ここでは行政法において出てくる
「固有の資格」
「固有の資格において名あて人となるもの」
の意味を解説する
「固有の資格」とは
「固有の資格」とは、「一般人では立ち得ない立場」に国や自治体が立った状態のことをいう。
一般人が立ち得るパターンと比較してイメージすると分かりやすい↓↓
固有の資格に該当しない例
例えば自治体が飲食店の営業を始める場合、都道府県知事に営業許可の申請をすることになる。これに対して都道府県知事が不許可処分を下した場合、自治体は当該不許可処分の取消しを求めて取消訴訟を提起できる。
この不許可処分を受けた自治体の立場は、一般国民と同じ立場
(一般国民も、飲食店営業の許可を申請しそれに対する不許可の処分をされたとき、取消訴訟を提起することで対応するため同じ)
(一般国民も、飲食店営業の許可を申請しそれに対する不許可の処分をされたとき、取消訴訟を提起することで対応するため同じ)
そのため、この時はたまたま主体が自治体であったというだけであり、私人とは異なる特別の立場にあるわけではなく「固有の資格において名あて人となるもの」には該当しない。
固有の資格に該当する例
一方、自治体が地方債を起こして借金をする場合、総務大臣や都道府県知事の許可を要する。
このときの許可を受ける立場は「一般人では立ち得ない立場」
(一般国民が借金をするのに行政庁の許可を受ける必要はないから
(一般国民が借金をするのに行政庁の許可を受ける必要はないから
よって、このときは「固有の資格において名あて人となるもの」に該当する。
「固有の資格」が問題になるケース
行政法を学んでいって「固有の資格」が問題となるのは、以下のようなケースが主である。
ごく簡単に紹介する。
行手法および行審法
固有の資格の概念は行政手続法や行政不服審査法において以下のように出てくる。
例)行政手続法4条1項、行政不服審査法7条2項
→ 行政処分のうち、国や自治体が「固有の資格において名あて人となるもの」に関しては、行手法・行審法が適用されないと規定されている
→ 行政処分のうち、国や自治体が「固有の資格において名あて人となるもの」に関しては、行手法・行審法が適用されないと規定されている
行政手続法
(国の機関等に対する処分等の適用除外)
4条1項「国の機関又は地方公共団体若しくはその機関に対する処分(これらの機関又は団体がその固有の資格において当該処分の名あて人となるものに限る。)及び行政指導並びにこれらの機関又は団体がする届出(これらの機関又は団体がその固有の資格においてすべきこととされているものに限る。)については、この法律の規定は、適用しない。」
行政不服審査法
(適用除外)
7条2「国の機関又は地方公共団体その他の公共団体若しくはその機関に対する処分で、これらの機関又は団体がその固有の資格において当該処分の相手方となるもの及びその不作為については、この法律の規定は、適用しない。」
地方自治法
地方自治法に出てくる「関与」においても固有の資格は重要な概念。
例)地方自治法245条
→ 普通地方公共団体に対する国または都道府県の「関与」とは、国の機関が自治体に対してする行為や、自治体の機関が他の自治体に対してする行為のうち、その行為を受ける側の自治体が「固有の資格において名あて人となるもの」のことを指す
→ 普通地方公共団体に対する国または都道府県の「関与」とは、国の機関が自治体に対してする行為や、自治体の機関が他の自治体に対してする行為のうち、その行為を受ける側の自治体が「固有の資格において名あて人となるもの」のことを指す
地方自治法
245条「本章において『普通地方公共団体に対する国又は都道府県の関与』とは、普通地方公共団体の事務の処理に関し、国の行政機関又は都道府県の機関が行う次に掲げる行為(普通地方公共団体がその固有の資格において当該行為の名あて人となるものに限り、国又は都道府県の普通地方公共団体に対する支出金の交付及び返還に係るものを除く。)をいう。」