新株発行の問題から決議の方法、無効の訴え・不存在確認の訴えまで解説

資金調達のため、新株発行をすることがある。しかし場合によっては発行が無効になったり、不存在になってしまったりすることもある。以下では、主に「新株発行無効の訴え」に関して解説し、さらに「不存在の確認の訴え」にも言及していく。

新株発行による問題

新株発行をすれば新たな出資が行われるため、資金調達の手段となり得る。しかし株式が増加することで、既存株主にとって良くない影響を与えることもある。

持株および議決権の比率の低下」、そして「株式の価値の低下」が特に問題となり得る。

  • 議決権比率が下がるということは、会社に対する影響力が下げることを意味し、例えば取締役等を選任する際にも既存株主の意向が反映されにくくなる。
  • 株式の価値の低下に関しては、これは常に発生する現象ではなく、募集株式の払込金額が安価な場合に起こる。株式の希釈化が起こり、結果として既存株主は、持株数と価値の低下分に応じた損失を被ることになる。
株主割当てによる対策
議決権比率の低下、株式の価値の低下等の影響が既存株主に起こり得るが、「株主割当て」がその対策となる。既存株主に対して、持株比率に応じた新株を割り当てるという条件の下募集株式を発行するという方法である。

募集株式を決定する方法

以上のように、募集株式の発行は既存株主に大きな影響を与えるため、簡単に募集を決定することはできない。会社法のルールに則って必要な決議等を経なければならない。

そして既存株主の立場や及ぶ影響は、その会社が非公開会社なのか公開会社なのかによっても異なる上、前項の株主割当てによるフォローがされているかどうかによっても変わってくる。よって、「公開の有無」「株主割当ての有無」が大きな要因となり、募集事項の決定方法は定まる。

非公開会社の場合

非公開会社におけるルール
原則:株主総会の特別決議
(株主総会の特別決議により、取締役会に委任できる)
株主割当てがある場合
原則:株主総会の特別決議
(定款の定めにより、取締役会に委任できる)

非公開会社における株主は、公開会社の場合に比べて投資目的よりも、議決権行使による経営への関与がその目的となっていることが多い。そのため公開会社のように取締役会の決議では決められない。原則として株主総会の特別決議を要する。ただしその特別決議により取締役会への委任を決めることはできる。

株主割当てがある場合でも、原則として特別決議を経なければ募集事項を決定できないが、少し条件が緩和され、定款で定めれば取締役会の決議に委任することができる。

公開会社の場合

公開会社におけるルール
原則:取締役会の決議
(ただし有利発行をする場合は、株主総会の特別決議を要する)
株主割当てがある場合
原則:取締役会の決議

公開会社では、会社が機動的に資金調達することがその株主の目的にも即していると言える。そのため取締役会の決議により募集事項を決定することができる。ただし、既存の株式に比べて有利な金額で発行されるような有利発行の場合には、株式の価値定価が起こるため、株主総会の特別決議を要する。またその際、有利発行に関して会社は説明責任を負うことになる(この点は非公開会社も同様)。

その観点から言うと、株式割当てがされている場合には常に取締役会の決議で良いということになる。

既存株主の対抗手段

一応、会社法では株式の募集事項決定に関して上のルールが定められている。しかしそのルールが順守されていない場合など、募集株式の発行に問題があると思慮するときのために対抗手段が設けられている。

ここでは、この対抗手段のうち会社法828条にある「無効の訴え」、会社法829条にある「不存在の確認の訴え」を解説する。

新株発行無効の訴え

会社法828条によると、株式の発行の効力が生じてから6ヶ月以内であれば、訴えをもって株式発行の無効を争うことができるとある。これが「新株発行無効の訴え」である。

無効であることが認容されると、第三者にもその効力が生じるが、遡及効は否定されるため、新株発行は将来に向かってのみその効力が失われる。

無効事由

新株発行に関して無効事由(無効原因)が認められると、訴えが認容されるが、何が無効事由なのかは明記されておらず、事例ごとに考える必要がある。

なお判例では、非公開会社について以下のように評価している。

「株主総会の特別決議を経ず、株主割当ても行わずに募集株式の発行がなされたなら、手続に重大な法令違反があり、その瑕疵は無効事由にあたる」

また、特別決議を経ずになされた発行だけでなく、特別決議に瑕疵があったときも同様と考えられている。例えばその株主総会における招集通知が、一部の株主に出されていない場合には決議が不存在と評価される可能性がある。

他方、公開会社に対しては、取締役会を経ていなくてもそれは無効原因にならないと考えられている(有利発行における株主総会特別決議を経ていない場合も同様)。

なお、公開会社・非公開会社問わず、「定款の定めのない種類株式の発行」「発行可能株式総数を超える発行」に関しては無効事由と考えられている。

新株発行の不存在の確認訴訟

株式発行の無効の訴えを提起したくても、出訴期間の定めがあるため、提起ができない場合もある。しかし既存株主に通知がされておらず発行の事実を知る余地がなかった場合などには、信義則の適用により、出訴期間を徒過したものと評価しないこともある(判例)。

ただ、よっぽどの事情がなければ信義則が適用されることはないと考えるべきで、一般論としては出訴期間を緩和するのではなく、「株式発行の不存在を確認する訴え」を提起することを検討する。

また無効の訴えが認容されても遡及効は否定されるため、既存株主にとって救済とならない可能性もあるため、その観点からも不存在の確認の訴えを提起することにメリットはあると言える(遡及効があるため)。

不存在事由

発行が不存在であると評価できる事由(不存在事由)も、無効事由と同様、その内容が明記されておらず、各事例で考える必要がある。

そこで不存在事由に関してはいくつかの考え方があるが、少なくとも何の手続も経ることなく株式発行に係る登記がされている場合などには不存在事由に該当すると評価される。

問題は、一応手続自体は行われたものの、そのことにより既存株主に利益侵害が生じるようなケースである。一定のルールにより線引することはできないが、基本的には「手続の瑕疵の度合い」「無効の訴えの提訴期間を遵守できなかった事情」「会社や取締役等の帰責事由」などを総合考慮して決する。