行政法の重要判例まとめ!処分性や原告適格の有無比較も

以下では、行政法に関して重要とされる判例をかんたんに解説
行政書士試験や司法試験、公務員試験など、試験に出題されやすいポイントをまとめた。

伊方原発訴訟(最判平4.10.29)

伊方原発設置許可処分の取消訴訟につき、
行政庁による裁量事項の当不当の判断を争った

事例
四国電力株式会社は内閣総理大臣に対し、原子炉規制法23条に基づいて伊方発電所原子炉設置許可申請。内閣総理大臣は許可した。
これに対し愛媛県西宇和郡内に居住する住民らが、生命・身体・財産等が侵害される危険が生じるとして、当該原子炉の安全性審査に際して違法があることを理由に設置許可処分の取消しを求めた

判旨
この取消訴訟における審理は「原子力委員会・原子炉安全専門審査会の専門技術的な審議を基にした被告行政庁の判断に不合理な点があるかどうか」という観点から行われるべきである。
(行政庁の判断について、裁判所は簡単には当不当を判断できない)

ただ、現在の科学技術水準に照らし具体的審査基準に不合理な点があるなど看過し難い過誤欠落があり、被告行政庁の判断がこれに依拠してされたと認められる場合には、
行政庁の判断に不合理な点があるものとして、原子炉設置許可処分は違法と解すべきである。

当該事例は行政裁量の話であり、裁判所は裁量事項とされた領域について当・不当の判断に踏み込むのは妥当ではない。
ただし判断において上記のような背景がある場合には裁判所も行政庁の判断を違法と評価できる

児童扶養手当法施行令事件(最判平14.1.31)

施行令(政令)が「法の委任」に反していないか

事例
児童扶養手当法施行令では、「父から認知されたというだけで手当の支給対象外」とされていた。これが児童扶養手当法の委任の趣旨に反するかどうかが争われた。

判旨
児童扶養手当法は、父による現実の扶養を期待できない児童を対象にしており、それを父の存否だけで類型化する趣旨ではないことは明らか。
認知することで当然に生計維持者としての父が存在する状態にもならない。

そのため、施行令は法の委任の範囲を逸脱した違法な規定であり、無効。

施行令は、大元となる法律の内容をより具体的に実現化するための規定が設けられるが、その法の委任の範囲を超えてはならない。
当該事例は、法の委任の範囲を逸脱したため違法とされた。

医薬品ネット販売事件(最判平25.1.11)

施行規則(省令)が「法の委任」に反していないか

事例
薬事法施行規則にある「医薬品販売を対面で行わなければならない」などとする規定が、薬事法の委任の範囲を逸脱した違法なものではないかと争われた。

判旨
施行規則の当該規定により販売方法が広範に禁止されてしまう。
法案の可決段階でも、国会が郵便等販売を禁止すべきであるとの意思を有していたとは言い難く、施行規則の規定は、法の趣旨に適合するものとは言えない。

当該規定は、法の委任の範囲を逸脱した違法なものであり、無効。

宝塚市パチンコ条例事件(最判平14.7.9)

専ら行政権の主体として、
国民に行政上の義務履行を求める訴訟は法律上の争訟にあたるのか

事例
宝塚市の条例には「パチンコ店等の建築物を建築するためには市長の同意が必要」とあったが、Xはこの規定に違反してパチンコ店を建築しようとした。そこで市が条例に基づき中止命令をXに発したものの、Xはこれを無視して工事を続けたため、市はXに対しパチンコ店の建築工事の続行禁止を求める民事訴訟を提起した。

判旨
国または地方公共団体であっても「財産権の主体として自己の財産上の権利利益の保護救済を求める場合」には法律上の争訟にあたるといえる。

しかし「専ら行政権の主体として国民に対して行政上の義務履行を求める訴訟」は、法規の適用の適正ないし一般公益の保護を目的とするもので、自己の権利利益の保護救済を目的としておらず法律上の争訟と言えない。よって不適法。

法律上の争訟でない場合、当然には裁判所の審理対象とならず、法律に特別の規定がある場合に限り提起することが許される。
( ⇔ 特別の規定があれば提起可能

厚木基地騒音訴訟(最判平28.12.8)

差し止め訴訟の訴訟要件である
重大な損害を生ずるおそれ」はどのような場合に認められるのか

事例:海上自衛隊とアメリカ海軍が使う厚木基地の周辺住民が、自衛隊機による騒音で精神的身体的被害を受けていると主張。航空機運航の差し止めを求めた事件。

判旨
行政事件訴訟法37条の4第1項にある差止訴訟の訴訟要件には「重大な損害を生ずるおそれ」が必要とある

厚木基地近くの住民は、騒音による睡眠妨害などの精神的苦痛を反復継続的に受けておりその程度は軽視できず、今後も被害が蓄積されるおそれがある。このような事情の下では、運航の内容や性質を勘案すれば「重大な損害を生ずるおそれ」があると言える。よって差止めは認められる。

