権利能力なき社団まとめ(社団の具体例・不動産登記・訴訟の問題)


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権利能力なき社団とは大学のサークルや町内会など、法人格のない団体を言う。
実体としては社団法人とあまり変わりないが、法人格がなく、権利義務の主体となることができないことから、その団体が持つ不動産の登記や、訴訟における諸問題が発生する。

ここでは権利能力なき社団とは何かを最初に説明し、当該社団に関するルールを解説していく。

権利能力なき社団とは

権利能力なき社団とは、実質的には社団法人と同様の実体を持つものの、法人格がない団体のことを指す。法人格がないという大きな違いがあるものの、実体が社団法人と変わらないことから、できるだけ社団法人における規定を類推適用すべきと考えられている(通説)。

社団法人とは、法人のうち特に「人の集団」であることに着目したときの分類。これに対し財産の集団を財団法人という。他にも、法人は、目的に応じて営利法人や非営利法人などに分けられることもある。

権利能力なき社団の例

権利能力なき社団の具体例としては、大学のサークルや町内会などがよく挙げられる。他にも例えば、以下のようなものも含まれる。

  • 自治会
  • 学校のPTA
  • 入会集団
  • 政党要件を満たしていない政治団体
  • マンションの管理組合
  • 学会
  • 設立登記前の会社

法人格取得という形式的要件を満たす必要がないため、広く様々な団体がこの権利能力なき社団として存在する。

ただし厳密には次項の要件を満たさなければならないため、狭義の権利能力なき社団を概念した場合、それほど多くの団体がこれに含まれることにはならない。

権利能力なき社団となるための要件

法人格を有していない団体は権利能力なき社団ということになるが、社団法人と同等、もしくはこれに近い扱いを受けるためには、以下の要件を備えていなければならない。

  1. 団体としての組織を備えていること
  2. 意思決定に多数決の原則が行われていること
  3. 構成員が変更しても団体が存続すること
  4. 代表の方法、総会の運営、財産管理、その他団体として主要な点が確定していること

権利能力なき社団と任意団体の違い

冒頭で定義した権利能力なき社団は「広義の権利能力なき社団」と言い換えることができる。
こちらでは前項の4つの要件を満たしているか否かが問われない。
そのため意思決定の方法が曖昧であったり、運営や代表の方法なども定まっていなかったりするサークル等もここに含まれる。

 

一方で前項の要件を満たす権利能力なき社団は「狭義の権利能力なき社団」と言い換えられる。
資格試験など、民法の問題として出題される場合の権利能力なき社団では通常狭義の意味で考える。

 

なお、要件を満たさない前者については一般に「任意団体」と呼ばれることもある。
つまり、法人や権利能力なき社団以外の団体が任意団体ということになる。

特に金融機関において口座を開設するような場面ではこの区分が重要視され、預金者となれるかどうかが変わってくる。そこで金融機関において、当該団体がどのような活動実態を有しているのか、また団体の規約の内容なども確認される。

例えば、同じ趣味を持つ者が集まって構成される同好会や、場合によってはサークルや町内会、同窓会なども該当し得る。

権利能力なき社団と人格なき社団の違い

次に、権利能力なき社団と「人格なき社団」の違いであるが、これは同じものとして扱われることも多く、あまり区別して考える必要はない。

ただし租税に関することなど、場面に応じて区別されることもあるため、特定の業界における実務面では厳密に分けて考えなくてはならないこともある。

財産は構成員の総有

権利能力なき社団には法人格がない。そのため当該社団自体に権利義務を帰属させることができない。

もっとも判例では、実質的に法人とあまり変わらない実体があることからも、法人の財産関係に近い共同所有の形態を想定すべきと考えられている。

その結果、「権利義務は構成員に総有的に帰属する」と解されている。

 

総有になるということは、構成員に持分がないということになり、株式会社における社員(株主)のように財産的な見返りを求めることはできない。

一方で、権利能力なき社団の債務について、各構成員が責任を負わされることもないという特徴を持つ。

総有とは、共同所有者に潜在的な持分すら認めず、ただ使用収益権のみが認められるような共同所有の形態をいう。

社団による不動産登記

次に当該社団による不動産登記の請求に関してみていく。

権利能力なき社団名義の不動産登記はできない

不動産登記法上、権利能力なき社団の名義で登記をすることは認められない

例えば同窓会が同窓会館なるものを建築したとする。この不動産について登記をしようとしても「○○同窓会」との名義では登記ができない。

社団代表者の肩書を付した名義も不可

権利能力なき社団そのものを名義に不動産登記をすることはできない上、さらに、
「権利能力なき社団の肩書を付した代表者名義」での登記も認められていない

例えば「○○同窓会代表△△」などといったものは不可とされる。

 

これには、虚偽の登記誘発を防止するという目的がある。

権利能力なき社団が不動産登記をする方法

とにかく、実質的に当該社団が権利義務の帰属主体となってしまうような形での登記は認められない。そこで、権利能力なき社団不動産登記をするには、

  1. 代表者の個人名義
  2. 全員の共有名義等

によらなければならない。

※地縁団体の法人認可制度
地域住民が自主的に組織し運営を行う地縁団体である町内会や自治会については、地方自治法の規定に基づき、[市区町村に対する認可申請をすることで法人化できる制度]が設けられている。これにより認可地縁団体として権利義務の主体になることができる。
この制度は、集会所等について当該団体名義での不動産登記ができないことから様々な問題が生じていたという背景を受けて設けられている。
地縁団体に限った話ではないが、不動産の登記名義を代表者又は役員の共有名義としなければならないことにより、名義人死亡後の相続、当該名義人の債権者による差押え等の問題が生じやすい。

社団の名で訴訟はできる

法人格がないことにより不動産登記の名義になれないなど、諸問題が発生するが、
訴訟においては権利能力なき当該社団の名で対応することができる。

このことは民事訴訟法第29条に規定されている。

第29条
「法人でない社団又は財団で代表者又は管理人の定めがあるものは、その名において訴え、又は訴えられることができる。」

つまり、権利能力なき社団でも訴訟の当事者になることはできる

ただし条文にもあるように、代表者又は管理者の定めが必要とされる。

そこで、前述の4要件を満たす社団であれば訴訟において社団名義で訴えることも、訴えられることもできるようになる。

 

なお、ここでいう「代表者又は管理人」とは単なる肩書きのことではない。

財産の処分について全構成員から委任を受けている者のことを言い、ただリーダーと呼べるものが存在していれば良いわけではない。

逆に、代表者の定めがあるのであれば、代表者が欠員となっている場合でも仮の者を選任することで訴訟当事者となることは可能とされる。

なお、権利能力に関してはこちらで詳しく解説。



 練習問題

難易度「易」の例題3問で理解度チェック!

1.権利能力なき社団の資産は、その社団の構成員全員に総有的に帰属する。
2.権利能力なき社団自身、権利義務の主体となることはないが、不動産登記の請求権については認められる。
3.権利能力なき社団は法人格を有する。
難易度「易」_全4問難易度「並」_全6問
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