行政上の不服申し立て!審査請求の流れや教示制度など解説(行審法)

ここでは「行政上の不服申立て」を解説し、行政訴訟との比較もしていく。

  1. 審査請求
  2. 再調査の請求
  3. 再審査請求

の3種があるが、審査請求に関する規定を他が準用する形になっているため、以下では審査請求に着目する。

行政上の不服申立てとは

行政上の不服申立てとは、
行政活動によって生じた紛争を解決する手続(行政争訟)のうち、行政機関に提起されるもの」のことである。

行政不服審査法に規定があり、同法では①国民の権利利益の救済、その上で②行政の適切な運営の確保もその目的とされる(行審法1条1項)。
つまり主目的は国民に対する救済であり、行政の運営に関しては副次的目的とされる。

(目的等)
第1条「この法律は、行政庁の違法又は不当な処分その他公権力の行使に当たる行為に関し、国民が簡易迅速かつ公正な手続の下で広く行政庁に対する不服申立てをすることができるための制度を定めることにより、国民の権利利益の救済を図るとともに、行政の適正な運営を確保することを目的とする。」

不服申立て3種

具体的な申立て内容としては3種ある。ごく簡単に特徴をまとめると以下のようになる。

  1. 審査請求
    処分や不作為に対する原則的な不服申立て
    処分庁等の最上級行政庁に提起される
  2. 再調査の請求
    簡易の不服申立て
    法律に定めがある場合にのみ可能
    処分庁に提起される
    不作為に関しては対象外
    諮問、弁明書、反論書、審理員、質問などの制度はない
  3. 再審査請求
    審査請求に対する裁決に、さらに不服がある場合の手段
    法律に定めがある場合にのみ可能
    法定されているのは、専門技術性が必要な内容

例外(適用除外)

行政不服審査法は行政上の不服申立てに関する一般法として機能するが、適用除外となる処分・不作為もある。
例えば「国家による処分」や「国の機関や地方公共団体等に対する一定の処分」などは同法が適用されない

また個別法で適用除外としている場合にも適用されない。
例えば地方自治法上の「国の関与に対する国地方係争処理委員会への審査の申出」では独自の不服申立て制度が設けられている。

行政訴訟との違い

行政争訟のうち提起されるのが裁判所の場合は「行政訴訟と呼ばれる。

他方、行政上の不服申立てであれば、行政訴訟のように審査対象が違法性に限られず、当不当の審査も可能となる。
その他、費用的時間的コストも下げることができ、労力も比較的少なくて済むという違いもある。

しかしあくまで行政内部での審理であるため、公正性は行政訴訟に劣る。

審査請求について

審査請求に対しては、本案であるその請求の当否の審理に入る前に、適法要件をクリアしなければならない。その上で審理が行われ、裁決がなされる。

要件

処分に関する審査請求の場合、審理をしてもらうためには以下の要件を満たさなければならない。
(政訴訟における訴訟要件に対応)

なお「請求の利益」も必要であるため、取消訴訟同様、処分の効果がなくなると審査請求の利益は失われる。

「処分」が対象であること

ここでの「処分」とは「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」を意味する
→ 「権力的かつ継続的性質の事実行為」もその対象となる(人の収容や物の留置など)
→ 取消訴訟における「処分」と同義
⇔ 行政指導に不服申立てはできない

原則としてはすべての処分・不作為に審査請求が可能で、これを「一般概括主義」といい、請求できるものを個別に定めるのではなく、請求できないものを個別に定めるものとされる。

「適切な審査庁」に請求すること

少しでも公正性を保つため、処分をした行政庁が審理を行うのではなく、原則として「処分庁の最上級行政庁」が審査庁として審理を行う

処分庁の最上級庁の具体例
県の福祉事務所長がした生活保護の開始決定の場合
→ 県知事が審査庁
ただし例外がある。
例外1)上級行政庁がない場合
→ 処分庁自身が審査庁になる
例外2)処分庁が、主任の大臣である場合
→ 当該主任の大臣が審査庁になる
※上級行政庁は存在するものの、組織の自律性を考慮した結果、これらの機関が審査庁になるものとして扱われている例外2の具体例
国土交通大臣がする行政文書の不開示決定の場合
→ 国土交通大臣が審査庁となる
例外3)法律または条例に特別の定めがある場合
→ 第三者機関等所定の機関が審査庁になる例外3の具体例
県の建築主事による建築確認の場合
→ 当該県の建築審査会が審査庁になると定められている