また「重大な損害を生ずるおそれ」は、執行停止による事後的な対応では救済が得られず、事前に差止めなければ救済を受けることが困難であることも必要である。

行政事件訴訟法
第37条の4「
差止めの訴えは、一定の処分又は裁決がされることにより重大な損害を生ずるおそれがある場合に限り、提起することができる。ただし、その損害を避けるため他に適当な方法があるときは、この限りでない。」

土地区画整理事業計画決定の処分性(最判平20.9.10)

土地区画整理事業の事業計画決定には処分性があるのか

事例
市が「土地区画整理事業の事業計画の決定」をし、その公告をした。これに対し施行地区内に土地を所有する住民らが、本件事業計画の決定の取消しを求めて出訴した事件。

判旨
「土地区画整理事業における事業計画決定」は、施行地区内の宅地所有者等の法的地位に変動をもたらし、実効的な権利救済を図る観点から見ても抗告訴訟を認めるのが合理的であり「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」に当たると評価できる。

「土地区画整理事業の事業計画決定」の処分性は認められる。

取消訴訟(抗告訴訟)の対象となる行為は、処分性を有していること、つまり「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」でなければならない。

課税処分と信義則の適用(最判昭62.10.30)

課税処分においても、
信義則の適用によって個別救済は受けられるのか

事例
Aは、承認なく自己名義で青色申告を行っていたが特に指摘されることもなく税務署には受理されてきた。しかしその後青色申告の効力は否定され、更正処分が執られた。これに対し信義則に違反するとしてAが取消訴訟を提起した事件。

判旨
租税法律主義では、納税者間の公平性が重要視される。そのため課税処分の平等公平という要請を犠牲にしてもなお、納税者の信頼を保護しなければ正義に反すると言えるような特別の事情がなければ信義則は適用されない。

原則として、租税関係については信義則を適用させて個別の救済は受けられない。

租税法律主義において、信義則の適用による個別の救済は不可能ではない。
課税処分を違法なものとして取り消すことができる場合もある。

給水拒否事件(最判平11.1.21)

水道事業者である町は、給水契約の拒否しても良いのか

事例
人口過密都市であり今後も人口増加が見込まれる町において、将来的に深刻な水不足が予測されていた。そこで急激な水道水の需要増加を抑えるため、やむを得ない措置として、特に需要量の大きいマンション分譲業者の給水契約を拒否した。

判旨
水道事業者である市町村は、原則として給水契約の申込みに応じる義務がある。しかし、現に給水が可能でも、将来において水不足になることことが確実に予見される場合、給水契約を拒むことも許され、このような事情は水道法15条1項の「正当の理由」と評価できる。

よって町のした当該契約拒否は違法ではない。

水道法
第15条「
水道事業者は、事業計画に定める給水区域内の需要者から給水契約の申込みを受けたときは、正当の理由がなければ、これを拒んではならない。」

水俣病関西訴訟(最判平16.10.15)

国が、水俣病防止に向けた規制権限を行使しなかったことは、
国賠法1条1項の適用上違法となるか

事例
国及び県が、水俣病の発生・損害拡大防止のための規制権限行使を怠ったことについて、国家賠償法1条1項に基づいて損害賠償責任を追及された事件。

判旨
・多数の水俣病患者が発生し死亡者も相当数に上っていたことの認識
・水俣病の原因物質の排出源が特定の工場であると高度の蓋然性をもって認識し得る状況にあった
これらの事情の下において必要な措置を執らなかったことは、規制権限を定めた水質二法の趣旨・目的や、その権限の性質等に照らし、著しく合理性を欠く。

よって、規制権限の不行使は不作為の違法であり、国家賠償法1条1項の適用上違法

国や公共団体の公権力の行使によって違法に損害を与えられたときのみならず、違法な不作為による損害を被った場合にも国賠法1条1項は適用される。

国家賠償法
第1条「
国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。」

高知落石事件(最判昭45.8.20)

国賠法2条1項における「営造物の設置・管理の瑕疵」の意味と、管理者の過失の必要性

事例
国道において落石や崩土があったため、道路管理者である国は標識を立てるなどの注意を促していた。しかしその後、落石によってトラックに乗車していた者が死亡し、遺族らが国に対して国家賠償法2条1項に基づいて損害賠償請求訴訟を提起した。

判旨
国賠法2条1項の「営造物の設置または管理の瑕疵」とは、営造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいい、無過失責任
予算的に困難な状況があったとしても、直ちに賠償責任を免れ得るものではない。

そのため、当該事例においても道路の管理に瑕疵があると認められた。

道路等が普通備えているはずの安全性がなければ、国や公共団体に過失がなくても、国賠法2条1項による賠償責任を負う。(予算的な問題があったとしても)

