【憲法-判例まとめ】重要判例12選!川崎民商事件や砂川政教分離訴訟などかんたん解説

ここでは憲法の入門者向けに、重要判例12選をまとめて紹介しています。よく問題にもなるポイントですので、まずは合憲か違憲か、結論だけでも確認しておくといいでしょう。
重要な条文については判旨の下に記載しております。

いずれも有名な判例で、行政書士試験や司法書士試験、司法試験などを目指す方はまとめて必ず押さえておかなければならない判例です。公務員試験やその他憲法に関する試験のある方もぜひここで紹介する判例をまとめてチェックしておきましょう。

ピンポイントで判例を調べたいという方は下の「目次」から飛ぶことができます。

夫婦同氏制度の合憲性

結論:夫婦同氏制度を定めた民法750条は、憲法14条等に違反しておらず合憲

概要:平27.12.16
女性が夫婦別姓を求めた事件。この事件では平等原則違反についても主張。現実問題として、妻だけが姓の変更をしていることを理由にした主張である。

判旨:

  1. 前提として、民法750条(↓参照)は、夫婦は夫または妻の姓を称することを規定しており、夫の姓しか選択できないわけではない。
  2. 現実に、夫の姓を選択する夫婦が圧倒的多数であるとしても民法750条の結果ではない。
  3. したがって、民法750条は憲法14条1項(↓参照)に違反しない。
  4. また憲法13条(個人の尊厳・幸福追求権)・24条(家庭における両性の平等)にも違反しない。

民法750条(夫婦の氏)
「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する。」

憲法14条(法の下の平等)
「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」

再婚禁止期間違憲訴訟

結論:旧民法で定められていた再婚禁止期間は、100日を超える範囲については違憲

概要:平27.12.16
旧民法733条1項が女性のみ6か月の再婚禁止期間を設けていたことが、憲法14条の平等原則に反しないかが争われた事件。

判旨:

  1. 旧民法733条(↓参照)の立法目的自体に合理性はある。(父性の推定重複を回避し父子関係をめぐる紛争の発生を未然に防ぐことが目的)
  2. そこで期間について考える。民法772条規定上、すぐに再婚し200日後に出産した場合、前後の夫のどちらの推定もはたらくことになる。これを防止するには100日のタイムラグを作る必要がある。
  3. ・嫡出の推定が前婚の子にはたらくのは【離婚等から300日以内】
    ・後婚の子に推定がはたらくのは【婚姻から200日を経過した後】
  4. だから、100日の再婚禁止期間を設けることは憲法14条1項(法の下の平等)および憲法24条2項(家庭における両性の平等)に違反しない。
  5. しかし、100日を超えて禁止することは、国会に認められる合理的な立法裁量の範囲を超えるものとして、立法目的との関連において合理性を欠く。よって、憲法14条及び憲法24条に違反。

※なお国家賠償請求については認められなかった。
※この判例を受けて改正された民法733条は以下。

旧民法733条
「女性は離婚や結婚取り消しから6ヶ月を経た後でなければ再婚できない」

現行民法733条
「女は、前婚の解消又は取消しの日から起算して100日を経過した後でなければ、再婚をすることができない。」

衆議院議員定数不均衡訴訟

結論:投票価値の平等は失われていたが、合理的期間内に是正がなされたため違憲ではない

概要:平23.3.23
衆議院議員選挙において、都道府県ごとの投票価値に不平等があり違憲であると争った。

判旨:

  1. 衆議院議員の選挙制度では、都道府県を定数分配の基盤としており、民意の的確な反映とともに投票価値平等を確保することも求められている。
  2. 選挙制度の合憲性は、国会に与えられた裁量権の行使として、合理性を有するか否かによって判断される。
  3. 「1人別枠方式」は相対的に人口の少ない県に定数を多く分配することが目的とするが、選出される議員は選挙区を問わず、全国民を代表する。だから都道府県ごとの投票価値に不平等が生じていることは原則認められない。
  4. ただし、憲法上要求される合理的期間内に是正がなされれば違憲にはならないと考える。
  5. 本件においては、1人別枠方式に係る部分は遅くとも本件選挙時において立法時の合理性が失われ、投票価値の平等に反する状態であったと言える。しかしながら合理的期間内における是正がなされており、違憲ではない

