【行訴法まとめ】実質的当事者訴訟と形式的当事者訴訟当、取消訴訟など

訴訟類型まとめ

抗告訴訟とは

抗告訴訟とは行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟」です。

行政機関でなくとも、公権力行使の権限が与えられている機関であればよく、
民法上の法人でもこの行政庁に該当することがあります。

関連判例)
国営空港の夜間離発着の差止請求では、運輸大臣の公権力の行使に関係し民事訴訟として許容されなかった。事実行為を含む行政活動全体に公権性を認め、民事訴訟の手続きを否定。

< 抗告訴訟の類型 >

  • 処分の取消しの訴え
    行政庁の処分その他公権力の行使にあたる行為が対象。
    「その他の公権力」とは「受忍を強要する事実行為」も含む
  • 裁決の取消しの訴え
    審査請求その他不服申立てに対する行政庁の裁決、決定その他の行為も対象。
    ※行政不服申立に対する裁決取消しの訴えにおいて、
    原処分の違法性を主張することはできない。
    = 「原処分主義」
    関連判例)
    公務員の懲戒処分が審査請求で減給処分に修正。
    その後の取消訴訟では修正内容のほうを原処分とした。
  • 無効等確認の訴え
    行政処分に取消されるべき瑕疵があっても、まずは取消訴訟で扱う
    = 「取消訴訟の排他的管轄」
    ※無効等確認訴訟では、とくに無効の確認を求める必要のある原告に限って提起できる。
  • 不作為の違法確認の訴え
  • 義務付けの訴え
  • 差止めの訴え

当事者訴訟とは

当事者訴訟とは「法主体(当事者)間で公法上の法律関係を争う訴えのことです。

行政事件のうち、「抗告訴訟以外のものを包括する訴訟類型」という性質も持ちます。

当事者訴訟には形式的当事者訴訟と実質的当事者訴訟があります。

形式的当事者訴訟とは「当事者間の法律関係を確認しまたは形成する処分または裁決に関する訴訟で、法令の規定によりその法律関係の当事者の一方を被告とするもの」を言います。

→ 処分・裁決を争う訴訟にもかかわらず抗告訴訟によらない個別の規定

実質的当事者訴訟とは、「公法上の法律関係に関する確認の訴えその他の公法上の法律関係に関する訴訟」のことです。

民衆訴訟とは

民衆訴訟とは、国または公共団体の機関の法規に適合しない行為の是正を求める訴訟で、選挙人たる資格その他自己の法律上の利益にかかわらない資格で提起するもの」のことです。

訴えを提起できるのは法律に特別の定めがある場合に限られます。

例えば、選挙に関する訴訟や住民訴訟などが該当します。

< 住民訴訟 >

住民訴訟は、「財務適正」を目的とした訴訟です。

訴訟提起にあたり「住民監査請求」が事前に必要です。

ただし住民監査請求をしたにもかかわらず、これを6か月無視された場合にも住民訴訟に移行することができます。

  • 監査請求ができる期間は、当該行為があってから1年以内。
    → 怠る行為には期間制限はない
  • 住民訴訟の原告適格は、当該地方公共団体の住民で、住民監査請求をした者。
    → 法人や外国人でも制限はない
  • すでに住民訴訟が係属している場合、他の住民が別に訴えを提起して同一の請求をすることは不可。

機関訴訟とは

機関訴訟とは、国または公共団体の機関相互間における権限の存否またはその行為に関する紛争についての訴訟」のことです。

民衆訴訟と同様、提起できるのは特に定められた場合に限られます。

例えば、市町村長と議会の紛争や代執行訴訟、国の関与に関する訴訟などが機関訴訟に該当します。
なおここでの「関与」とは、自治体が「固有の資格において名あて人となるもの」としてなされる行為である。

固有の資格」の意味に関してはこちらで開設

「固有の資格において名あて人となるもの」の意味を解説(行政法・地方自治法)
「固有の資格」とは「一般人では立ち得ない立場に国や自治体が立った状態のこと」である。このページでは「固有の資格において名あて人となるもの」がどういう意味なのかイメージしやすいよう、固有の資格に該当しない例と比較して解説する。

取消訴訟について

処分性

取消訴訟の対象は「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」です。

この「処分」のほとんど行政行為で、行政立法や行政指導、行政契約などは含まれません。

しかし事実行為でも即時執行直接強制は処分性を持ちます。

※処分性の判定は、公権力性権利義務に対する直接具体的な法的規律の観点からなされます。

< 色んな行為の処分性パターン >

  • 表示行為の処分性
    法律的見解の表示は事実行為として処分性否定。
    しかし判例では「通知・勧告」の処分性に肯定傾向アリ。
    例1)交通反則金の通告は従わなければ不利益を生じるが、反則金の納付は相手の自由な意思による。よって交通反則金の通告には処分性ナシ。
    例2)都市計画法の開発許可申請に対する拒否は、法的地位に直接影響を及ぼすものではない。よって処分性ナシ。
  • 規範定立行為の処分性