「一定期間内」に請求すること

以下の2つを満たす期間中に請求しなければならない

  1. 主観的請求期間
    処分があったことを知った日の翌日から3ヶ月以内
  2. 客観的請求期間
    処分があった日の翌日から1年以内

ただし「正当な理由」があればこの期間を過ぎても請求可(天災など)

不作為についての審査請求の場合

以上は処分に対する審査請求の要件であるが、以下、不作に対する審査請求での要件をまとめる。

  • 請求資格:「法令に基づいて行政庁に対して処分の申請をした者」
    → 法令に基づく申請が可能で、実際に申請をしていることが必要(不作為の違法確認訴訟と同じ)
  • 請求の利益:行政庁が申請に対応した処分をすると審査請求の利益は失われる
  • 請求時期:「相当の期間」が経過していること
    → 申請後、即座の請求は不可(不適法却下)

教示

国民の権利利益の救済が第一の目的とされるものの、仕組みが複雑になってしまっている。そこで教示制度が設けられ、処分時には「このようにして審査請求ができますよ」と教えることになっている。

教示制度
行政庁は、不服申立てができる処分をするときにはその相手方に対して
①不服申立てができること
②どの行政庁が申立て先になるのか
③申立てが可能な期間
を「書面で」教示しなければならない。
※ただし処分が口頭でされる場合には必要ない

利害関係人から①~③の教示を求められたときにも行政庁は教示しなければならない。

教示が義務ではなく「努力義務」とされている事項もある
・不服申立てに必要なその他情報の提供
・不服申立ての処理状況の公表

 

なお、行政庁が教示を誤ってしまった場合、相手方や利害関係人に帰責事由がないにもかかわらず適法に審査請求できなくなるという問題が生じる。そこで救済規定が設けられている。

  1. 教示がない場合
    処分庁に不服申立てをすれば良い
  2. 請求すべき行政庁が誤っている
    教示された行政庁に提出すれば良い
  3. 制限期間が誤っている
    誤った教示がされたことを「正当な理由」として、法定の期間を過ぎても良い
  4. 不服申立てができないにもかかわらずできるものとして教示された場合
    却下裁決を知った日等から出訴期間が起算される(出訴期間が延びる)

審理の原則と流れ

違法性が審理される行政訴訟と異なり、行政上の不服申立てでは当不当が審理される。

「不当」とは、違法ではないものの行政目的に適合していないこと

 

審理手続は、以下の流れに従って進む。

STEP1.提起

審理員の制度は、行政手続法上の聴聞の「主宰者」が基礎になっており、以下のように定められている。

口頭でできる旨の定めがない限り、審査請求書の提出により提起される。
そして審査請求書が提出されると、審査庁は、審査庁に所属する職員から審理員を指名する。そしてそのことを審査請求人および処分庁に通知しなければならない
※「審理員名簿」の作成は努力義務であるが、公表は義務

その他ポイント
・利害関係人も審理員の許可を得て、参加人として審査請求に参加可能
(審理員から利害関係人に対して参加を求めることも可能)
・審査請求人の地位は相続の対象となる
・代理人は一切の行為ができるため審査請求を行うこともできるが、審査請求の取下げをするには「特別の委任」が必要

STEP2.審理員による審理

  1. 審理員は、審査請求書を受けると、ただちにこれを処分庁等に送付して弁明書」の提出を求めなければならない
  2. その後弁明書が提出されると、審査請求人・参加人に送付しなければならない
  3. 審査請求人はさらに「反論書」の提出ができる(参加人の場合は「意見書」)
  4. 審査請求人または参加人の申立てがあった場合、審理員は、原則として口頭で意見を述べる機会を与えなければならない
  5. 審理員が、必要な審理を終えたと認めると審理手続は終結される
  6. 終結後、審理員は、裁決に関する「意見書」を遅滞なく作成し、事件記録とともに審査庁に提出しなければならない

STEP3.諮問

独立性を高めるため、行政不服審査会などの第三者機関への諮問制度を設けている

そこで審理員意見書の提出を受けた審査庁は
①国の機関のときは行政不服審査会へ
②地方公共団体の機関のときは当該地方公共団体に設置される機関へ
諮問しなければならない。