国家賠償法
第2条「
道路、河川その他の公の営造物の設置又は管理に瑕疵があつたために他人に損害を生じたときは、国又は公共団体は、これを賠償する責に任ずる。」

モービル石油事件(最判昭58.2.18)

国による道路工事の結果、危険物の移転を余儀なくされたことへの損失は、損失補償の対象となるか

事例
ガソリンスタンド事業者が消防法に基づき、市長の許可を得て、ガソリンタンクを地下に埋設していた。しかしその後国が付近に地下道を設置したため消防法に違反する状態となった。
そこでタンクの移設工事を余儀なくされた事業者は損失補償を求め、これに対し県収用委員会は損失補償を認める旨の裁決を行ったものの、国が当該裁決の取消しと損失補償金支払債務の不存在の確認を求めて提訴した。

判旨
道路法における補償の対象は「道路工事の施行による土地の形状の変更を直接の原因として生じた損失」に限られるとするのが相当。

道路工事の結果、(危険物と保安物件との間に一定距離を保持できない等の)警察違反の状態を生じ、移転による損失を被つたとしても、それは道路工事の施行による警察規制に基づく損失がたまたま現実化するに至つたにすぎない
このような損失は、道路法に定める補償の対象に属しない。

「処分性」の有無を判断した判例比較

処分性あり処分性なし
土地区画整理事業の事業計画の決定(最大判平20.9.10)都市計画法上の用途地域の指定(最判昭57.4.22)
第二種市街地再開発事業の事業計画の決定(最判平4.11.26)道路交通法に基づく反則金納付の通告(最判昭57.7.15)
旧関税定率法の輸入禁制品該当の通知(最判昭54.12.25)ごみ焼却場の設置処分(最判昭39.10.29)
地区計画の決定(最判平6.4.22)
国有財産の売り渡し(最判昭35.7.12)

「訴えの利益」の有無を判断した判例比較

訴えの利益あり訴えの利益なし
公務員としての職を辞したものとみなされた者でも、公務員として有するはずであった給料請求権等の権利・利益を回復する訴えの利益は認められる(最大判昭40.4.28)運転免許の効力停止処分を受けた者は、停止期間を経過し、かつ、処分の日から無違反・無処分で1年を経過すると、処分の取消しを求める法律上の利益は失われる(最判昭55.11.25)
土地改良事業の認可処分に基づく工事が完了し、原状回復が社会通念上不可能になったとしても、本件認可処分の取消しを求める訴えの利益は失われない(最判平4.1.24)保安林指定解除処分の取消訴訟継続中、保安林の代替施設が設置されると訴えの利益は失われる(最判昭57.9.9)
建築確認処分の取消しを求める利益は、建築物の建築工事の完了によって失われる(最判昭59.10.26)

建築確認と土地改良事業の認可処分について

工事完了後、建築確認で訴えの利益が失われるのに対し、土地改良事業で訴えの利益が失われないのはなぜか

  • 建築確認
    = 「ある工事の内容」に対して法に適したものかどうかを審査すること
  • 土地改良事業の認可処分
    = 特定の工事内容に対するものではなく、工事を含む事業全体にかかる認可

工事が完了した段階において、工事という作業内容を審査する建築確認を取り消したところで何にもならない(建物が違法かどうかの話ではない)。だから訴えの利益は失われる。

一方で、土地改良事業の認可処分は工事そのもののみ問題とされるわけではないため、取り消しを求めることに意味がある(原状回復を実現させられるかは別であるが)。だから訴えの利益は失われない。

「原告適格」の有無を判断した判例比較

原告適格あり原告適格なし
航空機の騒音を理由に免許取消しを求めた空港周辺の住民で、航空機の騒音によって社会通念上著しい障害を受けることになる者には、原告適格がある(最判平元.2.17)パチンコ店の営業許可取消しを求める周辺住民には原告適格がない(最判平10.12.17)
公衆浴場法に基づいて営業する既存業者は、新規業者に対して許可の取消しを求める法律上の利益を有する(最判昭37.1.19)
都市計画法上の開発許可によってがけ崩れなどの危険にさらされる者には、開発許可の取消しを求める原告適格を有する(最判平9.1.28)

 

練習問題

難易度「易」の例題3問で理解度チェック!

1.課税処分においても、 信義則の適用によって常に個別救済を受けられる
2.「専ら行政権の主体として国民に対して行政上の義務履行を求める訴訟」は、法規の適用の適正ないし一般公益の保護を目的とするもので、自己の権利利益の保護救済を目的としておらず法律上の争訟と言えない
3.行政庁による裁量事項の当不当も裁判所が判断すべきとされている
難易度「易」_全7問難易度「並」_全7問
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