【民法-判例まとめ】チェックすべき重要判例10選!かんたん解説

時効完成後の債務の承認(昭41.4.20)

< 事例 >

消滅時効の完成後、これを知らずに債務の承認をしてしまった。援用はもうできないか?

< 結論 >

援用はできない。

< 判旨 >

債務者が時効の完成を知らないことも通常考え得る。
債務者が商人であっても、承認をしたからといって時効の完成を知ってしたものであると推定することは許されない

しかしながら、
債務の承認をした以上、時効完成の事実を知らなかったという事情があっても、以後その債務について消滅時効の援用をすることは許されない

なぜなら、
相手方においても、債務者はもはや援用をしないと考え、その後においては債務者に時効の援用を認めないものと解するのが信義則に照らし相当だから

遺産分割と登記(昭46.1.26)

< 事例 >

不動産をABCが共同で相続。遺産分割協議によりABが取得することになったが、Cの債権者Xが、遺産分割前のCの持分につき差押えをして、その旨の登記をした。
ABは登記なくして自己の権利を主張できる?

< 結論 >

相続分と異なる範囲については登記なくして主張できない。

< 判旨 >

遺産分割は相続開始時に遡って効力を生ずるが、第三者との関係においては、相続人が相続によりいったん取得した権利につき分割時に新たな変更を生ずるのと実質同じである

そこで共有持分の遺産分割による得喪変更については民法177条が適用され、分割により相続分と異なる権利を取得した相続人は、登記がなければ第三者に対抗できない

抵当権に基づく妨害排除請求(平17.3.10)

< 事例 >

Xは、Aに対する債権を担保するため、Aの建物に抵当権を設定し、勝手に賃貸しない旨合意した。
しかしAは勝手にBに賃貸し引渡した。しかもその賃料額は適正な額を大幅に下回るものであった。
Xは、Bによる占有により抵当権が侵害されたことを理由として、抵当権に基づく妨害排除請求ができるのか?

< 結論 >

抵当権者でも妨害排除請求をし得る。

< 判旨 >

占有権限を持つ者でも、抵当権設定登記後に占有権限の設定を受けたのであり、
その設定に抵当権の実行としての競売手続を妨害する目的が認められ
その占有により抵当不動産の交換価値の実現が妨げられて抵当権者の優先弁済権の行使が困難となるような状態があるとき、
抵当権者は、占有者に対し抵当権に基づく妨害排除請求をすることができる。

特定物債権と詐害行為取消権(昭36.7.19)

< 事例 >

Aは、Bの建物を買い受け代金の一部を支払った。
残金は建物に設定されていた抵当権設定登記の抹消と引換えに支払うと約束。
しかしBは建物をCに譲渡。所有権移転登記もしてしまった。
そこでAはBC間の譲渡が詐害行為に当たると主張し、BC間の譲渡の取消しと、当該建物の所有権移転登記を請求した。
特定物引渡請求権を保全するために詐害行為取消権を行使することはできる?

< 結論 >

詐害行為取消権を行使し得る。

< 判旨 >

詐害行為取消権は、総債権者の共同担保の保全を目的とする制度で、原則は金銭債権を担保するためにある。
しかし特定物引渡請求権といっても、目的物を債務者が処分することにより無資力になる場合、債権者は当該処分行為を詐害行為として取り消すことができると解するのが相当。

なぜなら、
かかる債権も、究極において損害賠償債権に変じ得るのであり、債務者の一般財産により担保されなければならないことは、金銭債権と同様だから。

転用物訴権(平7.9.19)

< 事例 >

Aは自己の所有する建物をBに賃貸。この契約では、Bは権利金を支払わないことの代償として本件建物に対してする修繕その他の工事はすべてBが負担することとする特約をした。
その後BはCに建物の修繕工事を請け負わせ工事も完了、建物はBに引き渡したが、Bは所在不明となった。
Cは不当利得を根拠に、Aに代金相当額の支払を求めることができる?

< 結論 >

Cは、Aに支払いを求めることはできない。

< 判旨 >

Cが、建物賃借人Bとの間の請負契約に基づき修繕工事をしたところ、Bが無資力になったため、CのBに対する債権が無価値になった場合、
建物の所有者Aが法律上の原因なくして修繕工事に要した財産および労務の提供に相当する利益を受けたということができるのは、
AとBとの間の賃貸借契約を全体としてみて、Aが対価関係なしに右利益を受けた時に限られるものと解するのが相当。

AがBとの契約において何らかの形で右利益に相当する負担をしたときは、Aの受けた右利益は法律上の原因に基づくものというべきであり、
CがAに対して右利益につき不当利得としてその返還を請求することができるとするのは、Aに二重の負担を強いる結果となるからである。

 → Aは賃料債権を受け取っておらず、すでに負担を受けている状態と言える。
修繕による利益は契約上帰ってきた利益であり、法律上の原因がないわけではない。そのためこの利益が、受けた負担との対価関係になっている。
 ⇔ 逆に、Aが賃料を受け取っており、一方的にBが修繕費用を負担していたのであれば、Aは修繕による利益を受けることになる。
その利益については対価関係もなく、法律上の原因なくして受けた利益と言える。よってこの場合などには不当利得返還請求を受ける。

複数の共同相続人を代理して行う遺産分割協議(昭49.7.22)

< 事例 >

Cが死亡し相続が開始。相続人の一員であるABは未成年者。
ABの親権者であるXは、その他相続人と協議し、Cの遺産を全部Yに取得させる旨の遺産分割が成立した。
親権者が共同相続人である複数の子を代理して行った遺産分割協議は、利益相反行為となる?