法律や条例の制定は基本的に処分性が否定される。
しかし執行行為を経ず、特定人に具体的な法的効果を及ぼす場合には処分性が肯定される。
「告示」についても同様の考え方。

  • 内部行為の処分性

「通達」や行政機関相互の行為は処分性否定。
消防法に基づいて消防庁が知事に対してする同意など。

  • 段階的行為の処分性

行政不服申立てを認める規定があれば処分性が認められる。
例1)事業計画自体は利害関係者の権利変動を具体的に確定するものではないが、
「土地区画整理事業計画の決定・公告」では、
一定地区内の宅地所有者の法的地位に変動をもたらし、権利義務への影響が具体的に予測することができるとして処分性を肯定。
例2)申請に対する拒否決定は処分性を有する。しかし事実上の応答に過ぎない決定については否定。
例3)都市計画法に基づく都市計画区域内での「用途地域の指定」については処分性否定。不特定多数に対する一般的・抽象的な効果だから。

※地区計画の他、地方議会の議決や検察官による起訴なども処分性は否定される。

原告適格

< 原告適格 >

原告適格が認められるには「訴えの利益」がなければなりません。

例1)「建築確認の取消訴訟」については、
建築工事の完了することで訴えの利益は失われる。
建築確認は、建築行為を適法に行わせる法的効果を持つのであり、完了によって建築行為は終わるから。
よって、この取消訴訟における訴えの利益は認められない。原告適格ナシ。

例2)「土地改良事業の施行認可の取消訴訟」において、
事業が完了して原状回復が困難になっても、それは事情判決の問題である。
認可処分が取り消されれば、その後の換地処分等の法的効力に影響を与えることは明らか。
よって、この取消訴訟での訴えの利益は失われない。原告適格アリ。

例3)処分によって名誉や信用を傷つけられても、取消訴訟によって回復すべき法律上の利益とはではないため、取消訴訟における訴えの利益位は認められない。原告適格ナシ。

< 被告適格 >

原則は行政主体が被告です。

しかし処分権限を委任された指定法人等が処分をした場合には当該指定法人等が被告となります。

< 出訴期間 >

取消訴訟の出訴期間は以下です。

処分・裁決があったことを知った日から6か月以内

処分・裁決があった日から1年以内

この期間を過ぎると訴えの利益があったとしても訴訟提起は認められません。
ただし出訴期間を過ぎたことに「正当な理由」があれば、徒過していても提起できます。

< 訴訟参加 >

取消訴訟では、当事者または第三者の申立て、および職権による訴訟参加を認めています。

※裁判所の決定で関係行政庁を訴訟参加させることも可能ですが、あらかじめ当事者の意見をきかなければなりません。

< 証拠調べ >

裁判所は職権で証拠調べをすることができます。

ただし、その結果について当事者の意見を聞かなければなりません。

民事訴訟の例により文書提出命令をすることもできます。

判決の効力

  • 既判力:
    訴訟の対象となった同一事項について今後異なる主張や判断ができなくなる。
  • 取消判決の形成力
    取り消された処分は遡って消滅し、原状回復機能をもつ。
  • 取消判決の拘束力:
    取消判決の趣旨に従ってその後の行動が拘束される。

執行停止

裁判所は職権で執行停止の決定はできません。
申立てを受けてから処分の執行停止決定ができるようになります。
そして執行停止の決定をするには当事者の意見を聞かなければなりません。
※口頭弁論は不要

・無効等確認訴訟でも執行停止ができる
・当事者訴訟・争点訴訟では仮処分は排除される
執行停止などの仮の救済制度を詳しく解説したページはこちら
仮の救済(執行停止・仮の義務付け・仮の差止め)の解説
【行政法 - 仮の救済】行政事件訴訟法における仮の救済制度(執行停止・仮の義務付け・仮の差止め)について、要件や具体例を挙げて解説

その他抗告訴訟について

無効等確認訴訟

無効が前提の法律関係について、当事者訴訟または民事訴訟を提起できるならこの訴訟によらない。

⇔ 現在の法律関係を争ったのでは救済が不十分で、特に無効を確認する必要がある場合に限り提起可能。

【行政処分が無効の場合の訴訟形式】
通常の訴訟形式 - 現在の法律関係に関する訴え
私法上の法律関係(民事訴訟)   = 争点訴訟
公法上の法律関係(行政事件訴訟) = 当事者訴訟
補充的訴訟形式 - 無効等確認の訴え

