【入門-構成要件】因果関係説や実行行為、不作為犯などを解説 – 刑法2話

構成要件とは

構成要件は犯罪カタログ

構成要件とは

「犯罪の類型やパターンのようなもの」

です。犯罪カタログと呼ばれることもあります。

刑法が禁ずる行為のパターンであり、どのような行為が何罪に該当するのかが定められています。

あらかじめ禁止される行為を明示することで違法行為の予告的機能を持ちます。

しかし逆に言えば、この構成要件に該当しない行為は、一般的に悪いと評価される行為でも刑罰により処罰することはできません。

これは刑法の最も重要な考え方である「罪刑法定主義」に則っています。構成要件の犯罪予告的機能に対し、こちらは「構成要件の罪刑法定主義的機能」と呼ばれます。

さらに構成要件のもう1つの機能として、「犯罪の個別化機能」もあります。

これはよく似た行為や同じ結果を個別に分けて処罰ができるようにする機能です。
例えば殺人罪と傷害致死罪では同じ結果を発生させていますが、前者は故意的に結果を発生させ、後者は結果的に死亡してしまったという違いがあります。
これを同じように処罰するのはバランスが良くないと思われます。そこで個別に構成要件を設けてその処罰内容等を分けているのです。

構成要件該当性は犯罪成立のファーストステップ

犯罪が成立するためにはいくつかの要件を満たす必要があります。

構成要件に該当するかどうか、構成要件該当性はその要件の1つ目です。そのため、ある犯罪につき成立するためには、まずは行為者の行為が構成要件に該当することが条件とされます。

ただしここで問題になるのが構成要件該当性の判断です。

従来は客観的・形式的に構成要件を考えていました。しかし客観性に拘ると抽象的な評価になりがちで、最近ではより実質的に評価するよう変わってきています。

そこで「主観的構成要件要素」「規範的構成要件要素」を認めるようになっています。

主観的構成要件要素とは、行為者の主観、つまり故意や過失などのことです。
行為者の故意がなければ成立しないケースや、過失を罰するケースなどがあります。

規範的構成要件要素とは、構成要件の文言だけでは判断しきれない要素、例えば強制わいせつ罪における「わいせつな行為」などの要素です。
構成要件に該当するかどうか、裁判所の判断を要します。

これらに対し「客観的構成要件要素」には実行行為・構成要件的結果・因果関係・主体と客体があります。

構成要件の要素

実行行為

実行行為とは
「構成要件に該当する行為」

です。

  • 作為犯における実行行為は、作為の形(「~することを罰する」など)をとります。
  • 不作為犯における実行行為は、不作為の形(「~しないときは罰する」など)をとります。

※不作為犯については下で詳しく説明しています。

なお、実行行為をする者は「正犯」と呼ばれ、正犯を助けるものは「共犯」と呼ばれます。

構成要件的結果

構成要件的結果とは
「法益侵害および法益侵害の危険が発生すること」

です。

行為の主体と客体

実行行為をする者は「正犯」と言いますが、広義には「行為の主体」あるいは「犯罪の主体」と呼ばれたりもします。一般的には「加害者」です。

他方、実行行為の対象となる人やモノは「行為の客体」と言います。対象が人の場合、一般的には「被害者」です。

因果関係

因果関係とは
「実行行為と構成要件的結果を結ぶ、原因と結果の関係」

を言います。

行為と結果の条件関係とも表現されます。

「あの行為があったから、この結果が生まれた」「あの行為がなければ、この結果は生まれなかった」という関係性です。

どのようなときに因果関係を認めるのか、これには諸説あります。

  1. 条件説
  2. 原因説
  3. 相当因果関係説

条件説とは

「「あの行為がなければ、この結果は生まれなかった」という条件関係さえあれば常に因果関係を認める」
という説です。

しかしこの条件説を徹底して適用させると異常な結論を招くことがあります。

相当因果関係説とは
「条件説を基礎に、原因と結果の発生に相当性がある場合にのみ因果関係を認める」

という説です。

相当性とは
「一般的に考えて、その行為によりその結果が通常起こり得る」
ということを意味します。
相当因果関係説では、相当性の判断基準によってさらに3説に分けられます。

①主観的相当因果関係説

主観的相当因果関係説では、行為者がある事情につき認識していたかどうかを相当性の判断に考慮します。

例えば、暴行事件において被害者がすでに怪我をしていたり持病を持っていたりすると、暴行行為によって想定以上の結果が発生するおそれがあります。主観的相当因果関係説では、加害者がこの事実を知っていることを要します。

つまり犯罪が成立しにくくなる方向へ傾きます。

②客観的相当因果関係説

客観的相当因果関係説では、すべての客観的事情と、行為後に生じた予見可能な事情を相当性の判断基準にします。主観的相当因果関係説に比べて犯罪が成立しやすくなります。

③折衷的相当因果関係説

折衷的相当因果関係説では、主観的相当因果関係説と客観的相当因果関係説の間の考え方をとります。

行為者が事情を知らなかったというだけで不成立とはしないものの、一般人が認識できた、または行為者がたまたま認識できた事情については成立すると考えます。

不作為犯について

不作為とは作為をしないこと、つまり何もしないことです。

例えば窃盗罪では窃盗という作為が禁止されていますが、不退去罪では不作為が禁止されています。他人の家に上がり、その後帰ってくださいと言われたにも関わらず帰らないようなケースです。
帰るという作為をしなければならないのに、帰らないことで成立する犯罪です。

また不作為犯は「真正不作為犯」と「不真正不作為犯」に分けられます。

①真正不作為犯

真正不作為犯は、不退去罪における犯人などです。構成要件で作為を求められているのに不作為をする場合です。「命令違反」が該当します。

上の不退去罪の例も命令違反による真正不作為犯です。

②不真正不作為犯

不真正不作為犯は、真正不作為犯とは違い「禁止違反」の場合に該当します。

不作為をしてはいけないと言われているにも関わらず不作為をして犯罪を成立させる場合です。

例えば親が赤ちゃんの世話をせずに死亡させるケースです。何も作為することなく殺人罪を成立させています。

ただし不真正不作為犯の成立にはいくつかの条件が必要です。1つは行為者に作為義務があること、2つめに行為者に作為可能性があること、3つめに不作為が作為と同程度の違法性を帯びること、です。

例えば見ず知らずの人が危険な状態であったとします。その人を助けなければ死んでしまうことが明らかでも、他人に対し助けないといけない義務はありません。この場合だと行為者に作為義務がありませんので不真正不作為犯にはなりません。