砂川政教分離訴訟

結論:無償で市有地を神社に利用させた行為を違憲とした。

概要:平22.1.20
市有地を無償で神社施設の敷地としての利用に供していた事件。

判旨:

  1. 憲法89条(公の財産の支出・利用)の趣旨は、憲法20条1項後段(政教分離)に規定する宗教団体に対する特権の付与の禁止を財政的な側面からも確保することにある。
  2. 無償で供する行為は、宗教団体に対する便宜の供与にあたる。
  3. そして憲法89条に違反するかどうかは、たとえ無償で敷地を供していたとしても、社会通念に照らして総合的に判断すべきである。
  4. 本件では、市と神道との関わり合いが相当とされる限度を超え、当該行為は一般人の目から見て、市が特定の宗教に対して特別の便益を提供し、これを援助していると評価されてもやむを得ない。つまり憲法89条の禁止する公の財産の利用提供にあたる行為であり、ひいては憲法20条1項後段の禁止する宗教団体に対する特権の付与にも該当する。よって違憲。

憲法20条
「信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。」

葛飾ビラ配布事件(表現の自由)

結論:出入りが認められていない集合住宅敷地内でビラを配布した行為を罪に問うた。これは憲法21条表現の自由に反することなく合憲とされた。

概要:平20.4.11
集合住宅敷地内でビラを配布したことにより起訴された被告が、憲法21条表現の自由に反すると主張し争った事件。

判旨:

  1. 被告人らによる政治的意見を記載したビラの配布は表現の自由の行使といえる。
  2. しかし憲法21条1項は公共の福祉による合理的な制限を是認する。
  3. そもそも出入りが許されない場所に、管理権者の意志に反して立ち入ることは、管理権者の管理権を侵害するのみならず、私的生活を営む者の私生活の平穏を侵害する。したがって被告人らを罪に問うことは憲法21条1項に反しない。

憲法21条(表現の自由)
「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。」

堀越事件(公務員の政治活動)

結論:特定の政党ポスターを公務員が配布したが、管理職でもなければ職務との関係もなく、この行為は処罰に値しないとした。

概要:平24.12.7
公務員に政治的行為をする事由が認められるかどうか、またこれを処罰しようとした規則が憲法21条表現の自由等に違反しないかどうかが争われた。

判旨:

  1. 公務員に禁止される政治的行為とは、「公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが観念的なものにとどまらず、現実的に起こり得るものとして実質的に認められるもの」を指す。
  2. その判断においては、当該公務員の地位や職務の内容、権限等、行為の性質、態様、目的など諸般の事情を総合的に勘案する。
  3. 選挙時に特定の政党のポスターを配布した当該公務員は、社会保険事務所に年金審査官として勤務していた。しかし管理職的地位にないことや職務との関係もないことなどから、罰則に値しないと評価された。

小売市場事件(営業の自由)

結論:小売市場を許可制としていることは憲法22条営業の自由に反しておらず合憲とした。

概要:昭47.11.22
小売商業調整特別措置法が、大阪府を中心とする区域内で、一定の小売市場について許可制としていたところ、無許可で営業した被告人らが起訴された事案。

判旨:

  1. 憲法22条1項(↓参照)は、営業の自由を保障している。
  2. しかし積極的な社会経済政策の実施も国の責務であるため、社会経済の調和的発展のためにする規制は必要かつ合理的な範囲で許される。
  3. そのため裁判所は立法府の裁量を尊重し、立法府が裁量権の範囲を逸脱、法的規制が「著しく不合理であることが明白」である場合に限って違憲と言える。
  4. そして本事案の規制に合理性は認められ、その手段・態様においても著しく不合理であることが明白であるとは認められない。よって合憲である。

