【入門-行政作用】行政上の強制執行、行政強制、即時強制なども解説 – 行政法

ここでは行政作用、特に「行政行為」「行政上の強制措置」について解説しています。

  • 「法律行為的行政行為」や「準法律行為的行政行為」には、例えばどんな行為があるのか具体的に解説
  • 公定力などの行政行為の持つ効力
  • 行政上の強制執行や行政罰など、行政上の強制措置の分類と効果

これらを入門者向けに解説しています。

必要なところだけ見たいという方のために各項目を下の目次で細かく記載しております。クリックでその項目まで飛ぶことができます。

行政行為とは

行政行為とは、

「行政庁が、法律に基づき、公権力の行使として、直接・具体的に国民の権利義務を規律する行為」

であると言えます。

→ 法律の根拠が必要で、内容もあらかじめ規律されている必要がある。

  • 国民の権利義務を決定する           ⇔ 行政指導(事実行為)
  • 個人の権利義務に具体的に及ぶ ⇔ 行政立法(一般的・抽象的事項を規律)
  • 一方的判断によって決定する        ⇔行政契約 (同意を要する)

―私人の行う行政処分―

民間委託が進められ、私人が行政行為を行う立法例もみられます。

ケース1:建築確認は、建築主事だけでなく、指定を受けた私人(指定確認検査機関)も行える。

ケース2:指定を受けた民間団体(指定管理者)は、公の施設の管理につき行政庁の権限を代行して使用許可など一定の処分をすることができる。

行政行為の「種類」

民法理論においては、意思表示の構造は以下のようになっています。

動機 → 効果意思 → 表示意思 → 表示行為

法律行為的行政行為

法律行為的行政行為:行政庁に効果意思があることによって法的効果が発生。

 ・命令的行為:私人がもともと有する自由を禁止する
→ 下命・許可

ー許可についてー
許可は本来有する権利にかかる禁止を、申請によって回復させる行為です。
消極規制(警察許可)として整理されるため、できるだけ与えるべきものと考えられ行政庁の裁量は狭くなります。
国民は許可を受けて適法な行為を行えますが、許可を受けていないからといってその行為が当然に無効となるわけではありません。
公衆浴場業の営業許可
国民保険・環境衛生という消極目的+被許可者を過当競争から守るという積極目的薬局の距離制限
距離制限に積極的な観点は見出せず、営業の自由に対する過度の規制として違憲。

 ・形成的行為:私人に特別な権能を付与する
→ 特許・認可

―特許について―
道路や河川といった公共用物に独占的な使用は認められません。
しかし特許によってこれを許すという形式を採ります。
そのため許可と違って行政庁に広い裁量が認めら、さらに公的負担ないし義務を附款として課すことができます。
特許を受けずにした行為はそれをする権能がないため、無効と解釈されます。

―認可について―
認可は「私人相互の法律効果を補充して完成させる行政行為」です。農地法上の許可が典型。
私人間の合意を行政庁が修正するという形を採ります。
認可には法律の根拠が必要です。

準法律行為的行政行為

準法律行為的行政行為効果意思が存在せず、事実行為を捉えて法的効果を与える。

→ 確認・公証・通知・受理

行政行為の分類例

  • 運転免許の「免許」:
    → 許可
  • 宗教法人の設立で受ける「認証」:準法律行為的行政行為
    → 確認にあたり行政庁に裁量の余地はない
  • 建築確認(建築物の計画が建築関係規定に適合しているかどうか):準法律行為的行政行為
    → 確認にあたるが、少し裁量が認められる。
  • 選挙人名簿への「登録」:準法律行為的行政行為
    → 公証にあたり裁量はない。
  • 車両制限令上の「認定」:実質的に法律行為的行政行為
    → 確認的性格があるとしながら実質許可制度と変わらないとして裁量を認めた

