【入門-代理】無権代理や表見代理、権限の濫用などを解説

代理権がないのにした代理行為について

表見代理の成立要件

代理権のない者と売買契約をした。

この場合、相手方はどうすれば本人に代金請求ができるのか。

~表見代理の成立~
相手方の善意無過失 + 本人の帰責事由

→ 無権代理人が印鑑証明書を持ち、これを確認していたために相手方が契約を締結した場合、相手方に善意無過失が認められる余地がある。
さらに、その印鑑証明書を本人が交付していたのであれば本人の帰責性が認められ、相手方は本人に請求できる。

→ 相手方が善意無過失なら本人に帰属するため、本人としては相手方の悪意または過失を立証しなければならない。

※表見代理のケースでは、代理権の外見を信頼した者の保護が目的であり、転得者への保護はない。

代理権の消滅事由

  • 本人の死亡
  • 代理人の死亡
  • 破産手続開始
  • 後見開始審判
  • 委任の終了

※本人に破産手続開始や後見開始の審判があっても代理権は消滅しない。ただし委任による代理(任意代理)の場合、本人の破産手続き開始は委任契約を終了させるため代理権も消える。

不確定無効になるケース(本人の追認)

代理権がなくても本人が追認すれば(遡及的に)有効になる。

その可能性がある以上、相手方は「催告権」または「取消権」を行使できる。

本人が催告を無視すると追認は拒絶されたとみなされる。

※過失があっても、善意でさえあれば取消権は行使できる

※追認または拒絶をする場合、本人は相手方にしなければならない
⇔代理人に意思表示するのでは無意味

無権代理人の責任

~無権代理人が免責されるには~
本人の追認 or 代理権の証明
または相手方の悪意有過失を立証が必要

できなければ「履行」 or 「損害賠償」
→損害賠償の範囲は履行利益
→未成年なら悪意でも無権代理人に責任がいく

権限の定めのない代理権

代理権の範囲は「保存・利用・改良」(=管理行為)に限る。

家の雨漏りを直したり(保存)、
現金を預金したり(利用)、
壁を塗り替えたり(改良)
といったことが管理行為にあたる。

⇔ 処分はできず、売却・担保設定などはできない。

代理権の濫用

代理人が真っ当な代理行為をしているように見せて、実は代金だけ受け取って逃げようとしているようなケース。これは心裡留保が類推適用される。

→ 表示主義に従い有効になるが、相手方が悪意または有過失なら代理行為を無効とみなす(相手方の負担)。

→ 相手方が善意無過失なら、信頼できない代理人を選任した本人に責任を取らせる(本人の負担)。

なお、代理権の濫用についても民法改正の影響を受けます。詳しくはこちらの記事で解説しています。

【民法改正】代理権の濫用で無権代理人の責任が生じる?変更点を解説
代理権の濫用に関する民法改正の内容を解説していきます。代理人がその権利を濫用し取引をした場合において、その責任はどうなるのか?という問題です。

法定代理人と復代理人の比較

法定代理であれば、通常本人に帰責性はない。しかし表見代理が成立する余地もある。

復代理人は代理人が選任する

⇔ 法定代理人は復代理人を自由に選任できる。ただし無過失責任。

効果は直接本人に帰属する。復代理人が金銭等を受領した場合には代理人か本人のどちらかに引渡せば良い。

代理人の代理権が消えれば復代理人も消える。

復代理人の責任についても民法改正の影響を受けています。詳細はこちらの記事からご覧ください。

【民法105条 改正】復代理人を選任したときの責任をわかりやすく解説
民法改正について、ここでは「復代理に関する責任問題」に言及しています。現行民法105条は削除され、任意代理人が復代理人を選任したときの責任範囲が広がるように変わっています。

無権代理と相続問題

ケース1:本人を無権代理人が共同相続

Aの相続人にBとCがいて、片方が勝手にAの代理として土地の購入をした。相続後Bが追認拒絶。

相手方は無権代理の責任追及として①契約の履行②損害賠償ができるが、Bの拒否により履行は不可能(他人との共有を避ける)。

→ Cに対して損害賠償を請求するしかない。

※無権代理の追認は、相続人全員に不可分的に帰属

※Bが追認した場合、信義則上Cも追認とみなされ契約が履行される

ケース2:本人が無権代理人を相続

無権代理人を相続した本人は追認拒絶ができる。

→ 相手方は善意無過失なら損害賠償の請求のみできる。

ケース3:本人が追認を拒絶した後に死亡し、無権代理人が相続

無効に確定する。

→ 相手方は善意無過失なら損害賠償の請求および履行の請求ができる。

双方代理と自己契約について

双方代理・自己契約ともに原則は無効。しかし本人らに追認の余地もある。

債務の履行および本人があらかじめ許諾した行為については許される。

→ 債務の履行(代金の支払いと商品の引渡し)であれば代理人の恣意の働く余地がないから。

「使者」とは

使者は、本人が決定した事項をただ伝えるだけの存在。

意思能力は不要。

使者がお使い内容を間違えてもそれは「錯誤」の問題となる。つまり、使者の故意・過失は問われない。