事務配分的機関概念という。
→ 仕事内容の種類で分ける:国土交通省と法務省

作用法的機関概念による分類

各行政機関が行使できる権限の違いに着目した場合、下の5つに分類できる。

  1. 行政庁
    行政主体のために意思決定をし、外部に表示する「処分権限」を有する機関
    (大臣や委員会など)
  2. 補助機関
    行政庁を補助する機関
    (副大臣、政務官など)
  3. 諮問機関
    行政庁の諮問に対し、法的拘束力のない、答申を述べる機関
    (法制審議会、税制調査会など)
  4. 参与機関
    行政庁の意思決定を拘束する議決をする機関
    (検察官適格審査会、電波監理審議会など)
  5. 執行機関
    行政庁の命令を実力で執行する機関
    (警察官、国税徴収職員など)
※ここでの「執行機関」は、「地方公共団体の執行機関」とは異なる

事務配分的機関概念による分類

国の最高行政機関は内閣であり、憲法にも明記されているように、行政権は内閣に属している。
そして内閣の下にある行政機関として(国の行政組織として)「内閣府」「省」「委員会」「庁」がある。

  1. 内閣府
    内閣に設置され、内閣総理大臣がその長として事務を統括するが、内閣官房長官も命を受けて統括する
    内閣を補助する機関であると同時に、行政事務を担当する行政機関でもある
    行政各部に対する統轄を助けるという趣旨から、国家行政組織法からは外されている

  2. 内閣統轄の下、それぞれの行政事務を担当する行政機関
    長として大臣、その他副大臣や大臣政務官、大臣補佐官などが置かれる

  3. 内閣府・省の外局
    規模が大きく内閣府・省では行政事務がまかないきれない場合に設置される
  4. 委員会
    内閣府・省の外局
    合議制を採用し、独立性を有する

内閣について

内閣は、独立した地位にある会計検査院を除き、国の行政組織の最上位に位置する。
内閣総理大臣と国務大臣から組織され、国会に対し連帯責任を負うこと、閣議により職権を行使することなどが憲法等で定められている。

内閣府や内閣官房、内閣法制局、安全保障会議、人事院などは、この内閣を補助する機関として配置されている。
  • 内閣総理大臣は、国会の議決で「指名」し、天皇が「任命する
  • 内閣総理大臣は「行政各部の指揮監督権限」「行政各部の処分等を中止させる権限」をもつ
  • 国務大臣は内閣総理大臣が「任免」する
  • 国務大臣は原則14人(増やせる場合もある)
  • 閣議は内閣総理大臣が主宰し、慣行により運営、決定については全員一致が必要で連帯責任となる

権限の代行(権限の委任・代理・専決・代決)について

法律で定められた行政庁が処分等の権限を行使するのが原則であるものの、大臣などの行政庁がすべての処分等を行うことは現実的には難しい。

そこで、「権限の委任」「代理」「専決」および「代決」という権限の代行が認められている。

権限の委任代理専決代決
行政庁が他の行政機関へ権限の一部を移譲すること行政庁以外の行政機関が代わりに権限を行使すること「恒常的に」行政庁の権限に属する事項を補助機関が代わりに決裁し、行政庁が決定したものとして、扱うこと「一時的に」行政庁の権限に属する事項を補助機関が代わりに決裁し、行政庁が決定したものとして、扱うこと
権限の委任権限が移るため法律による根拠が必要代理であるため効果は行政庁に帰属する内部的な決裁権の移転に過ぎず、効果は行政庁に帰属する内部的な決裁権の移転に過ぎず、効果は行政庁に帰属する
効果の帰属は委任された機関にあり、私人からは大元の権限者が見えない顕名主義が採られるため私人は代理であることがわかる補助機関による決裁であることは私人から見えない補助機関による決裁であることは私人から見えない

※行政機関のする代理には「法定代理」と「授権代理」があるが、いずれも代理機関はもとの行政機関の名で事務を処理する。指揮監督権は行政庁に残るため、法律の根拠は不要。

上級行政機関による指揮監督権の種類

前項の「権限の代行」は、行政庁による処分を別の行政機関が行うときのもの。

一方「指揮監督権」は、上級行政機関から下級行政機関に対する作用のことである。
これにより階層構造となっている行政組織の統一性が確保される。
以下、指揮監督権6種をごくかんたんに説明したものである。

  1. 訓令権
    指示や命令を与える権限
  2. 監視権
    報告を求めたり、下級行政機関の調査をしたりする権限
  3. 許認可権
    下級行政機関の権限行使について事前に承認を与える権限
  4. 権限争議の決定権
    下級行政機関同士の争いに対し決定を行う権限
  5. 取消権および停止権
    行為を取り消したり、執行を停止させたりする権限
  6. 代執行権
    下級行政機関の行為を代わりに行う権限

①~⑤までの指揮監督権は、上級行政機関が一般に有する権限であるとされ、法律による根拠なく行使ができるとされる
(なお、取消権および停止権に関しては争いがある)

