「法律を読む技術・学ぶ技術」を購入、読破しました!
色んなレビュー・口コミ等で書かれているように難易度はかなり低めですが、
本書の特徴は易しく解説された民法や憲法などを学ぶことではなく、法律そのものや法律の学び方を知れるというところにあります。
そのためすでに法律の勉強をしたことがある方であっても、意味のある内容となっているでしょう。
初学者はもちろん、経験者でも独学で進めている人にも特におすすめの本です。
以下で本書の基本的な情報、概要、学べたことなどをまとめていきます。
本書の情報
タイトル | 元法制局キャリアが教える法律を読む技術・学ぶ技術[改訂第3版] |
値段 | 定価(本体1,800円+税) |
サイズ | A5 |
ページ数 | 328ページ。特別分厚くもないがしっかりめのボリューム。 |
作者情報 | 吉田 利宏 1963年神戸市生まれ。早稲田大学法学部卒業後、衆議院法制局に入局。15年にわたり、法律案や修正案の作成に携わる。 |
出版社 | ダイヤモンド社 |
関連書籍 | 同作者の作品として「法律を読むセンスの磨き方・伸ばし方」「法学のお作法」「つかむ・つかえる行政法」「新法令用語の常識」などがある。いずれも評価は高め。 |
第何版か | 改訂第3版 第6刷発行 |
難易度 | 易しい |
読破の時間 | 3時間 |
おすすめな人 | 初学者、独学で勉強を進めてきた人。 |
どんな本か(概要)
法律そのものに対する解説や、勉強法・理解の仕方を易しく説明する内容になっていました。
法改正への対応、刑法に関する学習法も加わってリニューアルされています。
複雑な内容は一切含まれておらず、法律初学者やビジネスマンなど一般の方でも問題なく読めるものになっていると感じました。
また、資格試験を目指してすでに勉強している方であっても、特に独学者にはおすすめできます。
テキストに載らない超基礎、というかその前提にある法学の知識が掲載されていますので、独学者の法知識を補完する形で学習することができると思います。
公式でも、以下のように謳っています。
他の入門書では理解できなかった「法律のそもそも」がスラスラわかり、法律の勉強が10倍効率アップ!法学所でも試験対策本でもない。法律を理解するスピード、学習効率を向上させるための本。
この本で個人的に学べたことをいくつか
この本は「知識編」「図解編」「法律編」の3部構成となっており、
第1部の「知識編」では法律を読むための知識が、
第2部の「図解編」では法律関係を整理して分析するスキルを、
第3部の「法律編」では憲法や民法、刑法等の基本法についてごく簡単に説明しています。
完全な初学者にとっては第一歩として学べることも多いかと思いますが、すでに勉強をしている方はところどころ読み飛ばしながら進めることになり、スラスラ読んでいけるでしょう。
特に法律編のところはテキスト等に載っている内容と被るものとなるため、経験者はテキストで分かりにくかったところをかいつまんで読んでいくといいでしょう。
以下では、独学者である私がこの本から個人的に学べたと感じたところを紹介していきます。
法律の構造―本則と附則
「知識編」は第1章~第5章の範囲です。
法律の基本ルールや法律学習において基礎知識として必要な用語説明、その読み方などが載っています。また法律の分類、例えば憲法と法律、政令、条例、省令(規則)のそれぞれの関係性なども解説されています。
その中でも個人的に学べたなと思ったのは、法律を構成する「本則」と「附則」に関することでした。
行政手続法を例に、本則がどの部分で、経過措置などを定めた附則がどの部分にあたるのかを説明しています。
さらに本則が細分化され、
その法律全体に関するルール(目的や定義)を定めた「総則」、
中心部分となる規定、
そして「雑則」「補足」「罰則」がそれぞれどのようなものなのかを分かりやすく書かれています。
また、改正法・改正法附則についてもそれ自体を学ぶ機会がなかったため、ここに言及されていたのも良かったです。
判例文の構造
判例分の構造についても解説されていました。
裁判の結論部分を示す「主文」。