憲法22条
「何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。」

徳島市公安条例事件(明確性の原理)

結論:条例の規定が抽象的であったが、違反する行為かどうかの判断につき、明確性を欠いているとは言えず憲法31条に違反しないとした。

概要:昭50.9.10
反戦デモがジグザグ進行をしたため、これを条例違反として取り締まった。しかし規定内容が抽象的であるため刑罰法規として無効ではないかと争われた。

判旨:

  1. 徳島市公安条例は、公共の安寧保持のための遵守事項のひとつとして「交通秩序を維持すること」を挙げている。
  2. この規定は抽象的で、立法措置として妥当性を欠く。
  3. しかし、刑罰法規が不明確さを理由に無効とされるのは「通常の判断能力を有する一般人に対して禁止される行為とそうでない行為の識別するための基準」を示さないからであり、「交通秩序の維持」という文言から何も読み取れないわけではない。
  4. 交通秩序の阻害をもたらす行為、例えばジグザグ進行をすべきでないことは明らか。よって、本件規定は明確性を欠き憲法31条(↓参照)に違反するものとはいえない。

そもそも条例が法令に違反するかどうかは、文言からだけでは言うべきではなく、その趣旨、目的・内容・効果の比較が大事である。

例えば、ある事項について規律をする法令がない場合、
その事項を放置する趣旨であれば、規律を設ける条例は法令に違反する。
直接的に条例に抵触する法令はなくても法令違反となり得る。

逆に、一見して法令と条例が併存するし矛盾するように見えるケースであっても、

  1. 両者の目的が別で、条例が法令の目的を邪魔立てしないケース
  2. 両者の目的が同一でも、国の法令が全国一律の規制をする趣旨ではなく、地域による違いを容認する趣旨であるケース

という場合なら、法令と条例は矛盾抵触しない。

憲法31条
「何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。」

川崎民商事件(令状主義・黙秘権)

結論:行政上の手続である旧所得税法上の当該検査は、令状なく強制的に実施しても、憲法35条(令状主義)に違反しないとした。刑事責任追及が目的でないため憲法38条(黙秘権)にも反しない

概要:昭47.11.22
旧所得税法は、所得税に関する調査のために、質問や帳簿その他の物件を検査できると規定。しかも検査を拒む・質問に答えない、場合には懲役刑を科すことまで規定されていた。刑罰を伴うにもかかわらず帳簿の検査に令状を伴わないのは憲法35条の令状主義に反すると主張。さらに、質問に答えないことが刑罰に触れるのであれば憲法38条の黙秘権の趣旨が没却されるのではないかということも争点になった。

判旨:

  1. 所得税法は、所得税の公平な賦課のための資料収集を目的とし、刑事責任の追及を目的としていない。
  2. 従わなかった場合の刑罰は軽微ではないが、強制の度合いは、民商の会員の自由な意思を著しく拘束するものではない。
  3. さらに、税務署には公平確実な所得税の徴税という公益目的があり、実効性のある税務調査が必要。
  4. よって、この程度の矯正は不合理ではない。

憲法35条(令状主義)は、もともと、刑事手続における強制に関する問題(しかし判例は、憲法35条の、行政手続への類推適用を否定はしていない。)。憲法35条に関しては以下でも解説している。

憲法35条の趣旨や行政手続への適用、その判断基準などを解説
憲法35条では、刑事手続に関して、住居への侵入や捜索押収等に関して令状を要する規定が置かれている。しかし行政手続においても同条の適用を受けるのかという問題がある。このページではこの問題に関して言及する。