行政行為の「効力」

公定力

公定力とは、

「違法な行政行為でも直ちに無効とならず、一定の手続きを経るまでは有効に扱われる効力」

公定力の範囲は行政行為の法的効果に関わるものです。

例1)AB間で土地所有権の争いがあるケース

ある土地を占有しているAが、建築物を建てようと「建築確認」をして認容されたとします。
しかしこの場合でも、建築確認の公定力は土地所有権の所在に影響を与えません。
そのため、Bが自己の所有権を主張して建築確認を争う利益はありません。

例2)原子炉設置許可の取消訴訟

原子炉設置許可に対しその取消しを求めて行政事件訴訟を起こすことができます。
さらに許可という行政行為と原子炉設置行為は別個と考えるため、民事訴訟で設置の差止請求も提起可能です。

< 公定力の根拠 >
行政行為に公定力が認められるのは、取消訴訟が設けられているから。と考えます。
そして、処分に違法性があるなら、この取消訴訟以外の訴訟類型で争うことは原則できません。
→ 取消訴訟の排他的管轄
ただし、無効事由たる瑕疵がある場合には公定力が及びません。
よってこの場合、取消訴訟の排他的管轄に服することなく、誰でもその行政行為の無効を主張できることになります。

取消訴訟を経ずに行政行為の無効を判断した事例

例1)刑事責任
命令違反を理由に刑事責任に問われた場合、
当該命令が違法・無効であることを理由に無罪の主張ができます。
刑事事件においてはあらかじめ取消訴訟で命令について違法性を認めてもらう必要はありません。

例2)国家賠償請求訴訟
国家賠償請求訴訟において、
公務員の行った行政行為の違法性を主張するため、あらかじめ取消訴訟をする必要はありません。

例3)特許
特許に無効理由が明らかなら、
その特許権に基づく差止めまたは損害賠償等の請求は、権利濫用になり許されないと考えます。
侵害訴訟における特許の無効主張を実質的に許していることになります。

不可争力

不可争力とは、
「一定期間の経過により私人から行政行為の効力を争うことができなくなる効力」

行政上の法律関係を早期に安定させる趣旨ですが、行政庁が職権により取り消すことは可能です。

執行力

執行力とは、
「行政行為の内容を行政権が自力で実現できる効力」

法律の留保の原則により、個別に法律の根拠が必要とされます。

不可変更力・実質的確定力

不可変更力とは、
「一度した行政行為について処分庁みずからも変更できない効力」

審査請求に対する裁決や訴訟裁断的性質を持つ行政行為に認められます。

さらに、
処分庁だけでなく上級庁・裁判所も取消・変更できない場合に「実質的確定力」と言います。

瑕疵論

ケース1:瑕疵の治癒

  • 農地買収計画について訴願されたにもかかわらず買収処分がされたとしても、その後訴願棄却判決がなされたことを理由に、この瑕疵は治癒されたとした事例があります。
  • 租税の更正処分において理由付記に不備があった事例。
    後日、審査請求に対する裁決でその理由は明らかになりましたが、瑕疵は治癒されませんでした。

ケース2:違法行為の転換

・法人税の青色申告に対する更正処分で処分理由に誤りがあった事例。
処分と処分理由を切り離して考えることに疑問はあるものの、
誤りを直すことに特に不利益がないことから処分庁の追加主張を正当としています。

ケース3:理由の差替え

・情報公開制度に基づいた請求に対し非公開決定をした事例。その後の争いで非公開決定理由書に付記していた理由以外を主張しましたが、理由の差替えは認められています。

取り消しと撤回

  • 職権取消
    行政庁が、瑕疵ある行政行為の効力を遡及的に失わせ、正しい法律関係を回復させること。
  • 撤回
    適法に成立した行政行為につき、事情の変化により、将来的に無効とすること。