この主文を導いた「理由」。
そしてこれら「主文」や「理由」となる多数意見が「法定意見」として裁判所の意見になること。
「理由」の最後にある「少数意見」についても説明されています。
さらに「少数意見」には「反対意見」「補足意見(法定意見に賛成の立場で、さらにこれを補足する意見)」「意見(賛成の立場だが理由付けが異なる意見)」があることの説明などもされています。
他にも、一般的なテキストでは触れられる機会の少ない事項もカバーされています。
特徴的な図示の手法
第6章・第7章にあたる図解・読解編では個人的にあまり目新しい発見はありませんでしたが、
事実関係を図解した内容が特徴的でしたので印象に残っています。
独学で進めていると独特なやり方で図示をしていたりもしますが、この本を参考に慣れれば理解がしやすくなるのかなとも思いました。
言葉で説明すると分かりにくいですが、
矢印や半円、
そしてその半円内部に色を塗るかどうかで状況を識別していたり、
矢印の横に①や②などと記載して時系列を示していたりしていました。
法律編は超基礎
法律編では憲法・民法・刑法・行政法の説明がされており、かなり基礎的でしたので特にレベルアップできたことはありませんでした。
ただ、他のテキストで分かりにくい部分について、こちらの噛み砕いた表現で読むことで理解が少し進みそうだなと感じました。
例えば公共の福祉に関する3つの学説。「一元的外在制約説」と「内在・外材二元的制約説」、「一元的内在制約説」に関する説明や
「比較衡量論」「二重の基準論」に関すること。
民法においては「登記の公信力」や「動産質と不動産質の違い」など。
刑法で登場する「結果無価値」と「行為無価値」などは、再確認できて良かったと感じています。
コラムの内容が実用的だった
本書にはところどころコラムが挟まれていますが、勉強に際して実用的な内容が掲載されていました。
ごく簡単に挙げると以下の内容です。
- 電子六法の使い方:
無料で使える総務省法令データ提供システム。 - 国立国会図書館サーチ:
法令の解釈や解説を読める。今度の法改正の趣旨や問題点を調べたい時、関連する判例の解説を見たい時などに活用できる。 - 内閣法制局のWebサイト:
法案資料を集められる。未来の法となる、法案について調べられる。
その他の口コミ
本書を購入するにあたって、ネットで口コミ・レビューなども調べました。
Amazonを見たところ、☆約4.5とかなり良い印象で、評価数も100を超えていましたので安心して買うことができました。
ある人は、「法律を学ぶための手引き書」のような印象とレビューしていました。
民法的が苦手だったため、もう一度「法律の読み方」から勉強しようと思い本書を購入。この本に出会えて良かったと思える内容でした。やはり法律を作る側の人が書いているだけあって分かりやすいです。
別の人は、文章がやわらかく身近に感じることができたとレビューしています。
タイトルを見て、難しい内容なのかと思っていましたが、ページをめくると随所に出てくる挿絵が面白い。文章も硬くなく、やわらかく、サクサクと読めて2時間くらいで読めました。法律とはこういうものだと理解でき、「法律」という言葉が身近に感じられるようになりました。
一方で、やや物足りなさを感じたとレビューしている人もいました。
本書は法律初学者のための本です。そのため、条文を本当に読んだことがないとかそういうレベルの人向けです。条文を読む上で重要な言葉の言い回しの解説が少ないと感じました。法律の勉強経験がある人からすれば、用語や言い回しで例えば「例によって」と「準用する」の違いや「務めるものとする」「配慮しなければならない」「尊重しなければならない」「努力しなければならない」などこういういった微妙なニュアンスの違いが重要になりますが、このあたりの解説は載っていません。初学者のための方向性を示すだけの本だと思います。
やはり、法律を本格的に学ぶ目的で読む本ではなく、その前段階として読む本だと思います。
ただしすでに勉強をしている人であっても楽しく読める内容ですので、資格合格に向けてというより法律を楽しむために読んでみるといいでしょう。