行政手続における強制が憲法35条の保障の枠外にあるとまでは言えないが、税務調査は重要で、令状主義がとられていないからといってこれに違反するとは言えない。

黙秘権について定めた憲法38条も刑事手続上の問題である。
38条による保障は、純然たる刑事手続き以外にも、実質的に刑事責任追及のためになる資料収集の場合にも及ぶが、所得税法の手続きは刑事責任追及のためではなく、公平な徴税が目的とされる。

なおこの判例には批判もある。

在外邦人選挙権制限違憲事件(選挙権)

結論:在外日本人の選挙権を制限する「やむを得ない事由」はなく、その制限は違憲とした。

概要:平17.9.14
外国に居住する日本人の選挙権の制限が違憲であるかどうかを争った事件。
昭和59年には内閣が在外投票を可能とする法案を提出していたものの廃案。平成10年にも在外選挙人名簿を創設したが在外日本人の選挙権は比例代表選挙に限定されていた。
原告らは、こうした措置が、公務員の選定を国民固有の権利とした憲法15条1項等に違反するとして、在外日本人にも選挙区選挙における選挙権があることの確認と国家賠償請求をした。

判旨:

  1. 昭和59年には法案を出しており、措置を取ることが不可能なわけではなかった。それにもかかわらず国会はこの問題を10年も放置していた。
  2. そして選挙権を制限すべき「やむを得ない事由」なるものも存在しない。
  3. したがって、当時の公職選挙法は憲法15条1項等に違反する。

この判例は、国民の選挙権の制限は「選挙の公正を確保する」上で「やむを得ない事由」がある場合に限って許容されるという認識に立ちながら、在外日本人の選挙権の問題について、そうした「やむを得ない事由」はないと判断した。国家賠償も認められている。

全農林警職法事件(労働基本権)

結論:公務員の労働基本権に対し制限を加えても許される場合がある。争議行為のあおりをした者を有罪とした。

概要:昭48.4.25
内閣による警職法改正案が、警察官による労働者の団体行動の抑圧に繋がるとして全国的な反対運動が起こった。全農林の幹部である被告人らは、組合員に勤務時間内の指示をし、国家公務員法が禁止する「争議行為のあおり行為」にあたるとして起訴された事件。

判旨:

  1. 憲法28条(↓参照)の労働基本権は公務員にも保障されるが、公務員に対する「国民全体の共同利益による制約」は免れない。
  2. そして、公務員が争議行為を行えば「国民全体の共同利益」を損なう。
  3. さらに、公務員の勤務条件は国会の法律・予算により決まるのであり、その使用者とも言える政府には公務員の勤務条件の決定権限がない。
  4. よって政府に対して争議行為をするのは的外れである。
  5. また一般企業で考えたとき、労働者が過大な要求をすることは企業経営を傾け労働者側にマイナスの影響として返ってくる。これに対し、公務員にはこうした市場原理による制約は働かない。
    しかも公務員に争議権を与えなくても、人事院等、制度上整備された代償措置があり、身分保障がなされている。
  6. 私企業でも政治ストは許されておらず、元々禁止されている公務員の争議行為をあおることは許されない。よって、被告人らは有罪である。
  7. このように、公務員の特殊性と職務の公共性にかんがみるとき、これを根拠として公務員の労働基本権に対し必要やむを得ない限度の制限を加えることには十分合理的な理由がある。

憲法28条
「勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。」

裁判員制度の合憲性

結論:憲法は裁判員制度を許容。裁判員の出した結論により、裁判官の結論と異なった結果になっても違憲ではない

概要:平23.11.16
裁判員裁判が憲法に違反しないかが争われた事例。

判旨:

  1. 憲法は一般的に国民の司法参加を許容している。
  2. 裁判官が自らの意見と異なる結論に従わなければならないとしても、それは憲法に適合する法律に拘束される結果であるため違憲とはならない。また、裁判官と裁判員によって構成された裁判体が特別裁判所に当たらないことも明らか。