所有権留保vs即時取得!自分の物を取り返せるか

ここでは民法につき、
所有権留保をした売主が引渡しを受けた者に返還請求ができるのか、といった問題を題材に扱っています。

その他の論点は以下です。

  • 即時取得と占有改定
  • 留置権の主張要件
  • 占有者に対する損害賠償請求

事例(1)所有者は契約解除による返還請求をできる?

事例(1)はこうです。

A → B → C(特約に善意無過失)

事例(1)
自動車をAはBに売却。ただし所有権留保の特約アリ。
Bは特約につき善意・無過失のCに転売。ただし引渡しはしていない。
AはBの未払いを原因に契約を解除。Cはこれを知って(悪意で)自動車を引き取る。そしてドライブレコーダーを付けた。
→ AはCに返還請求できる?

占有改定による即時取得はさせない

以下事例(1)の解答になります。
返還請求の可否についてはおおよそ正解できました。
まず、AはBと所有権留保特約をしているため自動車はAの物として帰属。
ただしCは直接の当事者ではないし、善意・無過失でBと契約しているから保護の必要性がある。そこでCが即時取得をすればAに対抗できそうです。
ただし問題なのが引渡しを受けておらず占有改定の状態になっているということ。
即時取得では原権利者(A)の静的安全を図るために「占有」を要件にしています。だから形式的な占有ではなく、外観上も問題とします。
つまり占有改定ではここでの「占有」とは言えずCは即時取得できないという結論に至ります。
よって、
AはCに対し返還請求ができる
と言えるでしょう。

有益費支出による留置権の主張

Cが引き取ったあとに付けたドライブレコーダーについては、Cがその費用償還請求権を被担保債権に、留置権を主張できるか?という話で進められていました。

 留置権について
第295条「他人の物の占有者は、その物に関して生じた債権を有するときは、その債権の弁済を受けるまで、その物を留置することができる。ただし、その債権が弁済期にないときは、この限りでない。」
2「前項の規定は、占有が不法行為によって始まった場合には、適用しない。」
まず、ドラレコの費用が請求295条に言う「その物に関して生じた債権」と言える必要があります。
 占有者による費用償還請求
第196条2「占有者が占有物の改良のために支出した金額その他の有益費について・・・支出した金額又は増価額を償還させることができる。・・・」
196条2項を根拠に、「その物に関して生じた債権」と言えそうです。
ただし問題は、CはAB間の契約解除につき悪意で、その後に引き取ったという点です。
解答例では、上の295条2項が類推適用できないかと考え、これを認めることでCに留置権主張を許さないという結論でした。
295条2項は不法行為による占有にしか言及していませんが、この条文の趣旨は公平の観念に反する点に着目するものとし、占有権限を事後的に喪失した場合も同視しうると解釈したのです。

事例(2)所有者は返還請求ができない場合どうする?

事例(2)はこうです。
A → B → C(特約に悪意) → D(特約に善意無過失)
事例(2)
自動車をAはBに売却。ただし所有権留保の特約アリ。
Bは特約につき悪意のCに転売。引渡した。
Cは特約につき善意・無過失のDに転売。引渡した。
AはBの未払いを原因に契約を解除。
→ Aはどうする?

占有者がやらかしたときの損害賠償請求は191条が根拠

解答を見ると、Dは即時取得をすることになり、Aはもはや返還請求には期待できず、損害賠償を請求することになる、とありました。

でもその根拠については全く考慮できていませんでした。

 占有者による損害賠償
第191条「占有物が占有者の責めに帰すべき事由によって滅失し、又は損傷したとき・・悪意の占有者はその損害の全部の賠償をする義務を負い、善意の占有者は・・現に利益を受けている限度において賠償をする義務を負う。・・・」

191条をざっくり言うと、
占有者がやらかしたとき、悪意の占有なら全額、善意なら損傷によって現に利益を受けている限度で賠償するということです。

占有者による「滅失」には他人への譲渡も含む

191条の「滅失」は物理的な滅失だけでなく、他人への譲渡による返還不能も含むと扱った判例がありますので要件は満たすと言えるでしょう。

よって、AはCに損害賠償の請求ができる、と言えます。

まとめ

  • 所有権留保をしていても第三者が即時取得すると対抗できなくなる。
    ただし占有改定は「引渡し」に含まない。
  • 占有者が有益費を支出すれば留置できる。
    ただし不法行為や悪意で始めた占有では主張できない可能性アリ。
  • 第三者に即時取得されても、占有者による引渡しが191条の「滅失」にあたれば占有者に損害賠償が請求できるかも。