量刑の決め方について~量刑判断における量刑相場や余罪との関係~

ここでは量刑判断において考慮される事情や、量刑相場のこと、さらに余罪がある場合の量刑の決め方などに言及していく。

量刑は行為責任と一般情状から判断する

量刑を決定する場面においては、前提問題として、起訴された罪の法定刑の範囲内で考えなければならない。
その上で、「行為責任」および「一般情状」を考慮する。まずはこれらの意味を整理し、量刑判断の流れを見ていく。

行為責任とは

行為責任とは、いわゆる「犯情」のことを指し、行為態様や動機、結果など、犯罪自体の情状を意味する

後述の一般情状との違いを明確にできない場合もあるが、少なくとも行為責任と呼ぶためには、罪となる事実がなければ存在し得ないものでなければならない。この事実と密接不可分な事情、かつ訴因の内容でもある犯行態様および結果等がその中心となる。

一般情状とは

一般情状とは、上の行為責任に含まれない、幅広い事情のことを指す。犯情のように、罪となる事実の存在が欠かせないものもあれば、そうでないものも含まれる。例えば被害者の持つ被害感情や被告人が持つ反省の情などは罪となる事実があってこそ存在するものであるが、犯情とは言われない。

他方当該事実を前提としない多くの一般情状には、例えば再犯可能性や常習性、犯罪傾向なども含まれる。これらはその事件における当該事実の有無を問題としない。なお、これらの事情は被告人の性格や年齢、前科、生活態度、経歴などから推認される

量刑判断の順序

一般予防および特別予防の観点から、量刑判断においては一般情状も考慮するが、それは責任刑の中で考慮すべきものと考えられている。そして責任刑とは、行為責任によって定まる刑の幅を意味する。つまりまずは行為責任から考慮して量刑判断が行われる

量刑相場について

以上のように量刑判断がなされ、その結果が集積されることで、ある犯罪に対する量刑相場ができあがる。なお、一般に「量刑相場」と呼ばれることが多いが、近年は「量刑傾向」と呼ばれることも多い。

法規範性は持たないが非常に重要

量刑相場はあくまで過去の事例をもとにした目安に過ぎず法規範性までは有さないものの、実務上は非常に大きな意味を持つ。実際、宣告された刑が量刑相場の幅を超えた場合には控訴審において、不当であるとして破棄される破棄される可能性がある

量刑相場と責任刑の違い
犯情(行為責任)を考慮して一定の刑の幅が作られる責任刑は、理論上の、観念的な刑である。これに対し量刑相場は過去の実例から抽出される具体的な刑。

量刑判断に余罪は考慮できるか

起訴されていない罪を余罪として認め、実質上これを処罰する趣旨で量刑判断に利用することは許されない。ただ、犯罪の動機や目的、方法、被告人の性格等の情状を推知するために用いるのは許されると考えられている。

起訴していないにも関わらず実質処罰するような行為が認められないのは、「不告不理の原則」や「法の適正な手続」を保障する憲法31条、「証拠裁判主義」を定める刑事訴訟法317条、「二重処罰の禁止」などを保障する憲法39条などに反するおそれがあるのがその理由である。

本罪における情状とみえることが前提

余罪の内容が、本罪と関係するということが前提となる。例えばある暴行事件の余罪がある場合において、それと無関係の窃盗事件で刑を重くすることは適切とは言えない。

そのため、本罪の情状とみれることが、余罪を量刑上考慮するための条件となる。つまり本罪における動機や目的、方法、性格、経歴などの情状を推知するための資料と言えなければならない。

量刑相場とのバランスが重要

余罪を考慮した量刑判断は、犯情などの資料としてであれば許される余地があるが、やはり量刑傾向を無視することはできない。

基本的には余罪を考慮して刑を重くするとしても、量刑傾向の範囲を逸脱することはできないと考えられている。つまり、その範囲内において重くすることができるに留まるとも言える。これは余罪が多数ある場合でも同様。

そもそも有罪であると決定づけるには被告人に防御の準備をさせ、その他一連の手続を段階的に行わなければならない。それを本罪の刑に追加する形で簡単に重くできてしまったのでは適正手続の保障が守られているとは言えない。

以上のような理由があるため、

本罪だけで考えた場合の刑の幅を超えてしまう
= 余罪につき有罪認定がされた状態

ということになり認められない。