どちらも法律の根拠は不要とされています。

判例:庁舎の地下に店舗があったが、事務室の拡張のため目的外使用許可を撤回できるかという問題。
目的外使用許可(特許)を得て店舗の営業をしていたが、本来の用途のために立ち退く必要が出た。法律の根拠も不要のため撤回はできる。
しかし営業者のため補償は必要(撤回は適法な行政行為のため損失補償⇔国家賠償)。

附款

附款とは、
「行政行為の効果を制限するため、行政庁の意思表示の主たる内容に付加された従たる意思表示」

附款の種類

  • 条件
  • 期限
  • 負担
  • 撤回権の留保

附款に瑕疵がある場合、それだけを対象に取消訴訟が提起できます。
この場合、附款が、本体となる行政行為と不可分一体なら全体として違法になります。

行政裁量

裁判所は裁量事項とされた領域について当・不当の判断に踏み込めません。

そこで不当性については行政庁による職権取消しや、行政不服申し立てにおいて是正させることとなっています。

  • 判例1:
    在留期間の更新事由につき判断基準が決められていないのは、判断を法務大臣の裁量に任せるためとして要件裁量を肯定した。
    政治の諸事情や国際情勢などを斟酌するためである(政治的裁量)。
  • 判例2:
    原子炉等規制法の許可要件の適合性に関しては高度な専門技術的知見を持つ原理職委員会の意見を尊重し裁量性を認めた(専門技術的裁量)。
    → 教科書検定を文部大臣の裁量に委ねていることなども専門技術的裁量の範囲。
  • 判例3:
    争議行為をした公務員に懲戒事由が認められ、どのような処分を選ぶかは懲戒権者の裁量に任せた。

行政上の強制措置

行政上の強制措置は以下のように分類されます。

行政上の強制措置
行政強制行政上の強制執行行政代執行
直接強制
執行罰(過料)
行政上の強制徴収
即時強制
行政罰行政刑罰(懲役・罰金など)
秩序罰(過料)

行政強制

租税に係る国税徴収法以外には、一般法として行政代執行法があります。
しかし代執行はあまり機能しておらず、実際の運用では、即時強制の立法をするなどの対応がされています。

執行罰および直接強制は個別法で特に定められた場合にのみ認められます。
なお執行罰は砂防法が唯一の例です。

―行政上の義務履行確保の手段

一般法があるもの:①行政上の強制徴収(国税徴収法) + ②代執行(行政代執行法)

個別法によるもの:③直接強制 + ④執行罰

行政代執行 – 行政上の強制執行(1/4)

代執行をするための要件

  1. 代替的作為義務の不履行
  2. 他の手段では困難(補充性)
  3. 不履行の放置が著しく公益に反する

※明渡しや立退きは義務者の意思に基づいて行うもののため、執行罰による任意の立退きか直接強制が必要です。

―代執行の手続き―

1 事前手続

  • 戒告
  • 代執行令書の通知

2 代執行の実施(執行責任者は証票携帯・呈示)

3 費用の徴収

  • 納付命令
  • 国税滞納処分の例により強制徴収

※事前手続は、非常時には省くことができます(緊急執行)。

※戒告・代執行令書の通知は事実行為ですが、違法な場合には処分性を認め取消訴訟の対象とするのが通説・判例です。

直接強制 – 行政上の強制執行(2/4)

直接強制は、例えば敷地を封鎖して入れなくするなどの措置が該当します。

条例では定められません

しかし個別法もほとんどなく、「成田国際空港の安全確保に関する緊急措置法」と、ポツダム宣言を受けて制定した「学校施設の確保に関する政令21条」だけです。

直接強制による強制的な執行より即時強制を利用する例が実際には多いようです。

執行罰 – 行政上の強制執行(3/4)

執行罰とは「義務者みずから履行するよう、あらかじめ義務不履行に対し過料を課すと予告する、間接強制」のことです。戒告に定められた期限までに当該命令が履行されなければ、金銭は強制的に徴収されます。

