逮捕・監禁罪の違いや成立要件、保護法益は?可能的自由と現実的自由も解説

逮捕・監禁罪について

条文

刑法第220条(逮捕及び監禁)
「不法に人を逮捕し、又は監禁した者は、3月以上7年以下の懲役に処する。」

これらの罪はいずれも継続犯。

「身体活動の自由」が保護法益

この罪は、人の身体活動の自由を奪う罪。保護法益は身体活動の自由。

身体的自由の意義について

「身体的自由」の意義については、下の2つがある。

  • 身体的自由 = 「現実的自由」と解する考え方
  • 身体的自由 = 「可能的自由」と解する考え方

例えば睡眠中の者や泥酔者を客体として監禁等をする場合
現実的自由と解する考え方によれば、監禁罪の成立につき消極という結論が導かれる。
要は監禁罪が成立しにくい方向へ傾く。
客体となる被害者の移動ができる自由を、現実的に侵害することを要するためである。可能的自由と比較して考えると理解しやすい。

可能的自由と解する考え方では監禁罪の成立に積極という結論、つまり監禁罪が成立しやすい方向へと傾く。
可能的自由では、自由に移動できることの可能性を侵害しているかどうかに着目するのであり、現実的に自由を奪っている必要はない。

仮に睡眠している客体を監禁したとしても、客体が、監禁されていることに気が付かなければ結果的に何も不自由はしていないため現実的自由は侵害されていない。

しかし「移動しようと思えばできる状態」ではなくなっている。たまたま睡眠をしていて移動をしようと思わなかっただけであり、この場合可能的自由は侵害されたことになる。

「監禁」とは

「監禁」を簡単に説明すると「一定の場所からの脱出を不能、または、著しく困難にすること」と言える。

判例では監禁のことを「人を一定の区域場所から脱出できないようにしてその自由を拘束すること」と言っている。

その方法は、必ずしも暴行または脅迫である必要はなく、偽計によって被害者の錯誤を利用する場合をも含むとしている。つまり嘘をついて相手を勘違いさせた上での拘束も同罪における監禁罪にあたるとしている。

「逮捕」と「監禁」の違い

「逮捕」とは、直接的な身体の拘束をいう。また拘束の時間も関係してくる。

  • 瞬時の拘束は逮捕罪に該当しない。
    = 暴行罪
  • 5分間両足を縛れば逮捕罪成立とする判例がある。

監禁罪が成立する例

例1)入浴中の者の服を隠す行為

→ 風呂場という一定の場所からの脱出を著しく困難にしているため監禁罪が成立する。

例2)自分の運転するバイクの荷台に相手を乗せ、1000メートル余り道路を疾走する行為

→ バイクの荷台という一定の場所からの脱出を著しく困難にしているため監禁罪が成立する。

例3)ある部屋で寝ているAがいる。Bは外から鍵をかけてAの脱出を不能とした。数時間後Bは鍵を外した。しかしその間Aは寝ており、何事もなく部屋を出ていったケース。

→ 上で説明した「可能的自由」を侵害した例。判例では、被害者が監禁の事実を意識している必要はないとしており、被害者の脱出可能性を奪った(可能的自由の侵害)ため監禁行為に該当。監禁罪が成立する。

例4)強姦目的で知人を車に乗せた。その際「家まで送る」と嘘をついた。しかし走行中に計画を中止することに決め、強姦することなくそのまま家まで送り届けたケース。

→ 上の例同様、監禁罪が成立する。これも被害者の可能的自由を侵害。
ただし現実的自由が身体的自由の意義であるとする説によれば、被害者の現実の自由を奪うこと(現実的自由の侵害)を監禁行為と考えるため、上の例は監禁罪に該当しないという結論が導かれる。この説の場合、被害者が加害者の意図に気が付き、脱出したいのにできないという状態になれば監禁罪が成立する。

逮捕・監禁致死傷罪について

条文

221条(逮捕等致死傷)
「前条の罪を犯し、よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。」

逮捕・監禁致死傷罪の成立前提

逮捕・監禁致死傷罪(221条)は、逮捕・監禁罪を犯し、その上で人を死傷させた場合に成立する結果的過重犯。

そのため同罪が成立するためには、基本的に逮捕・監禁罪が成立していることが前提となる。また当然、逮捕・監禁行為と人の死傷との間に因果関係が存在しなければならない。

監禁罪と傷害罪が併合罪となった判例

逮捕・監禁致死傷罪が成立するためには、前項で説明したように、前提として逮捕・監禁罪の成立、そして死傷という結果との因果関係が条件となる。下の例は因果関係が否定され、逮捕・監禁罪および傷害罪の併合罪となった事例である。

例)強制的に自動車に乗せ事務所に連行、1時間にわたり監視していた。その後事務所内で、包丁で小指を切断されたという事例。

少なくとも監禁罪と傷害罪は成立するが、この両罪の間に牽連関係が存在するとは評価されず、両罪は併合罪となった。

監禁致死傷罪が成立する例

前述の例と同じく、強姦目的であったが嘘をついて知人を車に乗せた場合を考える。ただしここでは、途中で被害者が意図に気が付き、つまり監禁されていることの意識ができ、なんとか脱出した場合を想定する。

この脱出の際、別の車にひかれて死亡または傷害を負ったとする。直接的に死傷という結果を生んだのは別の車ではあるが、監禁状態から脱出しようとしたことに起因している。そうして因果関係が認められれば、221条の条文通り「監禁の罪によって人を死傷させた」と言え、監禁致死傷罪が成立することになる。