不作為の違法確認訴訟

不作為の違法確認訴訟で勝訴しても不作為の違法が宣言されるのみであるため、
義務付け訴訟の併合提起が必要になります。

義務付け訴訟

不作為の違法確認訴訟・取消訴訟・無効等確認訴訟のいずれかを適法に提起する必要があります。その上での併合提起として義務付け訴訟がなされます。

義務付け訴訟には「非申請型の義務付け訴訟」と「申請型の義務付け訴訟」があります。

  • 非申請型
    例)環境被害を受けている住民が、行政規制権限の発動を求める場合。
  • 申請型
    社会保障・年金等に関する給付を求める申請が拒否された場合。

差止訴訟

差止訴訟は、「事後的な措置では回復し難い重大な損害を被る」場合であって、事前の救済を認めないことにつき著しく不相当と言える場合に認められます。

※差止訴訟を提起した者は執行停止の申立てはできない。

差止判決は既判力により当事者を拘束するが第三者には効力が及びません。
そのため、ある差止訴訟につき却下・棄却判決が確定しても、
差止訴訟を提起した者とは別の、第三者が同一の差止訴訟を提起することができます

さらに、もとの差止訴訟の却下・棄却判決について取消訴訟を提起することも可能です。

差止訴訟に関して詳しく解説したページはこちら

差止訴訟の訴訟要件(原告適格や補充性)、判決の第三者効などを解説
このページでは、差止訴訟(行政事件訴訟法差止訴訟3条7項における差止めの訴え)に関して、その概要や訴訟要件等を解説していく。

仮の義務付け・仮の差止め

仮の義務付け、仮の差止めをするには、
「本案について理由があるとみえる」ことが必要で、
つまりこれは本案訴訟の勝訴見込み(勝てそうな状態)を要件としていることを意味します。

執行停止の要件は「本案について理由がないとはみえない」ことです。
つまり本案訴訟の敗訴見込みがないことを要件としています(負けそうではない状態)。
※仮の義務付け、仮の差止めのほうが要件のハードルが高い

手続は口頭弁論を経ずにできますが、あらかじめ当事者の意見をいかなければなりません。
(執行停止と同じ)

※仮の救済措置、執行停止の申立ては、本案の訴訟を提起した者ができる。
仮の救済制度(執行停止仮の義務付け仮の差止め)について解説したページはこちら
仮の救済(執行停止・仮の義務付け・仮の差止め)の解説
【行政法 - 仮の救済】行政事件訴訟法における仮の救済制度(執行停止・仮の義務付け・仮の差止め)について、要件や具体例を挙げて解説

当事者訴訟について

当事者訴訟は、「公法上」の問題という点で民事訴訟と異なりますが、基本的には民事訴訟が準用されます。

形式的当事者訴訟

形式的当事者訴訟とは、「当事者間の法律関係を確認しまたは形成する処分または裁決に関する訴訟で、法令の規定によりその法律関係の当事者の一方を被告とするもの」です。

処分・裁決の効力を争う点で抗告訴訟と同じですが、法令の規定により当事者訴訟の形式をとる点で異なります。

処分・裁決を争うよりも直接の利害関係のある当事者間で争うほうが適切なケースで利用されます。

例)「土地収用に関する収用委員会の裁決」について、損失補償額に争いがある場合。

本来行政主体を被告に裁決を争うところですが、
補償金額については、補償金の支払いに関係する当事者間(土地所有者と起業者)で争う方が合理的とされ当事者訴訟で扱われます。

※形式的当事者訴訟は抗告訴訟に近い性質を持ち、判決の拘束力も関係行政庁にも及びます。そこで裁判所は処分庁に通知が必要です。

実質的当事者訴訟

当事者訴訟とは、「公法上の法律関係に関する確認の訴えその他の公法上の法律関係に関する訴訟」です。

給付訴訟:懲戒免職処分の無効を前提として公務員が退職手当の支払いを求める訴えなど。

確認訴訟:国に対して日本国籍を有することの確認を求める訴えなど。

  • 処分性の否定される行政活動につき違法であることの確認(行政基準・行政計画・行政指導)
  • 行政の行為を直接争わず、原告の権利義務関係に引き直して権利義務・法的地位等の確認をする
  • 行政処分が無効であることを前提に現在の法律関係について確認

争点訴訟について

争点訴訟とは、「私法上の法律関係に関する訴えの中で、行政庁の処分・裁決の効力・存否が前提問題として争われる訴訟」です。

争点訴訟は民事訴訟ですが、
取消訴訟の一部規定が準用されます(行政庁への通知や参加、職権証拠調べなど)。

例1)農地買収処分の無効を理由とする土地所有権の確認を求める訴え。

処分・裁決の効力が争点でも、公法上の法律関係が訴訟物であれば争点訴訟ではなく当事者訴訟となります。

仮の救済制度まとめ

取消訴訟・無効等確認訴訟・民衆訴訟・機関訴訟(のうち処分・裁決の取消、無効の確認を求めるもの)における仮の救済

→ 執行停止

義務付け訴訟・差止め訴訟における仮の救済

→ 仮の義務付け、仮の差止め

※仮処分は「行政庁や公権力の行使に関わる行為」には使えません