諮問制度の例外
処分が合議制の機関等の議を経ている場合や、審査請求人が諮問を希望しない場合、審査請求を全部認容する場合などには諮問をしなくても良い

裁決

審査庁は、行政不服審査会等から諮問に対する答申を受けたとき、遅滞なく裁決をしなければならない。

なお「諮問に対する答申」と「審理員意見書」には法的な拘束力はない。ただ、これらの内容と異なる裁決をする場合には理由を示さなければならないため事実上の拘束力は受けることとなる。

裁決の効力

  • 裁決は審査請求人に送達された時、効力を生ずる
  • 裁決には拘束力がある
    → 裁決は関係行政庁を拘束する(取消判決の拘束力と同様)
  • 公定力・不可争力・不可変更力もある

裁決の種類

  • 要件を満たさない=「却下裁決」
  • 理由がない=「棄却裁決」
  • 理由がある=「認容裁決」
  • 理由はあるが公の利益に著しい障害が生じる=「事情棄却」

認容裁決となった場合、審査庁は「処分の全部または一部の取消し」または「変更」をする(ただし審査庁が「処分庁の上級行政庁」でも「処分庁」でもないなら変更はできない)。

 

請求対象によって対応が以下のように少し複雑になるため要注意。

「事実行為」に対する請求の認容裁決

  • 審査庁が処分庁
    「当該事実行為の全部または一部の撤廃」または「変更」をする
  • 審査庁が処分庁以外
    処分庁に対して「当該事実行為の全部または一部の撤廃」または「変更」を命ずる(処分庁の上級行政庁でないときは変更を命じることができない)

「申請に対する拒否処分」に対する請求の認容裁決

  • 審査庁が処分庁
    当該処分をする
  • 審査庁が処分庁の上級行政庁
    当該処分をすべき旨命ずる

※拒否処分に対する申請型義務付け訴訟に対応

具体例
「国土交通大臣の委任による地方運輸局長の行政文書の不開示決定」に対する審査請求に対し、請求を受けた国土交通大臣が「開示をすべき」と認めた場合、裁決で地方運輸局長に開示決定を命ずることができる。

「不作為」に対する請求の認容裁決

  • 審査庁が不作為庁
    当該処分をする
  • 審査庁が不作為庁の上級行政庁
    当該処分をすべき旨を命じる

※不作為に対する申請型義務付け訴訟に対応

具体例
地方運輸局長が行政文書の開示請求に対して処分をしない場合、これに対する審査請求を受けた国土交通大臣が、裁決で地方運輸局長に開示決定を命じることができる。

仮の救済

取消訴訟と同じく「執行不停止原則」が採用されているが(25条1項)、裁決までに審査請求人の権利利益が侵害されるのを防ぐため、仮の救済制度として執行停止が法定されている。裁量的に執行停止をすることもでき、審査庁に加え、審理員も必要があると認めるとき執行停止をすべき旨の意見書を審査庁に提出できる

※行審法では、裁量的執行停止・義務的執行停止が規定されている。裁量的執行停止においては審査請求人の申立ておよび「職権」で執行停止が可能。
※行訴法では、申立てにより執行停止が可能(行訴法25条2項)。職権では不可。

行訴法25条2項
「処分の取消しの訴えの提起があった場合において、処分、処分の執行又は手続の続行により生ずる重大な損害を避けるため緊急の必要があるときは、裁判所は、申立てにより、決定をもって執行停止をすることができる。ただし、処分の効力の停止は、処分の執行又は手続の続行の停止によって目的を達することができる場合には、することができない。」

裁量的執行停止

  • 審査庁が「処分庁の上級行政庁」または「処分庁」
    審査請求人の申立てまたは職権で執行停止ができる。このとき執行を停止するだけでなく、「その他の措置」を執ることも可能。例えば、違反建築物に対する除去命令から、暫定的な工事の施工停止(その他の措置)に代えるなど
  • 審査庁がそれ以外のとき
    審査請求人の申立てを要し(職権は不可)、さらに「その他の措置」も執れない

義務的執行停止

審査請求人の申立てがあり、手続の続行によって生じる「重大な損害を避けるために緊急の必要がある」と認めるときは、執行停止をしなければならない(必要的執行停止)。

例外
「公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるとき」または「本案に理由がないとみえるとき」は、執行停止をしなくても良い