< 結論 >

利益相反行為となる。

< 判旨 >

利益相反行為とは
行為の客観的性質上数人の子ら相互間に利害の対立を生ずるおそれのあるものを指すのであって、その行為の結果現実に利害の対立を生ずるか否かは問わない

遺産分割の協議は、
その行為の客観的性質上相続人間相互に利害の対立を生ずるおそれのある行為と認められる。

よって遺産分割協議は利益相反行為に該当する。

 → 数人まとめて親権者が代理人になるのではなく、子1人につき代理人となり、他の子には特別代理人を選任する必要があった。
1人の親権者が数人の未成年者の法定代理人として代理行為をしたとき、遺産分割協議は、被代理人全員(AB)による追認がないかぎり無効となる。
[ad]

瑕疵担保責任に基づく損害賠償請求(平14.9.24)

< 事例 >

Aは、Bより注文を受けて建物を建築し引渡した。
しかし建物には多数の欠陥があり、安全性及び耐久性に重大な影響を及ぼす欠陥があった。
そこでBは、Aに対し、建物には重大な瑕疵があって建て替えるほかはないとして、請負人の瑕疵担保責任等に基づき、損害賠償を請求した。
民法635条には「仕事の目的物の瑕疵により目的を達することができないときでも、建物や土地の工作物については解除ができない」とあるが、建て替え費用に要する損害賠償は請求できるのか?

< 結論 >

損害賠償を請求できる。

< 判旨 >

請負人が建築した建物に重大な瑕疵があって建て替える他はない場合、
建物を収去することは社会経済的に大きな損失をもたらすものではなく
また、その際に要する費用を請負人に負担させることは、契約の履行責任に応じた損害賠償責任を負担させるものであって、請負人にとって過酷であるとも言えない。

よって、注文者は請負人に、建て替え費用相当額を損害としてその賠償を請求することができる。

差押えされた債権を受働債権とする相殺(昭45.6.24)

< 事例 >

Aは、B銀行に対して定期預金債権を有している。
これに対しB銀行は、Aに対し貸金債権を有している。
Aは税金を滞納したため、国は、AがB銀行に有する定期預金債権を差し押さえた。
そこでB銀行は、Aに対する貸金債権とAのB銀行に対する債権を相殺する旨の意思表示をした。
すでに差し押さえられている債権を受働債権とする相殺は許されるのか?

< 結論 >

相殺できる。

< 判旨 >

第三債務者(B銀行)は、その債権(貸金債権)が差押後に取得されたものでない限り
自働債権および受働債権の弁済期の前後を問わず
相殺適状に達しさえすれば、差押後においても、これを自働債権として相殺をなしうる。

 → 先に取得さえしていれば、差押後に弁済期を迎え、相殺適状になっても相殺可。

使用者の被用者に対する求償の範囲(昭51.7.8)

< 事例 >

X社の従業員Yが運転する車が、A所有の貨物自動車に追突した。
XはAの修理費を賠償し、この修理費を民法715条3項に基づいてYに請求した。
使用者の被用者に対する求償は、どの範囲で認められる?

< 結論 >

信義則上相当と認められる範囲で認められる。

< 判旨 >

被用者の加害行為により、使用者が直接損害を被り、または使用者としての損害賠償責任を負担した場合、
使用者は、その事業の内容や被用者の業務内容、労働条件や加害行為の態様などその他諸般の事情に照らし
損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる範囲において、被用者に対し右損害の賠償または求償の請求をすることができる。

有責配偶者からの離婚請求(昭62.9.2)

< 事例 >

XYは夫婦である。
XはAと不倫、その後XはAと同棲するようになった。
Xは、別居から2年後に離婚請求をしたが、有責配偶者からの離婚請求であるとして認められなかった。
「婚姻を継続し難い重大な事由」につき有責配偶者から離婚請求をすることは認められない?

< 結論 >

特段の事情がなければ、有責配偶者からでも離婚請求は認められる。

< 判旨 >

民法770条(裁判上の離婚)1項1号ないし4号において主な離婚原因を具体的に示すとともに、5号において「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」との抽象的な事由を掲げたことは、離婚原因を相対化したものと言える。

有責配偶者からされた離婚請求であっても、「別居が年齢や同居期間との対比において相当の長期間に及び、その間に未成熟の子が存在しない場合」には、
相手配偶者が経済的に極めて苛酷な状態に置かれるなど、著しく社会正義に反するといえるような特段の事情がない限り
当該請求は有責配偶者からの請求であるとの一事をもって許されないとすることはできない。

これは、離婚による相手方の負担等は殊更に重視されるべきものではなく、この不利益は本来財産分与や慰謝料により解決すべきものであるからである。