他方、代執行権は権限が移ることになるため法律による根拠が必要である。

地方の統治体制

以下、地方公共団体に関して詳しく見ていく。

普通地方公共団体と国の違い

国と比較すると、普通地方公共団体は「二元代表制(首長制とも)」や「執行機関の多元主義」が採用されているなどの特徴がある。

  • 二元代表制または首長制は、議会と長のいずれもが住民による直接選挙で選ばれることを意味する。
    (国では、長である内閣総理大臣が国会により指名されるという議院内閣制が採用されている)
  • 執行機関の多元主義とは、長と並列に執行機関が置かれていることを意味する。
    (国では行政県が内閣に属しており、内閣統轄の下、行政機関が置かれている)

普通地方公共団体(都道府県と市町村)

普通地方公共団体は、都道府県と市町村からなる。

  • 指定都市
    → 行政区の設置は義務
    → 法人格・議会はない
    → 都道府県の事務を処理できる
  • 中核市
    → 行政区の設置は不可
    → 法人格・議会はない

※指定都市は行政区(○○区など)に代えて総合区を置くことができる。総合区は条例で定めることができ、総合区の区長は比較的大きな権限を持つという特徴がある。
議会が長の不信任の議決を行った場合、長は10日以内に議会を解散しなければ失職する。解散後の議会で再度不信任の議決がなされても失職。

特別地方公共団体

  • 特別区
    市に相当する基礎的な地方公共団体。都道府県においても設置が可能になっています。
  • 地方公共団体組合
    複数の地方公共団体が共同処理のために設ける一部事務組合広域連合
  • 財産区
    市町村や特別区の一部で、財産や公の施設について管理・処分を行う法人
※特別区と行政区の違い
①地方公共団体かどうか
→ 特別区は地方公共団体
②市町村に相当するのか一部に属するのか
→ 特別区は該当する
③議会があるか
→ 特別区にはアリ
④区長を決めるのに選挙か市長の任命なのか
→ 特別区では選挙

地方公共団体の事務

かつて地方公共団体の長などの機関は、国の下級機関として位置づけられていたが、地方分権の理念に則り、地方公共団体自身の事務として「自治事務」および「法定受託事務」を処理することが定められた。

  • 法定受託事務
    国や都道府県が本来すべきものとして法律または政令に定められている事務
    地方公共団体の事務であることに変わりないが、国や都道府県による関与が認められ、代執行も認められる
  • 自治事務
    法定受託事務以外の事務

住民の権利(直接請求)

  • 議会の解散請求
    1/3の請求から、1/2の投票で決する。
  • 議員・長の解職請求
      〃   (選挙管理委員なども同様)
  • 条例の制定改廃の請求
    1/50の請求から、20日以内に議会で決する。
  • 事務の監査請求
    1/50の請求を受けて監査を行う。

※この他、公金の使い方をチェックするため「住民監査請求」も可能。これは1人でもできる。

国や都道府県の関与

地方自治法では「関与」の9類型が定められている。

  1. 助言・勧告
  2. 資料提出の要求
  3. 是正の要求
  4. 同意
  5. 許可・認可・承認
  6. 指示
  7. 代執行
  8. 協議
  9. その他

国・都道府県による代執行

法定受託事務で違法・懈怠があったとき、国または都道府県が代執行という形で関与することがある。

①勧告 → ②指示 → ③高等裁判所に対する代執行訴訟の提起

紛争処理制度

< 国VS地方公共団体 >

「国地方係争処理委員会」に「審査の申出」をし、委員会からの結果に不服があれば高等裁判所に「国の関与に関する訴え」を提起する。
※国側から提起する違法確認訴訟制度もある(是正の要求に対する地方公共団体の不作為がある場合など)。

なおここでの「関与」とは、自治体が「固有の資格において名あて人となるもの」としてなされる行為である。

固有の資格」の意味に関してはこちらで開設

「固有の資格において名あて人となるもの」の意味を解説(行政法・地方自治法)
「固有の資格」とは「一般人では立ち得ない立場に国や自治体が立った状態のこと」である。このページでは「固有の資格において名あて人となるもの」がどういう意味なのかイメージしやすいよう、固有の資格に該当しない例と比較して解説する。

< 都道府県VS市町村 >

「自治紛争処理委員」に「審査の申出」をして「都道府県の関与に関する訴え」の提起ができる。

条例の制定

違反者に対して

  • 一定範囲の刑罰(行政刑罰)
  • 5万円以下の過料(秩序罰)

を科す内容の条例を定めることも可能。

条例の制定にあたっては、

①長または議員が条例案を議会に提案 → ②議決 → ③長が公布

という流れで手続を踏むことになる。

練習問題

難易度「易」の例題3問で理解度チェック!

1.行政主体とは、行政上の権利義務を負い、自己の名と責任において行政活動を行う法人のことである
2.内閣府は内閣を補助する機関であるが、行政事務を担当する行政機関ではない
3.法律で定められた行政庁がその権限を行使して処分等を行うのが原則であるため、その行政庁に代わり他の行政機関が権限を代行することは認められない
難易度「易」_全7問難易度「並」_全7問
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