「法律による行政の原理」の例外・限界

法律による行政の原理

「法律による行政の原理」は行政法の基本原理

「法律による行政の原理」は、行政活動が法律に従って行われるべき、ということ要求する原理です。

行政全般に関する基本原理で、行政における法治主義を示す原理になります。

 

行政がこの原理に反する場合、
行政機関独自の判断で行政活動が行われてしまい国民の意思が反映されにくくなってしまいます。
逆に行政が法律に従うようになれば、
国民の代表である議会が定めたルールの外に出ることができなくなり、国民が行政を一定範囲内でコントロールすることに繋がります。

ただし法律によって行政を完全なコントロール下に置くことは不可能で、
かつ、そのような方法では効率的な行政活動の実現はできません。

そこで、法律による行政の原理にも「例外」が存在します。

自由裁量行為|法律による行政の原理の「例外」

行政を法律で縛りつけることには基本的には必要です。

行政活動の内容によっては国民の権利や義務にかかわり、生活に多大な影響を与えることになるためです。

できるだけ行政に自由な判断をさせないようにし、
法律で定めた内容のみを実行するようにすれば想定外の事態に見舞われる心配も減るかもしれません。

「法規裁量」もしくは「覊束裁量」などとも呼ばれ、
この場合には行政行為をするにあたり行政庁には判断の余地が与えられません。

このときの行為を「覊束行為」と言い、行政に判断の余地がないため一定の要件に該当した場合には規定の行為を行うことになります。

例としては以下の行為が挙げられます。

  • 収用委員会の補償額決定
  • 公安委員会の自動車運転免許取消
  • 農業委員会による農地借地権の設定移転承認
  • 課税有無の判断や税率の適用

 

法律に従って行政を行うことで安定した結果が得られるようになります。

しかし行政のすべての行為に対して裁量が与えられないとなれば活動が非効率的となり、
機動的な運営ができないこともあります。

そこで法律による行政の原理にも限界があると考えられ、
行政には自由裁量も認められています。

例えば以下のような行為は自由裁量のもと行われます。

  • 文部大臣による教科書検定
  • 国家公務員への懲戒処分
  • 法務大臣のする外国人在留期間の更新
  • 厚生大臣による保護基準決定
  • 公益法人の設立許可

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要件裁量と効果裁量の意味と判別

自由裁量にも、どの判断に裁量の余地を与えるのかによって
「要件裁量」と「効果裁量」とに分けられます。

要件裁量:要件該当性の判断にかかわる裁量。

効果裁量:行政行為の内容やそれを実施するかどうかにかかわる裁量。行為裁量とも。

例えば「出勤に10分遅刻すると懲戒処分に処する」とした場合、要件裁量はありませんが効果裁量はあります。

一方「違反行為をすると減給に処する」とした場合、要件裁量はありますが効果裁量はありません。

 

どんな行為をした場合どんな効果を得るのかということを分けて考えていきます。

どんな行為をしたのかという部分が要件裁量にかかわり、
どんな効果を得るのかという部分が効果裁量にかかわります。

先の例では「出勤に10分遅刻」と具体的に違反行為の内容が定められており、
どんな行為につき処罰するのか判断の余地がありません。

しかし後半の「懲戒処分に処する」では懲戒処分のうち免職・停職・減給など、
どの処分にするのかという点には裁量が与えられています。

後の例では「違反行為をすると」とあり具体性はなく裁量が与えられており、
後半の「減給に処する」については裁量が与えられていません。

自由裁量の限界

原則は「法律による行政の原理」に従う必要があるため、
自由裁量が与えられている行為であっても、その自由裁量につき限界があります。

自由裁量が許され得る範囲を超えた場合、
裁量権の踰超(ゆえつ)や裁量権の濫用(らんよう)などと呼ばれます。

行政組織の基本的編成権も国会に帰属
法律による行政の原理をどこまで適用するのかが問題となることが多いです。
例えばこの原理によって国の行政組織の編成についても議会が統制するよう要求されますが、具体的にどこまでの範囲を認めているのでしょうか。国の行政組織のすべてを法律で定める必要があるとまでは考えられてはいません。
この点につき、行政責任を明確化するなどの目的から、少なくとも基本的な構造については国会が定めるべきと考えられています。
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関連原則|法律の優位・法律の留保

議会で定めた法律で行政をコントロールすること。これが法律による行政の原理で、具体的には「法律の優位の原則」「法律の留保の原則」で構成されています。

法律の優位の原則とは、行政活動が法律に違反して行うことが許されないことを意味し、法律に優位性があることを示しています。

行政組織の内部で効果を持つ職務命令や通達についても法律優位の原則に背くことは許されません。しかし地方公務員法で職務上の命令は従わなければならないと規定されているため、通達の内容に違法性を感じたとしても、その通達に沿った職務命令に「重大かつ明白な瑕疵」がない限り地方公共団体の職員は従わなければなりません。

そして法律の留保の原則では、ある行政活動につき法律の根拠が要求されます。

法律の根拠が必要とされない行政活動も存在します。そしてどんな行政活動に法律の根拠が必要なのか、ということについて通説は侵害留保説を採用しています。その場合、国民の権利を制限するような行為に関して法律の根拠が必要とされます。