例)中止命令を無視して工事する者に1日5万円の過料を科す定めなどの措置

なお、条例では定められません

※「過料」が科されるのは、この執行罰と下の秩序罰の2パターン

現状、執行罰に関する立法例は、砂防法のみです。
当該執行罰としての過料は国税滞納処分の例によって徴収されますが、上限額が昔から改定されておらず事実上死文化しているという実情があります。そのため「行政強制手段としての間接強制」の制度は、事実上不存在に近い状態と言われています。

そこで、違法な営業・違法な工事等に対して行政代執行が行われる例が少なくなく、しかも結局代執行にかかる費用を義務者から十分に徴収できないことにより公費の負担が増えてしまているという問題も抱えています。

行政上の強制徴収 – 行政上の強制執行(4/4)

行政上の強制徴収として「国税徴収法」があります。

租税債務の不履行のみならず、その他の金銭債権の強制徴収にも準用されます。

即時強制

即時強制とは、
「義務の存在を前提とせず、直接身体や財産に対して有形力を行使する」
ことです。

条例で定めることができます

通則的な規定はなく、行使は個別法がある場合に限られます。
令状主義が適用される余地もあります。

その他の義務履行確保の制度

公表―

条例で定められる

原状回復が困難なため法の根拠を必要とし、あらかじめ利害関係者に意見書提出を認める事前手続きを整備する必要があります。

しかし、行政手続法上の不利益処分ではなく「聴聞」の対象にはなりません。

公表への対抗手段

  • 公表の前提となる義務賦課行為を取消訴訟(+執行停止申立て)で争う
  • 人格権を根拠に公表の差止請求

―その他―

課徴金
課徴金とは「個別の法律により、行政庁が、違反行為をした者に対して課す金銭的負担」のことです。独占禁止法上の課徴金や金融商品取引法上の課徴金、景表法で課徴金が導入されています。
課徴金の特徴は、違法に取得した利益を剥奪するというところにあります。
なお、課徴金は刑事罰ではなく二重処罰にはあたりません(ただし無制限の金額は不可)。

加算税
納税義務者の義務違反に対して課される特殊の税です。こちらも二重処罰にあたりません。

行政罰

行政罰とは「行政上の義務の不履行に対する制裁」です。

法律または条例の根拠が求められます。

行政罰の種類

  • 行政刑罰:刑法上の刑罰(刑事訴訟法の手続き)
  • 秩序罰:刑罰以外の制裁 (特別の手続き)
条例では、
「2年以下の懲役」「100万円以下の罰金」までに限られ、
秩序罰の場合なら5万円が限度です。

行政刑罰

刑事訴訟法の定めに従い、例えば懲役・禁錮・罰金・拘留・科料などが適用されます。

判例では、道路交通法における反則金制度について、これは被告に対する任意の反則金納付であり、処分性が否定されています。

秩序罰

行政上の秩序罰は「行政上の秩序維持のため、違反者に制裁として金銭的負担を課すもの」のことです。法律・条例において「過料」という形で多く定められています。
秩序罰は行政刑罰である罰金を補完する位置づけです。そのため上限額も罰金より低額に定められることが多く、地方公共団体の条例や規則においては原則として5万円以下が上限とされています。

行政上の秩序罰として科される過料の徴収手続きは、根拠規範によって異なります。

  1. 法律に定めのある過料
    非訟事件手続法の定めに従い、行政処分の性格を持つ過料の裁判によって科される(司法的執行)
  2. 条例・規則に定めのある過料
    普通地方公共団体の長が告知・弁明の機会の付与を行い、その後行政行為として過料処分をする(行政的執行)
< 地方公共団体の秩序罰 >
条例または規則によって5万円以下の過料を科すことができますが、
長の規則によって科すこともできます。しかしこの場合、告知・弁明の機会の付与が必要になります。そして指定期限までに納付がなければ地方税の滞納処分の例により強制徴収ができるという仕組みです。